第2回レンズギア①

REPORT◉田村雄介                                       題字◉Mika Inomata

 

ギアッギヤッギァッギァギャー ギァギアギャ!

ギャギャギャギーァ。ギャァッギアギギギャ。 ギーギャギャギャギア。ギギッギャギアギアギァギギーギァ。 ギア!  ギギギギアッ! ギャギャギャッギァギャギーヤ!

ギアギアギァ、ギギッギギァギアギヤ。ギア!ギア! ギァ!ギヤギアギァギャ!

 

いっけね、ギア語で話してた。 今月も新コーナー、はっじまっるよー!

◆レンズギア、とは。

レンズギア。マニュアルフォーカス時にフォローフォーカスのギアとレンズのフォーカスリングのギアを噛み合わせて、フォーカスリングを実際に手で握りながら動かすより、さらに細かなフォーカスコントロールをするために必須なレンズ側につけるアイテム。それがレンズギア。シネレンズの世界に生息する方々にするとレンズについてて当たり前の機構が、日夜スチルレンズを使用する映像制作者にするとちょいとばかり遠い国の話。

はぁー、かっこいいなぁ。すごいなぁ。かっこいいなぁ……しかし指を咥えてよだれをダラダラしててもフォーカスリングのゴムからギアが生えてくるわけもなく。しょーがないので、とりあえず安めのフォローフォーカスをとりあえず、と購入してセットになってるレンズギアを装着してみたものの基本最短と無限を無視して延々とフォーカスリングは回ってしまうし、レンズギアの巻きつけ固定部分がどう頑張っても邪魔くさい。っていうかカッコよくない……クールじゃない。そもそも所有レンズ本数分用意するのか、使用頻度の高いレンズにつけっ放しにするのか。安いっつってもオカワリするとン千円、ン万円単位で飛ぶ。

しかも一人でフォローフォーカスつけて現場に行くと、やれレンズ交換だー、うわーギアが緩んだー、フォーカスの回転方向間違ったーで四苦八苦ってめんどくせ……。とお蔵入りになったフォローフォーカス、 お宅の押入れにも一個や二個転がってますよね? うちには転がってますよ!

そんなこんなでフォローフォーカスなんてすっかり忘れて手動でギュインギュインと右へ左へ縦横無尽にフォーカスコントロールをしていたところ、なにやらフォローフォーカス界の風向きが奥から手前へと変わっ てきた。去年あたりから個人で所有できるクラスの電動フォローフォーカスが出没し始めたのだ!

ブラシレスモーターを使用したモーターで電動ギアの精密コントロールができるので、レンズごとのフォーカスリングのトルクやフォーカスの最短から無限までの距離なんかもお構いなしに安定したフォーカス送りができる、 しかも手元で! それが個人の手元に!

今年は電動フォローフォーカス暦、E.F.F0002年と言っても過言ではない! っていうかブラシレスモーターってすげえなぁ…。ギンバルにドローンにフォローフォーカスに……。

今回はフォローフォーカスの話じゃないのでこれ以上はざっくり割愛。 問題はそこじゃないんだコレ。買ったとしたってシネレンズじゃないと結局まためんどくさいことに。 江戸っ子なんて短気なもんで(江戸っ子じゃないけど)すぐこういうこと言うんだ。だからっておめーさんよ、ギアがアレだってこたぁちぃっとも変わんねんだろぉ? めんどくせえ!! もういい! 塩撒いとけ塩! ケェーッ!

▲ ナウい電動フォローフォーカスこと「TILTA NucleusM」とIDX社取扱の「PDMOVIE」。ちょいと良いレンズ一本分くらいの値段。

さてと、撒いた塩を舐めてみましょう。甘いぞぉ。多分。とは言えある意味必需品なもんだから、みんな最低一つは味を知ってるかもしれない。さあさ味を知ってる人も知らない人もおっかなびっくり食べ比べー。

 

◆最近のギア事情

今回用意したのはナウいヤツで4種+レガシースタイル1種の計5種。このうちレガシースタイルのTilta以外は全てギア外周に取っ掛かりがないものばかり。いい時代になったもんです。レガシースタイルのTiltaだってなかなかのクオリティの品物なのに、$4。$4て……。ナウいほうのお値段はピンかキリかで真ん中らへんがない。4千円〜6千円前後、もしくは2、3万円くらい。 規格はこのクラスでは標準的な0.8Mピッチのギア。すべて僕自身の自己所有物よりお届けでございます。

ZEISS/ZEISS Lens Gear Large
参考市場価格:Small-19,800円
       Largeエ21,700円

BROKEN ANCHOR DESIGN/ZERO
参考市場価格:$299(編集部注:日本ではRAIDが扱っているが10月上旬現在WEBには掲載されていない)

FollowFocusGears/SEAMLESS FOLLOW FOCUS GEAR Professional HD
参考市場価格:Sigma 105mm f/1.4 DG ART用 Standard $36、Professional HD $60

COOL-LUX/LUX GEAR
参考市場価格:$28.75

TILTA/Photographic Lens Follow Focus Adapter
参考市場価格:$4

 

◆各社のデザインと仕組みの話

ZEISS/ZEISS Lens Gear Large

元は、いや、元はもなにもZEISSのOtus、Milvus、Loxiaのために作られた後付けのレンズギア。それが前述のシリーズを所有していないにも関わらず、たまたま(Largeがセールだった)魔が差して購入。そして禁断の異種間交配でSIGMA 50-100mm F1.8 DC HSMに装着すると……ギリギリギリギリジャストフィット!ZEISS、SIGMA双方のご担当者様が僕のそっぽ向いてツーンと鼻に抜ける辛味を堪能してそうなこの食べ合 わせ。実際の使用感はというと、これが実に良い組み合わせ。ガッシリした迫力のボディに負けない存在感 と装着した時の安定感。ドッシリとした質感の金属ギアはフォローフォーカスに当てて良し、手で回して良 し。レンズを抱いて寝る派の人には得も言われぬ安心感をプレゼントしてくれることでしょう。

Made in Germanyというシネレンズクオリティの一部が今お手元に! サイズはMini、Small、Medium、Largeの4種。それぞれにアジャスト用のGumGumというゴムのスペーサーも入っているのでZEISSの上記シリーズを所有しているエンスーな方々はもちろん、異メーカーに抵抗がなければ、いや、この場合ZEISSは一流のレンズギアブランドとして考えよう。是非とも店頭でお持ちのレンズに合わせてから購入すると大変な満足感が得られることでしょう。そう、今回のギア各種の中で店頭試着ができるのは実はこれだけなのでした(2018年9月調べ。BROKEN ANCHORはRAID社取り扱いだったと思ったけど、今はもう無いのだろうか?→編集部注:RAIDで扱っていますので田町に行けば確認できます)。

難点はこの組み合わせの場合、合わせのネジ切りが丸見えになってしまうところ。気になる人はなにか埋め合わせのスペーサーを考え……るか……な(←気になる人)。

デザインはなかなか自己主張の強い漢らしい雰囲気を感じる。そして撮影機材の中では割と安価に手に入る Made in Germany。Sachtlerも導入しやすいラインはMade in CostaRicaやUKになってしまったもんなぁ。ところでflowtech100の価格見て膝から崩れ落ちた人、手ぇ挙げて!(ハーイ……)

仕組みとしてはギアパーツ部分と締め込み用のパーツで、上下から楔状のパーツを挟んで締め込む。そうす ると楔パーツが内径に向かってググッとせり出してきて、しっかりとした固定を実現する仕組みになってい る。付属のGumGumはこの楔の内側に当てるものだ。

このSIGMA 50-100mm F1.8 DC HSMとレンズギアの組み合わせの場合、装着には若干のコツがある。まずギアパーツと楔パーツをフォーカスリングの下まで持っていき、ギアに楔を嵌め込んだ状態でフォーカスリングに持っていく。そして上から締め込みパーツを下ろして締め込む。普通に上から嵌めようとするとどう頑張っても入らない。本当にギリギリ。

第2回レンズギア②に続く