レポート◉編集部 一柳
古くからのテレビ業界の人にはお馴染みの東京テレビセンター浜町スタジオの事業を2016年に継承したパンダスタジオ(株式会社PANDASTUDIO.TV)。その浜町スタジオの社屋内、イベントスペースの裏側に、驚くべき空間が広がっていた。2000種類以上、2500本以上のレンズが並ぶというレンズラウンジとも言えるようなショールームだ。これだけのレンズが集まっているスペースは世界にもそうそうないのではないだろうか?



このショールームを作り始めたのが2025年の春というのでちょうど1年前。それ以来、レンズのラインナップを増やし続けているという。ここはパンダスタジオレンタルのレンタル事業と連動していて、レンタルの依頼が入るとここから出荷される。したがって倉庫とも言えるのだが、決してバックヤードという雰囲気ではなく、人を迎え入れることを想定したホスピタリティー溢れるスペースになっている。いったいここは何を狙って作られた場所なのだろうか? ショールーム担当の森下千津子さんに案内していただきながら、バンダスタジオグループを率いる西村正宏社長にお話をうかがった。

バンダスタジオといえば、古くからのビデオサロン読者であれば、USTREAM以来のライブ配信のスタジオ事業やeラーニング業務などを連想するかもしれない。最近ではカメラや映像制作機器、LEDビジョンのレンタル業務が成長し、ユーザーとしてお世話になっている人も多いだろうか。いまやパンダスタジオといえば、「機材レンタル」のイメージが強くなっているが、実は機材レンタル事業を始めたのは、ここ10年なのだそうだ。意外にもそれほど歴史はないのだが、その起源となると実は西村社長がEOS 5D Mark IIに出会ったころ(2008〜2009年)に遡ると言う。
「キヤノンのEOS 5D Mark IIの動画に感動してそれで撮影するのが楽しくて仕方がなかったので、周りにレンズを貸し出したりしていたんです。もちろん無料で。使っていないときは使ってもらっていいよという感じで。映像はやっぱりレンズ次第だなと感じるところもあって、個人的に集めていて、それをただで貸し出していたのがスタートなんです。みんな喜んでくれるし。そんなふうに最初は商売抜きでやっていたのですが、パンダスタジオのレンタル用に揃え始めて、事業になっていきました」
現在2000種類以上というラインナップはどうやって揃えていったのですか?
「最初は自分の手持ちのレンズから始まって、次はお客さんの要望でこういうレンズが欲しいというのをどんどん入れていきました。注文に応えられないのも恥ずかしいので、注文があればすぐに買って揃えました。ラインナップも全部揃っていないと気持ち悪いので、こうなったら全部揃えようということになりました。新品で買えるラインナップは全部買うという勢いで揃え始めました。中国メーカーなどのものは日本で販売していないレンズもあるので、現地の展示会に行って、ラインナップ全部買います! と発注して、あちらからコンテナでまとめて発送しています。中国メーカーも10年くらい前などは性能的にひどいものでしたが、今のレンズはとても良いので、こうなったら全部買ってきて、みんなに使ってもらおうと」


それにしてもなぜこのスペースを作ったのですか?
「量販店とかメーカーのショールームでもレンズを試すことはできますが、環境的によくないじゃないですか? 少しでも気持ちよい空間で落ち着いて試せるようしたいということです。
それから大型モニターも用意してあるので、カメラマンなどを呼んでワークショップを開催することもできます。モニターで鑑賞できるだけでなく、プロのカメラマンの設定を無線でモニターに飛ばして大きい画面で見ることができます。絞りと被写界深度の関係や効果についてもよくわかっていない人は案外いますので、セミナーやワークショップをここで開催していきたいと思っています。レンズ関連だけではなく、照明やジンバル、それこそ編集やグレーディングについてのセミナーも開催していきたいですね」

これだけのレンズを管理するだけで大変ですね。
「通常のレンタル業務もあるので、データベースでシステマティックに管理したい。レンズがまとまって届いたらスタッフが集まり、レンズをデータベースに登録して、シールを貼ったり、ケースに入れていきます。このシールからQRコードもしくはNFCでパンダスタジオレンタルのサイトに飛ぶので、レンズの情報を確認することができます。本来であればそれぞれテスト撮影して、どういうレンズなのかを説明できればいいのですが、そこまでは手が回らないので、まずは効率よくデータベースを見られるようにしています」



1本1本のレンズは盗難防止のためにケースに入れています。
「高価なライカのレンズは写真だけにして、ここには置いていませんが、大半のものは陳列しています。将来的には無人で貸し出しができるシステムを目指したいと思っています」


シネマレンズもいろいろと揃っていますが、これまでの業界の機材レンタルとは雰囲気が違いますね。
「根本の発想が、レンズを交換すると映像の雰囲気が変わるからもっといろいろなレンズで写真を撮ろうぜ、映像を作ろうぜ、映像を作るのは楽しいよ、ということを伝えたいということなので。だってレンズ沼にはまっていったほうが楽しいじゃないですか?」


全部揃えるという方向だとほとんどレンタルで出て行かないレンズもあると思うのですが、採算は大丈夫なのでしょうか?
「莫大なお金がかかっていますから、今はまったく採算は取れていません(笑)。でも誰かがこういうバカなことをやってもいいんじゃないでしょうか?」
あとはどのあたりのレンズが足りないのでしょうか? 中古やオールドレンズといったジャンルにも踏みこんでいきますか?
「LAOWAなどは人気で品切れになっているので、現在は現行のレンズラインナップを揃えることに注力していきますが、オールドレンズも考えています。たとえばある写真家の方が使っていたレンズを引き取らせていただくということもありえます。そのレンズたちは、その人の美意識で揃えられたレンズであり、何かしらの癖がついているかもしれないのですが、そういったレンズをストーリー込みでコレクションさせていただくということもできたらいいなと思っています。ストーリーというか、物語を感じるようなものを次のステップでやりたいんですよ。レンズのコレクションがあったとしても、それが散逸してしまったら価値は分散してしまうし、まとめて保管するにも場所や管理ということでお金がかってしまうわけですから」

ここをどういうスペースにしていきたいですか?
「プロのカメラマンを呼んで、講習会、体験会をやっていきたいと思っています。そのときにこのショールームにある好きなレンズを持ってきてどんどん使ってもらえるような。もちろんレンタルの延長でテストシューティングするということも可能です。ただ一人で来て黙々と触っていても発見はないと思うんです。20人ぐらい集まって、ああでもない、こうでもないという場になったらいいんじゃないでしょうか? これだけあると、どこに何があるかも分からないし、何がいいのかも分からないから、やっぱりワークショップ、セミナーが中心になっていくと思います。今はスマホをかざせば説明する仕組みを入れていますが、さらにWEBを整備したり、探すためのアプリを作ったりということをしていきたいですね。レンズを購入することと並行してやっていかなければならないので大変です(笑)。


ショールームの裏側にあたるイベントスペースでは、ちょうどガレージセールが開催されていた。


ショールームでのイベントの開催情報などもこちらhttps://panda-times.com/をチェックしてほしい。
