タイムループSFの傑作『All You Need Is Kill』が、STUDIO4℃の革新的なアニメーションと色彩豊かなプロダクションデザインでアニメ化 ! アニメ映画『ALL YOU NEED IS KILL』の監督を務めた秋本賢一郎さんが、プリプロダクションから本制作まで、各工程における監督としてのこだわったことを解説します。

講師 秋本賢一郎(STUDIO4℃) Kenichiro Akimoto

映画『ベルセルク 黄金時代篇』(12-13)でCGIのモデリング、リギング、アニメーション、表現開発、シーン絵コンテなど多岐にわたって活躍。映画『渇き。』(14)の劇中アニメーションでCGI監督、映画『ハーモニー』(15)では3DCGモデリングチーフを担当。映画『海獣の子供』(19)ではCGI監督を務め、米津玄師の主題歌『海の幽霊』のミュージックビデオも制作。『映画 えんとつ町のプペル』(20)では美術監督、映画『漁港の肉子ちゃん』(21)では演出を担当。






アニメ映画『ALL YOU NEED IS KILL』




原作:桜坂 洋『All You Need Is Kill』(集英社刊)

監督:秋本賢一郎/制作:STUDIO4℃/脚本:木戸雄一郎/キャラクターデザイン:村上 泉/美術監督:久保友孝/アニメーション演出:中村幸憲/アニメーションディレクター:中島智成、得丸尚人/CGI監督:中島隆紀/色彩設計:鈴木このは/メカニックデザイン:出雲重機/音楽:前田泰弘/音響デザイン:笠松広司/SF考証:高島雄哉








基本方針

アニメ映画としてのオリジナル要素を加える

本作のプリプロとプロダクションについて工程順に紹介します。『ALL YOU NEED IS KILL』は小説を原作としたアニメーション作品ですが、これまでに漫画化、ハリウッドでの実写映画化と、それぞれがオリジナルの切り口で確立されてきました。今回、新たにアニメ版を制作するにあたって、私もまた独自の切り口でこの作品を描こうと考えました。その要素として「ダロル」という大きな花(後述)と「極彩色の世界観」が大きな特徴になっています。

原作小説を読み、漫画版とハリウッドの実写映画版を改めて見直したとき、それぞれが独自のデザインや設定で描かれていることを再確認しました。そこで私の中に浮かんだイメージが「鮮やかな地獄」でした。ヒロインのリタという少女が、死に抗いながら生きていく。その生命を美しく描きたいと思ったので、極彩色で世界観を構築することに決めました。

これまでの漫画や実写映画では、主人公が軍人という設定もあって、ミリタリーアクションらしいクールなルックが印象的でした。だからこそ今回は、あえて極彩色で描くことに意味があると感じました。リタが「死」に抗いながら明日を目指す「生」を美しく表現したかったこと、そして悪夢のように鮮やかな地獄でひとり戦う彼女の姿を、強いコントラストで切り取りたかったことが、その大きな理由です。



映画をつくる醍醐味

プリプロ段階では、設定やデザインに説得力をもたせるため、多岐にわたるリサーチを行います。ダロルの造形を考える際には、植物型バイオボットを研究する方の著書や研究動画を参考にしました。植物にヒントを得たロボットという発想自体も面白く、造形物としても大いに刺激を受けました。

原作に登場する「ギタイ」についてもアニメ版ではさまざまなアレンジを加えています。咲き乱れる花に襲われるイメージをベースに、花に足を付けたようなデザインを基本としつつ、クモヒトデやトンネルボーリングマシンなどの要素を組み合わせていきました。そのギタイがダロルから放出される際に収まっている外郭のデザインについては、オランダフウロの種子とネコザメの卵からインスピレーションを得ました。前者は湿度の変化で自ら地面に潜り、後者はその独特の形状で岩場に挟まって流されないようにする、どちらも機能美を備えた造形です。毎作ごとにこうした新しい発見があることが、映画制作の大きな喜びのひとつです。


「ギタイの外郭」デザインサンプル



秋本監督が描いた「ギタイ」ラフスケッチ