DJIから発売になった小型折りたたみドローンMavic Miniは、日本での航空法適用外となる大きさ。小さくなったことでこれまでは躊躇していた場所でも飛ばすことができるようになった。今回、狭い場所と撮影の機会があったサーキットの現場でこの小型ドローンをテストしてみた。
レポート●稲田悠樹(コマンドD)
200g以下で航空法適用外の小型ドローンながら3軸ジンバルと2.7Kカメラを備える
DJI Mavic Mini 46,200円(単体)
DJIから登場した199gの小型折りたたみドローン。最大2.7K/30p(ビットレート40Mbps)の動画撮影が可能。
Fly Moreコンボ(59,400円)はバッテリー3個、充電ハブ、360度プロペラガード、キャリングケースなどをセットにしたもの。写真は機体、プロポ、充電ハブを収納した状態。
主なスペック
バッテリーやSDカードスロットは機体後方に
機体後方にはバッテリーやSDカードスロットの収納部。バッテリーは1100mAhのLiPoバッテリー。一回の充電で最大18分の飛行が可能となっている。バッテリーの残量は機体底面のボタンで確認できる。
充電ハブには3つの機能がある
3つのバッテリーを順次充電していくハブ、バッテリーの残量チェッカー、バッテリーの残量をUSB接続したスマホや送信機などへ給電できる。
どこでも飛ばしていいわけではないが、 表現の幅が広がったことは間違いない
1型CMOSセンサーを備えた折りたたみドローンMavic 2 Proの衝撃から約1年ぶりとなるDJIからのコンシューマー向けドローンMavic Miniは、まさかの199g(日本仕様)で航空法適用外のサイズ。まさか、まさかの大サプライズとなった。今までの199g以下の機体に関しては、小さい・軽い=空撮に耐えられないというのが定説だったのだが、Mavic Miniによってひっくり返ってしまった。今回、サーキットや森のなかでテスト撮影を行なったが、しっかりと「Mavic」の名前を冠するに値する性能を有していた。
ホバリング性能も風速8m/sまでの耐久性を備え、カメラも最大2.7K/30p撮影に対応。欲を言えば4K撮影に対応してほしかったが、3軸ジンバルを備えており、揺れのない安定した映像を撮れる。従来の空撮機のカメラワークが、すべてできるスペックだ。また、GPS/GLONASSといったホバリングを安定させるための測位センサーも搭載されているため、初心者でも飛ばしやすい。冒頭に伝えた通り199g以下なので、航空法の制限は適用されないものの、その他法令や地域ごとの条例等注意すべきところがあるので、自由にどこでも飛ばせるというわけにはいかないが、映像表現の幅が格段に広がることは間違いない。
スマホとほぼサイズと重さを実現
折りたたんだMavic MiniをiPhone XSと並べておいてみると、ほぼ同じサイズ。重さもiPhone XSが174gなのでほぼそれに近い。
他の機種とのサイズ感を見てみる
筆者所有のMavic 2 ProとTelloと一緒に並べてみた。Telloのサイズ感には及ばないが、Mavic 2と比べるとだいぶ小型化されたことがわかる。
飛行性能について
手に持った印象は軽い上にボディの質感が他のDJIドローンに比べ安価な感じがして、本当に空撮に使えるのか心配になってしまった。しかし、実際に飛ばしてみると、それは杞憂にすぎなかった。使い慣れたMavicの飛び方をしてくれる。強いて言うならば飛行の味付けは、Mavic 2に比べると加速度が抑えられており、初心者向けの緩やかな飛び味。逆に言うとトップスピードに到達するまでにまでに、ちょっと鈍いと感じる人もいるかもしれない。機体の動きは若干ふらつくときもあったが、充分なホバリング性能を有している。また、最近のDJI機に搭載されている障害物検出センサーは非搭載となるため、飛行中はしっかりと操縦者が障害物を目視で確認して飛行させる必要がある。
カメラについて
実際の画質に関しては、撮影サンプルがあるので、そちらをぜひ動画をご覧いただきたいが、昨今のスマホやアクションカメラがキレイすぎるということもあるし、Mavic 2 Proの映像に見慣れていれば、質感に物足りなさを感じるのは事実。ただ、気軽かつ荷物としても軽く、他のDJI機では飛ばせないロケーションで撮影ができるという点を考えると、今まで撮れなかった画を狙えるという点で満足している。ただ、アップデートでぜひとも改善してほしい点としては、Log対応と贅沢は言わない。オートでしか動画撮影できないことは、明暗差の激しいところで段階的に露出が変わってしまうので、マニュアル露出への対応を期待している(ちなみに写真撮影は対応している)。
画質比較や自動操縦モードの検証動画も
画質比較はすべて1080/60pのオートで撮影。1型CMOSセンサーのProの描写がキレイで、ダイナミックレンジのゆとりを感じる。MiniとPocketは1/2.3型でCMOSは同じだが、ビットレートが異なるため(40Mbpsと100Mbps)、Pocketが有利。自動操縦のクイックショットは「ドローニ—」「ロケット」「サークル」「ヘリックス」の4種類を用意。実際の動きは動画で。
送信機もスティックを取り外して、折りたためる
スマホを装着して、アプリ「DJI Fly」でカメラ映像を見ながら操作できる。ボタンやスイッチ等も必要最小限のシンプル構成になっている。
アプリもシンプルな構造で扱いやすい。動画はオート撮影のみ
Mavic Mini用に新アプリDJI Fly 。全体的にシンプルになっておりライトユーザー向けのアプリだ。上位モデルと比べて、送信機のボタンが少ないものの、アプリ上でカメラ設定や飛行モードの設定などの変更が可能。写真は動画設定の画面。「…」からアクセスできる「カメラ」メニューの「詳細設定」でヒストグラムを表示できるものの、動画撮影時の露出はオートのみとなっている(AEロックは搭載)。
実際にフィールドで飛ばしてみて
森の中の狭い空間で飛ばしてみた
森に囲まれた小さな滝を撮影。地上はOsmo Pocketで撮影した。上位モデルに搭載されている障害物検出センサーはないため、初心者の方はプロペラガードを装着して飛ばすことをおすすめする。
プロペラ全体を覆うプロペラガード
木や壁などに接触した際の墜落を防ぐ。プロペラ全体を覆うため安心感はあるものの、折りたためない。ちなみにプロペラガードを装着すると200gを超えるが、航空法上は機体重量に含まれない。
紅葉の森の中で飛行してみて感じたことは、小さいおかげで今まで飛べなかった狭い場所を飛ばす時、近づけるのをためらっていた距離に近づけるという新たな側面を発見した。また、プロペラによる風が今までの機体に比べて少ないため葉が落ちたり、水面が動いたりということも少なかった。これは真俯瞰を撮影するときに違和感を与えずに映像を映像を見せられる。
昨今のマイクロドローンでの空撮のブームで、狭い場所をくぐる映像などを目にする機会が増えたが、このMavic Miniを使えば、今までの一般的な空撮機では通れなかったり、安全性確保のため飛ばしにくかった場所などでも撮影できる可能性が出てきた。個人的には、商業施設等の室内撮影の相談もあるので、Mavic Miniによって撮れる画の幅が広がったと感じている。カットの面白さでスパイスとして使うことを考えると、この機体を選択する場面があるのは間違いない。
機体の傾きとカメラの傾きが連携するFPVモード
サーキットでの撮影でテスト。FPVモードは機体の傾きとカメラの傾きがリンクするモード。コーナーに突入する車をフォローするようなシチュエーションでは疾走感が表現できると感じた。
サーキットの撮影では、飛行モードをスポーツモード、ジンバルモードをFPVモードを利用した。前述の通り、Mavic 2などに比べると加速度が抑えられているのと、今回は飛ばし慣れてなかったため、狙ったカットが撮れなかったが、サーキットを走る車のようなスピードの早い被写体を撮る場合には、Mavic Miniの速度感に慣れていく必要がありそうだ。そしてFPVモードは、流行の兆しを見せているマイクロドローンやFPVドローンのように傾いた映像を撮ることができ、追いかけたり追い抜いたりする際に迫力ある飛行感を演出できるため、ポイントで使いどころがある機能だと思う。2.7Kでの撮影に関しては、FPVモードで撮影し、編集時にトリミングと回転を組み合わせてFHD書き出しをすることで、今までとは違う動き方表現できるのではないかと思っている。
総評
元々のDJIユーザーにとっては、199gの機体で新たな表現の幅が広がり、初めての人にとっては、持ち運びが楽で、飛ばしやすい入門ドローン。この機体の登場で、どんな映像表現が生まれるのか楽しみだ。
製品情報●DJI Mavic Mini
https://www.dji.com/jp/mavic-mini