兵庫県神戸市は、米国ハリウッドでも使われる最新の映像制作の手法を使って、近未来の神戸・三宮の街とそこで過ごす人たちを描いたショートムービーを制作した。

現在、2030年代に向けて三宮エリアで再整備を進めている神戸市。バーチャルプロダクションで、現時点では存在しない未来の三宮で、たくさんの人たちが過ごす姿を描いた映像を制作した。

ストーリー

ギターケースを背負った主人公のミチ。雨の降りやまない神戸・三宮を歩いていると、突然吹いた風に誘われ、未来の地へ。そこで彼女が見たのは、今よりずっと多彩な人たちと場所。そして人のやさしさがクロス(交差)する2030年代の三宮だった。

 映像技術

① バーチャルプロダクション(インカメラVFX)

背景になる3DCGで作成した映像と現実のヒトやモノを同時に撮影する手法は、「バーチャルプロダクション」のなかでも「インカメラVFX」と呼ばれている。ソニーPCL株式会社が運営する「清澄白河BASE」(東京都江東区)内にあるスタジオで撮影した。

現実に存在しないモノを映像化するVFXは、グリーンの背景の前で役者を撮影して後でCGを加える方法がとられる。これに対して、このスタジオでは、高さ5.5m、横幅27.4mの巨大なLEDの壁に3DCGで作成した未来の神戸・三宮の街を背景として映し出し、撮影するカメラの位置に合わせて、リアルタイムに映し出されている背景映像が変化(カメラトラッキングシステムとリアルタイムエンジンの組み合わせ)。このLEDの壁の前で演技する役者などの被写体を同時にカメラで撮影することで、今回の舞台となるこの世に存在しない自然や街を、現実味のある表現で表現することができる。

② ボリュメトリックキャプチャ

ボリュメトリックキャプチャは、動いている人物や物体を複数のカメラでさまざまな角度から撮影し3次元の映像として再現する技術。単純なCGでは表現しにくい洋服や髪の毛が風に揺れるような不規則な動きの表現が可能。

「清澄白河BASE」には、直径9mの円筒状のボリュメトリックキャプチャ専用のスタジオがあり、スタジオ内を取り囲む約100台のビデオカメラが360度から撮影でき非常に滑らかに動く3次元映像が実現できる。

③ 4K HDR映像

映像は、解像度で縦2160ピクセル、横3840ピクセルという「4K」映像で制作。

また、HDR(ハイダイナミックレンジ)と呼ばれる技術も活用。これまでの映像形式であるSDR(スタンダードダイナミックレンジ)に比べると、表現できる明るさの幅が大きくなるため、黒い部分はより黒く、白い部分はより白くなり、鮮明な画像に。

映像監督

宇城秀紀(ソニーPCL株式会社)

神戸市出身。日本映画学校を卒業した後、映画、CM業界を経てソニーPCL入社。映画監督・映像作家・クリエイティブディレクター。最先端の映像表現やテクノロジーを活用した映像演出を得意とし、数多くの企画を担当している。

主な実績として、「GINZA PLACE / NISSAN CROSSING 」ファサード演出、「映画「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」ハプティクス演出、「日比谷シネマフェスティバル/ルパン三世 THE FIRST インタラクティブシアター/シネマARマッピング」コンテンツ演出など多数。ドキュメンタリー監督として、劇場公開映画も手がけている。

特設ウェブサイト

本編動画(4分30秒)を解説する特設サイトも併せて公開。映像の各シーンがくわしく説明されているだけでなく、最先端の技術でのスタジオでの撮影の様子やメインキャスト森ふた葉さんへのインタビューを盛り込んだメイキング動画も同時公開している。

https://www.kobe203x.com/