アドビは、2019 NAB に先んじて、処理の高速化と新たなイノベーションをAdobe Creative Cloudのビデオ&オーディオツールに加え、動画制作をさらに効率化するアップデートを発表した。
提供を開始するアップデートの新機能には、アドビの人工知能(AI)および機械学習テクノロジーであるAdobe Senseiに基づくビデオ向けの「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能をはじめ、タイトルおよびグラフィックスの制作とアニメーションの制作のための新機能、洗練されたオーディオミックス機能、プロジェクトに用いる各種メディアを整理整頓する機能が含まれる。さらに、Premiere Proでは効果や色変更の適用に用いるマスクトラッキングの高速化、デュアルGPUへの最適化、HEVCおよびH.264処理におけるハードウェア高速化の強化など、数百もの処理高速化を実施した。また、After Effectsの機能強化には、「色の変更」や「ラフエッジ」といった効果のGPU高速化が含まれる。
今年のNAB参加者は4月8日から11日の開催期間中、アドビブース(ラスベガスコンベンションセンター サウスホール #SL5610)ならびに100社を超えるパートナー(英語)ブースで新機能を間近で体験し、業界のエキスパートの話を聞くことができる。
4月5日午前1時(米国太平洋標準時4月4日午前9時)からの、ジェイソン ラヴィーン(Jason Levine)が新機能を紹介するFacebook Live(英語)もチェックしてほしい。
また、4月8日の展示初日には日本語ガイドツアーも開催される。1日3回の予定。
アップデートに含まれる主な新機能
・不要なオブジェクトを自動的に消去するAfter Effectsの「コンテンツに応じた塗りつぶし」:「Project Cloak」と呼ばれていたビデオ用「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能は、Adobe Senseiを活用してブームマイク、看板、ロゴ、あるいは人物までも含めた視覚的要素をフッテージから消去する作業を自動化し、何時間もかかる煩雑な手仕事を不要なものにする。
自転車の人物をドローンで撮影しながら、またクルマで並走しながら2カメで同時撮影しているフッテージがあるとする。
並走しているクルマを消したい。クルマと影の部分をざっくりとでいいので選択する。
塗りつぶしレイヤーを作成してレンダリングすると、並走したクルマがきれいに消えている。ロゴやステッカーを消すような作業にも応用できる。
・素材を整理してストーリーボードを作成できるPremiere Proの「フリーフォームプロジェクト」パネル:映像アセットを視覚的に配置してレイアウトごとに保存できるため、シーンの選択、進行の検討、ストーリーのアイデアのブレーンストーミング、粗編集などの作業に活用できる。
・定規とガイドを使って正確かつ一貫したデザインを作成:Premiere Proに定規とガイドという使い慣れたデザインツールが搭載されたことで、タイトルやアニメーション効果などを正確に整列させ、作品すべてにわたって一貫した配置が行えるようになった。これは主に日本のテレビ業界からの要望を反映したものだという。
また文字の縁取りの複数のストロークを個別に調整できるようになった。
・簡単かつ効率的な録音を実現するAuditionの「パンチ&ロール」:波形エディターとマルチトラックエディターの両方に対応するこの新機能で、ナレーションやオーディオブックの吹き込みなど、長時間の録音セッションの制作ワークフローが効率化する。
・Twitchに対応したCharacter Animatorのライブストリーミングトリガー機能拡張:視聴者にリアルタイムで反応してコスチュームをその場で変えたり、即興でダンスをしたり、決めのジェスチャーやポーズをするキャラクターを使ったライブストリーミングが簡単に配信できる。アクションを起こすのにBitsを使うことで、視聴者からの投げ銭スタイルのコミュニケーションを取ることもできる。
・新たに背景音に対応した、AuditionとPremiere Pro搭載の自動ダッキング機能:Adobe Senseiによりさらに強化された自動ダッキングは、人物の音声レベルに応じてバックグラウンド音のレベルを動的に調整できるようになった。調整のために打たれたキーフレームは手動で自由に調整できるため、この機能によってクリエイティブコントロールが損なわれることはない。
・ビジュアルの幅を拡げる:Adobe Stockが提供するプロフェッショナル品質かつスタッフによって選別整理された、ロイヤリティフリーのHD/4Kビデオ映像フッテージおよびモーショングラフィックステンプレートが1,000万点の大台に乗りました。それらは先進的なクリエイティブエージェンシーや独立系の映像エディターの手によるもので、エディトリアルコンテンツやエスタブリッシングショットあるいはフィラーとして活用できる。
・撮影してすぐに公開:昨年提供を開始したPremiere Rushは、Premire Proと連携した効率的なモバイル~デスクトップワークフローを実現し、外出先でも簡単にビデオ編集と合成が可能。Rushに内蔵されたカメラ機能を使えば、モバイルデバイスでプロ品質の動画撮影が行える。
アドビをめぐる話題と日本市場
アドビのマーケティング本部 田中玲子氏は、今回の動画関係のアップデートに合わせて、アドビ関連のニュース、そしてに日本の映像制作市場の傾向についても説明した。
After EffectsとPhotoshopが2019アカデミー科学技術賞を受賞:この2つのソフトはともに25年以上たっている。After Effectsはもちろん、Photoshopも映像業界で使われ、大いに貢献していることが高く評価された。
ワールドワイドでは、クリエイティブクラウドが長編映画、国際放送、ニュース中継、ネットニュース番組などで使われている。
日本の映像市場は、ハイエンドの世界とSNSで大量の動画を作るという世界で、コンテンツの二極化が進んでいる。特にSNSの動画、WEB向けの動画が増えている傾向にある。制作の予算が下がっているので、本数を作らなければならないのが現状である。
大量に動画が見られ、大量に作らなければならない時代には、作業の効率化が求められる。アドビでは、「もっとクリエイティブなことに時間を使おう」ということをテーマに、高速化とAdboe Senseiに基づくインテリジェントなツールの組み合わせにより、待ち時間や面倒なタスクを減らし、よりクリエイティブなことに時間を使えるという方向で新機能を開発し、パフォーマンス強化を図っていると説明した。