レポート●上田晃司
これからのニコンのスタンダード機
次々とミラーレスカメラを市場に投入しているニコンから新たにNikon Z5IIが発表になった。Nikon Z5は2020年8月28日に発売され、これまでニコンのエントリーフルサイズ機として販売されていた。そして約4年半の時を経てNikon Z5IIが2025年4月25日に発売になる。今回はNikon Z5IIの動画機としてのインプレッションをメインで紹介したいと思う。
まず始めにNikon Z5IIはエントリー機と言ってしまうには失礼なほど性能が良くなっている。もちろん初めてフルサイズ機を使う方から使いやすいように全自動モードやAF-A(フォーカスモード)などを積んでいるが、全容はフラッグシップ機のZ9や上位機種のZ8、Z6III、ZfやDX機のZ50IIから機能のいいとこどりをした最高のカメラに仕上がっている。正直、小型のモンスター機と言って問題ない。そのため、ニコンではエントリー機という表現はしておらず、これからのニコンのスタンダード機として位置づけしているカメラだ。
質量は700gとフルサイズとしては軽量

外装は底面以外はマグネシウム合金を採用しており堅牢性と作りの良さが感じられる。ニコンクオリティの防塵防滴に配慮した設計もさすがだ。質量は700gと軽量でフルサイズ機としても軽量だと感じられる。



Z5はサブ液晶などはないが、右手で操作できる操作系となっており、注目すべきはピクチャーコントロールのボタンを搭載している点だろう。ピクチャーコントロールのボタンのお陰で色味を変えたり、不必要なピクチャーコントロールは表示しない絞り込みも可能になっている。メモリーカードはSDカードのダブルスロットで、UHS-IIに対応しているのもポイントが高い。

液晶はバリアングル式で3.2型TFT液晶モニター、約210万ドットとハイスペックだ。ニコンがミラーレスカメラを出した当初から大事にしていたのがEVFだ。今回はZ5の時よりも約3倍明るいEVFを採用している。最大で3000cd/㎡という高輝度のEVFは約369万ドットでファインダー倍率0.8倍となっている。Z9やZ8と同等のEVFというのがニコンらしい。EVFの明るさは18段調整できる点もポイントが高いだろう。
静止画撮影はレスポンスが良くなっている



動画機能の前にまずはカメラとしての魅力や静止画性能も語っておこう。有効画素数は2450万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。画像処理エンジンは定評のある超高速処理が可能なEXPEED 7を採用している。過去Z5を使用していた筆者からすると圧倒的な違いを感じることができた。まずはレスポンスの良さだ。電源を入れてからピント合わせするまでの感覚などもモタつきがなくストレスなく撮影ができた。約1/3の時間になったという高速・高精度なAF性能も体感することができた。
ディープラーニングを活用したAI技術による被写体検出を搭載しており9種類の被写体検出が可能になっている。被写体の検出も制度が高く、安心して使用できること間違いない。特に鳥の認識はZ6IIIにはなかったが、Z5IIには搭載されており圧倒的にピント合わせが楽な印象を受ける。画面を撮影してみたが、いかにAFのレスポンスが良いか分かるだろう。


また、連写機能も強化され電子先幕メカニカルシャッターを使えば最大14コマ/秒の連写が可能。UHS-IIのSDカードを使用した場合、RAW+JPEG★で撮影しても連写最大枚数の200コマまで撮りきることができた。さらに、ハイスピードキャプチャー+ではC15とC30が搭載されておりJPEGのNORMALだけだが高速連写も可能だ。

プリキャプチャーと組み合わせると決定的瞬間も逃さない。実際に鳩が飛ぶ瞬間を捉えたが、プリキャプチャーとハイスピードキャプチャー+のお陰でしっかりと撮影できた。ただし、Z5IIはZ9やZ8の積層センサー、Z6IIIの部分積層センサーではないので大きな動きがあるとローリングシャッターでゆがみがあることは付け加えておきたい。
さらに、暗所のAF性能も飛躍的に改善されており、真っ暗闇でもAF撮影できるスターライトビューの搭載や検出範囲が-10~19EVというAFのお陰で月明かりくらいでも構図確認ができAF撮影できるのも魅力だろう。
EXPEED 7採用で向上した静止画
画質もEXPEED 7を採用することで飛躍的に向上している印象。高感度ISOは筆者の中では常用ISO12800できる印象。ISO25600になると少しノイズ目立つがシーンによっては使えるだろう。また、画像のシャープ、抜けのよさも感じることができる。透明感のあるクッキリとした描写をキットレンズでも感じることができる。
さらにピクチャーコントロールにはフレキシブルカラーピクチャーコントロールを登録でき、インフルエンサーやクリエーターのイメージングレシピをNikonイメージングクラウドからダウンロードすることもできるので撮って出しで自分の世界感を表現することが可能になっている。




N-RAW動画がボディ内で記録できる
次に動画について紹介しよう。初代Z5の動画機能は正直、動画性能に関しては高性能とは言えなかったが、Z5IIは飛躍的な進化を遂げている。まず、驚くべきことは「N-RAW」が撮影できるということだ。このクラスのカメラでボディー内RAW動画が撮れるカメラがあったであろうか? Log撮影は当たり前かもしれないがRAWはすごいと思う。しかも効果なCFexpressカードではなくSDカードに記録できるのも魅力だろう。


まず、動画はN-RAW(12bit)、H.265/HEVC(8bit/10bit)、H.264/AVC(8bit)が収録できる。最大で3840×2160(4K UHD):60p/50p/30p/25p/24pが収録可能だ。N-RAWは4K/30pまでとなっている。また、4K/60pでは1.5倍クロップがされるので注意が必要だ。FHDであれば120Pまで対応可能だ。最長記録時間は125分となっている。
作例ではキットレンズの24-200mmを使い、N-RAW(12bit)で収録した。N-RAWはZ6IIIやZ9、Z8ではN-RAWの「画質」も「高画質/標準」で選べるが今回は選択できないようになっている(おそらく標準と同等ということだろう)。実際にDaVinci Resolveを使って編集してみたが、グレーディングの伸びしろがあり思い通りの画を得ることができた。ちょうどタイミングよくN-RAWがAdobe Premiere Proにも2925年内に対応予定だと発表されたので、N-RAWの需要はさらに増えるだろう。もちろんプロキシ動画も同時記録されているので編集の負担も少ないだろう。
今回Nextorage UHS-II V90 256GB を使用したが1時間以上撮影ができたのでデータ容量もRAWとしてはコンパクトなので使いやすいと感じた。N-RAWで撮影する際はUHS-IIのメディアを使ったほうが安心だろう。
また、N-Log撮影も可能になっており、H.265 10-bit(MOV)やN-RAWで撮影が可能。グレーディングをする方にも扱いやすいだろう。



また、N-Log素材をグレーディングするにはRED社監修の「N-Log」用LUTを無料で利用可能となっているのもポイントだ。N-Log時ISO感度を上げてみたが、ベースのISO800の時とISO6400の時にノイズが減る印象だ。
動画撮影に欠かせない機能も上位機種と同じで充実している。動画記録中の拡大表示(50%、100%、200%、400%)や動画撮影中の赤枠表示、ウェーブフォーム表示などもできるのでとても便利だ。



また、FHD画質でよければハイレゾズームも使えるのでズーミングをしたい方にも役立つだろう。ハイレゾズームの速度は+5~-5まで設定ができるのもニコンらしい。Z50IIで定評のあった商品レビューモードも搭載しており様々な撮影に使えるだろう。長時間の収録も得意としており最長で125分の収録が可能。筆者も256GBのメモリーカードを使ってN-RAWで1時間ほど収録してみたが、停止することはなかった。
この機会にRAW動画制作に挑戦してほしい
実際に使ってみて感じたことは、静止画も動画もかなりハイスペックに使えるのがNikon Z5IIというカメラだということ。今のニコンのカメラに搭載されているほぼ全ての機能が搭載され様々な被写体に対応できるのもZ5IIの魅力だろう。静止画はもちろん、動画機能も本格的なのでこの機会にRAW動画制作などに挑戦していただきたいと思う。N-RAWを一度使うと他のフォーマットで撮影できなくなるほど安心感もあるのでオススメだ。正直ここまで多くの機能を搭載しているとコストパフォーマンス最高のカメラと言ってもいいだろう。