近年のアップデートによってDaVinci Resolveでできることが増えてきた。自動字幕、Voice Isolation、Magic Mask、フェイス補正…など、クオリティアップとスピードアップにつながる実践的な機能をどのように使えばいいのか?DaVinci Resolve認定トレーナーの松尾直樹さんに使い方を解説してもらった。
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講師 松尾直樹 Naoki Matsuo
2005年から2014年まで大阪にてポスプロ勤務後、現在はフリーランスとして東京・大阪を中心に活動中。過去にさまざまな編集ソフトを使用した経験があり、現在はDaVinci Resolveをメインに使用。他に専門学校大阪ビジュアルアーツアカデミーにて講師として、編集を教える授業も行なっている。
大変なことはAIに任せて考える時間を作る
一部だけDaVinci Resolveに頼るのもアリ
フリーランスで活動している松尾です。以前はポスプロに勤務していたので、業務のメインは編集やカラーグレーディングになりますが、ディレクションやプロデュースをすることもあるので、いまは映像の“なんでも屋”のようになっています。ポスプロ時代はオンライン編集用のオートデスクFlameやFinal Cut Pro 7をよく使っていて、独立してからPremiere ProやAfter Effectsを使っていました。ただ、DaVinci Resolveも並行して使用してきて、特にエディットページが追加されて以降、どんどん機能が改善されていき、Fusionも内包されるようになって便利さが格段に向上しました。2019年にDaVinci Resolve認定トレーナーになったことをきっかけに完全に移行しましたね。
今回は普段から使用しているDaVinci Resolveの便利な機能をいくつか紹介できればと思います。現在は別のソフトを使用している方でも、一部だけDaVinci Resolveの機能に頼る、という使い方もアリなんじゃないか…という方向で読んでいただけると幸いです。
一番お伝えしたいテーマは「大変なことはAIに任せて、しっかり考える時間を作って、クオリティを上げる」です。AIに関していろんな意見があると思いますが、僕は自分を助けてくれるツールだと捉えています。具体的に、どういう場面で重宝するかというと、①急ぎのマスク作業が発生したときにMagic Maskで仮のマスクを作る、②字幕を付けるために文字起こし&誤字脱字確認が必要なときに自動文字起こしに頼る、③完パケに近いMP4の映像でいくつかのカットだけ色がヘンだから直してほしいと依頼されたときにシーンカット検出でカットを自動分割する、④インタビュー映像で雑音が入っているときにVoice Isolation機能で雑音を除去する、⑤ニキビやシミなどの肌補正が必要なときにPhotoshopのコピースタンプツールの上位互換のような形で自動で消してくれるパッチリプレイサーを使う…などです。
これらの大変な作業をAIに任せることで時間短縮ができるので、映像全体のクオリティを上げたり、チャレンジングな編集を取り入れたり…と、本来考えるべきところに時間がかけられるようになります。今回は各シチュエーションに合わせていろいろとデモを作成してきたので、みなさんの映像制作の参考になればうれしいです。
これまで大変だった作業と最新機能を使った解決策






ボタンひとつでしゃべり声を抽出できる
最初に紹介するのはVoice Isolationについて。テスト用に素材を撮ってきましたが、妻がベビーカーを押して砂利道を歩いている映像です。僕がiPhoneで撮影しながらしゃべっているんですけど、声もこもっているし、砂利の上を歩く音が雑音としてかなり入ってきています。
こんなときにDaVinci ResolveのVoice Isolation機能を使えば簡単に声だけを抽出することができます。これまでは専門のオーディオソフトなどで人間の声の周波数だけを残す調整をしていたかと思うんですけど、Voice IsolationはボタンひとつでAIが人間の声だけを認識して、他のボリュームを下げてくれるという優れものです。
しかも、映像を再生しながらパラメーターをいじるとリアルタイムで反映されるので、音声を聞きながら良いポイントで止めればいいだけ、という。僕も初めて触ったときは、あまりの簡単さにビックリしました。DaVinci Resolveの有料版「Studio」の機能ではありますが、Studioには標準搭載されているのでぜひ一度使ってみてほしいです。
逆に環境音やノイズだけを生かしたいという場合はMusic Remixerが使えます。本来は音楽向けの機能でドラムやベースなどの音量を調整するものですが、Mute Voiceにチェックを入れるだけでしゃべり声が聞こえなくなります。しゃべり声と重なっている箇所は少し音が痩せてしまうんですけど、使い方しだいで重宝すると思います。もちろん最終的にはもっときれいに整音したほうがいいですが、ビデオコンテや編集時の検討段階で、あっという間にイメージを確認できることはかなりメリットがありますね。
Voice Isolation機能による音声の整音
Voice Isolation機能の使い方と雑音の多いシーンでの実例

インスペクタのメニューからオーディオの中にあるVoice Isolationをオンにする。適用量のパラメーターを100にすると、周囲の雑音が聞こえなくなり、人間の声だけがクリアに聞こえるようになる。
声だけミュートすることもできる

人間の声だけを削除したい場合はMusic Remixerをオンにする。その中のMute Voiceにチェックを入れるだけで、しゃべり声が聞こえなくなる。音楽向けの機能だが、さまざまな映像に応用可能だ。
Case 1: 砂利道とベビーカー
砂利道でベビーカーの走行音が気になるケース。Voice Isolationの適用量を調整すれば、自然な環境音と声のバランスを簡易的に作り出すことができる。またパラメーターはリアルタイムで反映される。
Case 2: 車通りの多い交差点
行き交う車の音が邪魔してしゃべり声を聞こえづらくしているが、Voice Isolationを使えば騒音のレベルが一気に下がる。適用量50にすると環境音としゃべり声が自然なバランスになった。
単純な“作業”の時間は極力削減していく
次に紹介する機能はシーンカット検出です。すでにでき上がっているMP4のムービーがあって、その中に数カットだけ明るさやカラー調整の必要がある…というケースでシーンカット検出が使えます。ひとつのファイルなので、タイムラインの中から該当箇所を探すのに手間がかかってしまうんですが、この機能を使えば一発でカットを分割することができて、該当箇所が見つけやすくなるんです。
本来の目的は明るさやカラーを適正な状態に調整することです。ただ、これまではそのカットを見つけるためにムダな時間と労力がかかっていました。シーンカット検出を使えば、精度の高いカット分割が自動ですぐにできますし、エディットページからカラーページに移動すれば、すぐに調整が必要なカットを見つけて作業に入れます。ムダな時間を減らせた分、各カットの明るさ・カラーのバランスや、前後のカットとのつながりをよりじっくりと考えながら調整できるのがメリットですね。
時間短縮という観点では自動文字起こしも相当便利でありがたい機能です。これまでは字幕を付ける場合は人力で文字起こししていたと思いますが、その手間が省けるようになりました。精度としてはまだ70点ぐらいだと思いますが、文字起こし〜字幕付けの作業がかなり効率良くできますし、100点の字幕にするための修正・調整までの一連の流れがスムーズに行えます。
先日、40分ほどの講演会の映像にこの機能で字幕をつけて修正・調整したのですが、以前の半分以下ぐらいの時間ですべての作業を完了することができました。
シーンカット検出の機能で自動カット分割
色調整に至るまでの時間を圧倒的に短縮
タイムラインのメニューからシーンカット検出をクリック。自動的に検出が始まり、今回の1分程度のファイルでは3秒ほどで自動カット分割が完了した。分割の精度も高く、カットとカットの境目もフレーム単位で完璧に分割されていた。ひと続きの映像が長尺になるほど、明るさやカラー調整が必要な箇所を見つけるために時間がかかるが、シーンカット検出を使えば大幅な時間短縮になる。




前後カットを確認して色調整へ
シーンカット検出後、そこからカラーページに移動すればカットの一覧が表示されているため、あとはサムネイルを見ながら明るさやカラーの調整が必要な箇所を調整するだけで良い。また、該当箇所だけでなくすべてのカットが自動で分割されているため、全体の各カットの明るさ・カラーのバランスや、前後のカットとのつながりを考えながら調整できる状態になっている。
