楽曲とキャラクターの世界観を伝えるMVはどうやって企画され、どのように制作されるのか?罪十罰(少女革命計画)『DIGGER』と春猿火『迷人』ふたつのMVを例に、Yazhirushiさんの創作スタイルを紹介する。
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講師 Yazhirushi やじるし
映像ディレクター。大学在学中にフリーランスとして活動。卒業後、2023年 THINKRに入社。PHASE STUDIO所属。切れ味や鋭さを感じさせるモーションデザインや、ダークな世界観を纏った映像表現を得意とする。代表作にAlbemuth『Black Glow』MV、大沼パセリ『フランソワ』MV、ChroNoiR『ブラッディ・グルービー』MVなど。
作例解説 1
罪十罰(少女革命計画)『DIGGER』
ディレクター:Yazhirushi(PHASE STUDIO)、イラスト:そゐち、タイトル・リリックデザイン:MUNIKU
ディレクターのワークフロー
ディレクターとムービー、2種類の制作スタイル
僕の仕事には「ディレクター」と「ムービー」のふたつのパターンがあります。ディレクターはその名の通り制作の全体を任され、イラストレーターやリリックデザイナーは基本的に自分で選びます。もうひとつのムービーは、ディレクションをする人が他にいて、動きをつけるモーションだけを担当する仕事のこと。ムービーの場合は絵コンテが用意されていたり、イラストレーターやリリックデザイナーがあらかじめ決められていることも多いです。
ふたつのワークフローは基本的に同じですが、少しだけ異なり、ディレクターの仕事では企画書と一緒に、イラストレーターとリリックデザイナーに仕様やデザイン案を伝える指示書を作成します。一方、ムービーは担当の範囲が狭く、あらかじめ用意された素材を元に組み上げていくような仕事なので、必要な時しか指示書を書きません。
企画書兼指示書にイメージを落とし込む
ディレクターのワークフローでは、最初にキックオフミーティングを行います。このタイミングでアーティストから提供されているのは、楽曲と歌詞、キャラクターの設定だけ。世界観はもちろん、今回の楽曲が何作目にあたるのか、前の楽曲はどういうイメージだったかなども重要なポイントになるため、丁寧に情報を聞き出します。そしてヒアリングを元にイラストレーターとリリックデザイナーの候補を出し、企画書と指示書を作ります。
今回例に挙げた『DIGGER』は、イラストをそゐちさん、リリックデザインをMUNIKUさんに依頼することが初期から決定していたため、指示書と企画書をまとめて作成しました。冒頭の概要にはアーティストのクレジットと最終的な納品の仕様をまとめ、そこから先はMVイメージ、イラスト案、ロゴデザイン案、リリックデザイン案をリファレンス画像・動画と一緒に載せています。最終的な納品は3840×2160/24fpsの予定でしたが、イラストは寄っても大丈夫なように5760×3866を指定して大きめに描いてもらいました。


最初のミーティングでは、楽曲・キャラクターの世界観やディレクションの裁量度についてアーティストのマネージャーからヒアリングを行う。企画書・指示書を書く時のフックを得るためにも、ヒアリングは密に行なっておきたい。

MVのイメージや演出の方向性を提案する企画書と、イラストレーターとリリックデザイナーにデザイン案や納品データのスペックを伝える指示書を作成する。

After Effectsで制作開始。指示書だけでフィックスせず、コミュニケーションをとりながら進めていく。その人が良いと思って選んでいるので、クリエイティブに対して基本的にNOは言わない。

映像が完成したらカットごとに連番出力(P.65参照)し、それを繋げてフル尺をmp4かmovに変換して納品する。
『DIGGER』の企画書兼指示書
どういうカット割りにするかは、楽曲を共有された段階で頭の中でほとんど出来上がっていることが多い。その構想で完成度の7割は決まるので、あとはそれを企画書・指示書にどう落とし込むかが重要になる。






Pinterestで参考イメージのストックを増やす
企画書に載せるリファレンス画像はPinterestから引っ張ってきたものです。僕は元々Pinterestの閲覧が趣味といえるくらい好きで、常日頃から気になるデザインを見つけたらピン止めしておき、参考画像としてストックしておくようにしています。いいなと思ったタイポグラフィーを選ぶと自動的に似たデザインをおすすめしてくれるのも便利で、とにかく掘ってはカテゴリ分けして保存することで発想のひきだしを増やしています。