高品質な素材を短時間で大量に生み出せる生成AIの台頭により、変革を迎えつつある映像制作のワークフロー。生成AIを駆使してひとりでクリエイティブ活動に取り組むプロジェクト「COLORS」を手掛けているCreative Edgeの境 祐司さんに生成AIを駆使した映像制作のワークフローとFrame.ioを活用した効率的なアセット管理術について実践的なテクニックを教えてもらった。

講師   境 祐司  Yuji Sakai

企業や学校を対象に教育設計や教育マネジメントなどを実施するインストラクショナルデザインが専門。2016年より、クリエイティブ活動におけるAI活用のプロジェクトに参加、AIシステムやロボティクス関連の実証実験に携わる。2017年より、Adobe Community EvangelistとしてCreative Cloud製品のイベントなどに登壇。2021年より、Adobe Education LeaderとしてAdobe製品を活用した教育現場の支援・指導を行う。

X ● https://mobile.x.com/commonstyle

note ● https://note.com/creative_edge/





「COLORS」プロジェクトとは?

4つのコンテンツに分けて生成AIを駆使しながらひとりで制作する

Creative Edgeの境祐司と申します。2017年から、Adobe Community EvangelistとしてCreative Cloud製品の啓蒙活動を開始し、2021年以降はAdobe Education Leaderとしてアドビ製品を活用した教育現場の支援や指導も行っています。また、2016年11月から「COLORS」というプロジェクトをスタートしており、生成AIがクリエイティブ業界に与える影響について議論・調査・検証することを目的として活動をしています。

内容としては、実際にコンテンツを制作しながら生成AIの可能性やリスクについて仮説検証していくというプロジェクトになっています。また、こういった新しい技術が何に使えるのかを探るときには極端なことをやらなければならないため、本プロジェクトでは映画、ファッション雑誌、ミュージックビデオ、シリアスゲームといった4つのコンテンツに分け、生成AIを駆使しながら全ての作業をひとりで同時に行うことを制作の条件としています。

今回の記事では、本プロジェクトの映画制作を作例としつつ、生成AIを使った映像制作の方法とFrame.ioを活用した効率的なアセット管理について解説していきます。



生成AIを活用した映像制作のワークフロー

制作に使用する主なツール

生成AIを駆使したプランニングから動画編集までのワークフロー

生成AIを使った映像制作における全体的な流れとして、特別なプロセスはありませんが、基本的に下図のようなツールを使用して制作を行なっています。

プランニングワークは、自身で考えた案をベースにChatGPTやClaudeといったLLMで肉付けをしています。画像生成は主にMidjourneyで行いますが、イラスト表現が必要なときはAdobe Fireflyを使います。動画生成はRunwayをメインツールとして使用し、最終的にはAfter Effectsで編集を施して映像を仕上げています。

ちなみに、音楽生成については総合的にバランスのいいSuno AIを使用していますが、ここではプランニングワークから動画編集までのフローに焦点を当てて紹介しているため、詳細は省いています。


プランニングワーク



コンセプトイメージ/ストーリーボード



素材制作(参照画像・サウンド) / 素材管理



動画生成



動画編集



境さんが生成AIを使用して制作したMV作品の一例。







プランニングワーク

最初のコンセプトやストーリー構築は自身で執筆し、評価や修正にChatGPTやClaudeなどのLLMを使用する。「日本語の気の利いた文章生成はClaudeのほうが得意ですが、ChatGPTは画像も生成できるのでストーリーに沿ったビジュアルイメージが欲しいときなどはよく使います」と境さん。




コンセプトイメージ/ストーリーボード

コンセプトイメージ

生成AIで生成したコンセプトイメージ。「ラフやスケッチは自分でも描きますが、今回のプロジェクトでは生成AIをできるだけ駆使するという目的もあり、あえてAIで生成しています」と境さん。




ストーリーボード

ストーリーや画像をまとめたストーリーボード。その際、同時に紙芝居的に画を見せる簡単な動画コンテも制作する。




キャラクターデザイン

キャラクターデザインは基本的にMidjourneyで行う。”Front of Pose Collection”や”full body center view”などのプロンプトを頭につけることでポーズをつけた全身像を生成できる。



生成したデザインは紙に印刷して壁に貼り、登場人物や代表的なシーンの画などをいつでも一覧できるようにしている。