レポート◉清水 喜之 協力◉TILTA Japan 機材協力◉ジャパンブロードキャストソリューションズ

クルマは走行中のカットに、そのクルマらしさが映ります。そんなカットを誰でも気軽に撮影できたらなら、クルマの映像コンテンツの世界は大きく広がるでしょう。またドライブの記録としても、Vlogなどで表現の幅を広げてくれます。それを叶える機材TILTAの『Hydra Alien Mini』を使って、今回は愛車の撮影を行いました。

事前に警察署および関東運輸局へ伺い、それぞれ頂いた指導と技術的な見解を元に「カメラを積載するためのキャリア」として『Hydra Alien Mini』を使用しています。もちろんルールだけでなく、使用者側が状況によって臨機応変に対応することも大切です。

カメラはDJIのOsmo Pocket 3を使用し、TILTA Hydra Alien Miniで固定する。

全体的にコンパクトでシンプル。設置も一瞬で完了。

今回のキットの基本構成は「電子サクションカップ」と「ショックアブソーバーアーム」。撮りたい時にさっと取り出して設置することができます。コンパクトであることが取り回しの良さにも繋がっています。それでいて、車載ショックマウントに求める性能は必要充分に兼ね備えていました。

載せるカメラは150g〜600gまで対応しているとのこと。オイルダンパーとバネで構成されたダンピングの強さは、ダイヤル式で無段階調整ができるので簡単にバランスを取ることができます。ウエイトも取り外しが可能なので、必要があればカメラに合わせて調整することもできます。これは本当に使いやすいと感じました。

ショックマウントの調整は柔らか過ぎても、硬すぎてもダメで、適切な強さを見つけることが大切です。今まで複数のOsmo Pocket 用のショックマウントを使ってきましたが、これまでで一番短時間で設定ができました。もっと早く出会いたかったと思いました。

この製品の注目すべき点はオイルダンパーだと思います。バネだけで制御しようとすると跳ねてしまう動きを、オイルダンパーが良い働きをしていると思います。こんなに小型なのに優秀なダンパーです。特に動き出しと、戻りの最後のところが限りなくスムーズで心地よいものでした。

カメラを設置してまず感じるのはマウントの剛性感です。構造がしっかりとしていて全く不安がありません。各アームの接続する箇所では、相互の溝が噛み合うカタチで確実に固定される。使用中、クルマから発生する連続的な振動でも全くふらつくことはありませんでした。また、90度向きを変えられるアームも付属していて、設置する場所に応じて、アングル調整が容易なのも良かったです。

カラーは今回使用した「チタングレー」に加え、「デザートベージュ」「フォレストグリーン」の3種類。どれもマットな色味で、好みにあったカラーを選んだり、クルマのボディ色に合わせるのも良いですね。個人的には「デザートベージュ」が好みです。

とにかく優秀で便利な電子サクションカップ(吸盤)

Electronic Suction Cup(吸盤)』は充電式で、内蔵された電動ポンプで自動的に負圧をコントロールしてくれます。製品を最初に見た時は吸盤部分が大きく感じたけれども、比較的湾曲の大きな箇所でも問題なく取り付けることができました。この吸盤がもの凄く便利なのです。

常に状態を監視し、必要に応じて自動的にポンプが作動して一定の負圧を保ってくれます。今回の使用状況では5分に1度くらいで作動している様子。液晶もついていて、吸盤の負圧の状態とバッテリー残量が表示されます。青色LEDの点灯状況でもバッテリー残量を示してくれます。

ポンプが動く際にモーター音が出るものの、むしろ「しっかり機能している」と安心を感じました。撮影中に何度も吸盤の固定具合を確認する必要がなく、カメラに集中することができる安心感だけでも、この吸盤を導入する理由になると思います。

その使い方ですが、取り付けたい場所に吸盤を押し当てて、ボタンを1度押せばポンプが起動し数秒で固定されます。ボタンを2度押すと電源をオフにできるので、その状態でベロを引けば簡単に取り外すことができます。カメラの角度を確認しながら、片手でも設置や取り外しの操作ができました。

気になるバッテリーの持ちは、湾曲のある垂直面に約2時間貼り付けて、電池残量が4メモリ中、1メモリ減っただけ。もちろん環境に合わせて変化するものと思いつつも、一般的にはカメラのバッテリー交換の方が先にくると思うので、それほど神経質になる必要はなさそう。本当に便利なアイテムです。

余談ですが…吸盤選びは本当に難しいと思っていて、アメリカで購入した超強力な吸盤を使用した際、2,000万を超える高級車のウレタン製バンパーを変形させてしまったことがあります。「吸盤には適切な強さが必要」と思い知らされた経験になりました。

「適切な吸盤の強さ」。今回使いながら、その答えがこの製品なのだと思いました。

Osmo Pocket 3専用のアブソーバーも選べる

『TILTA Hydra Alien Mini』は、そのままでも1/4インチネジでカメラを固定できます。ただ、Osmo Pocket 3の場合、専用の特別なマウントも用意されています。

使ってみて一番良かったのがこの『Shock Absorbing Head for Hydra Alien Mini (Osmo Pocket 3)』でした。3本のアブソーバーが備えられていて、細かな振動や水平方向の衝撃を物理的に抑えてくれます。身近なもので例えると「ビルの免震装置」のような働きをしてくれます。

これを『Hydra Alien Mini』と組み合わせて撮影された素材を見ても、カメラは姿勢を維持したままでクルマだけが動いているのがわかるほど。

カメラを置くベース部分が大きくなるぶん、設置しにくい場合も出てくるかもしれないのですが、幅は10cm程度なので活躍する機会は多いと思います。

Osmo Pocket 3を下から挿して固定することもできるので、カメラを低い位置に持っていきたい時にも重宝します。サイドから押さえ込む固定方法なので、取付が容易ながらしっかりホールドできます。

一方で、「Osmo Pocket 3以外のカメラを使っているのだけど…」という声に応えてくれるのが、『Shock Absorbing Head for Hydra Alien Mini (Universal)』です。

GoProなどの軽量なアクションカムでも、その効果を実感することができました。

Shock Absorbing Head for Hydra Alien Mini (Universal)

最大で500gまでの機材を積載できるので、iPhoneなどのスマホでも、組み合わせによっては外付けSSDと一緒に載せるセッティングも可能だと思います。どんなカメラも受け入れる『Shock Absorbing Head (Universal)』の懐の広さと拡張性に脱帽です。汎用性が高いので持っておくと本当に便利。ドローン撮影のような浮遊感も得られます。

ただし、Osmo Pocket 3を使うなら、やっぱり『Shock Absorbing Head (Osmo Pocket 3)』の選択がお薦めです。

双方を使ってみて、専用設計というのは存在する理由があって、“便利”と“時間”を買うようなものだと思いました。Osmo Pocket 3だけでなく、複数のカメラを使う可能性があれば、両方持っておくのが正解だと思います。

野外で心強い『Mounting Expander』の存在

『Hydra Alien Mini』は素の状態で『Accessory Mounting Expander for DI Osmo Pocket 3』(以下『Mountin Expander』)を付けたまま搭載ができます。

Accessory Mounting Expander for DJI Osmo Pocket 3

クルマの撮影はカメラなどの機材にとって過酷な環境下で行われることが多いものです。『Mounting Expander』は、カメラ保護の面でも装着してあると安心感がありますね。

複数のネジ穴、NATOレールなどを活用できるので、Osmo Pocket 3へ常に装着しておくと、他の機材にも乗せやすくなる上に、リグを組んだりと何かと便利です。

ポイントは『Mounting Expander』を装着すると底面の1/4ネジが左右にオフセットされること。でも、これを考慮して『Hydra Alien Mini』は、ネジ位置を左右オフセットすることができるようになっています。ここはTILTAの細部へのこだわりを感じるポイントでもありました。

豊富なオプションの中では、便利な手持ちハンドルとハンドルマウントはマストバイ

サンプル動画でも冒頭でクルマをぐるっとエクステリアを撮影していますが、歩きながらの撮影にも「Hydra Alien Mini」を活用できるのが「Handheld Handle for Hydra Alien Mini」です。

Handheld Handle for Hydra Alien Mini

ショックマウントを手持ちでも使い回せて便利かつ、カーマウントに設置した状態から手持ち撮影を容易に切り替えられるので、「Hydra Alien Mini」を最大限活かす上での必須アイテムだと思います。

あと、本来はバイクや自転車のハンドルへの固定を想定したアクセサリー『Handlebar Mount for Hydra Alien Mini』を使って、ヘッドレストへ固定も試みました。

Handlebar Mount for Hydra Alien Mini

太さが足りなかったのでゴムシートを巻くなど工夫は必要でしたが、車内でのアングルの自由度を上げてくれました。

これを使って、車内に備えられる「アシストグリップ」に取り付けられるクルマもありそうです。吸盤を使えない場所でも、こうしたアクセサリーの工夫次第で拡張性が広がります。

過酷な状況でもしっかり応えてくれたカーマウント

クルマに詳しい方ならお気づきかと思いますが、検証に使用した車両(Fiat 500 Twinair)はエンジンの振動が大きく、正直カメラマウントには酷な環境だったと思っています。車重も軽く、小さな路面のギャップでいちいち飛び跳ねるクルマです。その環境下で、この映像が撮れるなら、もう怖いものはないと思いました。

Fiat 500 Twinair

実際に撮影したサンプルを見ていただければわかると思いますが、『Hydra Alien Mini』を用いれば、撮影ミスが格段に減ると思います。

常に振動が伴うクルマの撮影はブレとの闘いです。それをこの価格で解決できるのだから良い時代になったものです(一昔前は「カーマウント」で検索してもなかなか製品までたどり着くことができず、金属加工業者に頼み、ワンオフで機材を個人的に作ったりもしていました…)。

今回のキットを導入することで、準備から撮影までの時間も格段に短縮できます。また入門者にとっても、価格面でハードルが低く、使い方がシンプルなので「安全に運用できる機材」とも言えると思います。

汎用性の高いアクセサリーも用意されているので、性能が年々上がり続けるアクションカムやスマホを撮影に用いる方にとっても、自分の撮影スタイルにあったカメラを選ぶことができます。

今回のOsmo Pocket 3の設定はすべてAuto。サンプルのような映像を誰でもサクッと撮れる機材が登場しちゃいました。

カーマウントシステム [HDA-T15] Hydra Alien Mini

関連動画【TILTA Hydra Alien Mini】走行映像撮影!車載カメラリグで滑らかなシネマティック映像を実現

レポート 清水 喜之 

広告業界において、主に自動車メーカーを対象としたプロモーション企画に従事。Web広告やTVCM、イベント運営など幅広い分野での企画立案や運営に関与。2006年からは映像制作を開始、現在は自動車に特化した映像を制作している。 2022年に、自動車をテーマにした国際映画祭「International Auto Film Festa」を創設。クルマ文化と映像表現の価値を提案する活動をリードし、新しい映像表現や監督を発掘する試みとして主に海外より注目を集めている。