高円寺三角地帯  https://www.himasutajuns.com/

 

REPORT◉編集部・一柳

 

ビデオサロン2020年1月号付録より転載

 

ここまで紹介してきた2例は、本文中にもある通り、本誌連載「動画配信スタジオ運営日誌」を担当する川井拓也さんの「ヒマナイヌスタジオ」(東京・神田)に影響を受けてスタートしている。今、いわゆる「ヒマスタ系」が全国にでき、ムーブメントになりつつある。川井さんによると、スタジオについての機材情報やノウハウはオープンにしているので、それを参考にして始まったところもあれば、川井さん自身がコンサルタントとして入って立ち上がったところもあり、すでに全国で15箇所くらいあるのではとのこと。コンサルタントとして入ったところは、川井さん自身がクオリティ管理をしているが、自発的に始まったものはそれぞれの解釈が加わっているので、「そう解釈したのか!」という発見もあって面白いと言う。

ここ、東京・高円寺にある「高円寺三角地帯」は本家本元が神田とは違うコンセプトのスタジオを作ろうということで、2018年12月にオープンした。高円寺にあった元飲食店だった物件を川井さんが見つけたが、一人で借りるのはさすがに荷が重い。そこでお隣の中野に本社があるJUNSが賛同することになり、ヒマナイヌスタジオとJUNSのコラボスタジオとして立ち上がることになった。

▲本誌連載でもおなじみの川井拓也さん(ヒマナイヌスタジオ/写真左)とハイエンドPCや配信関連機器を開発販売するJUNS(写真は社長の須藤香さん)がタッグを組んでオープンした「高円寺高円寺三角地帯」。高円寺北口の通りを東に向かい、環七通りに交差する角の三角形の建物の1F。

 

そのコンセプトは神田スタジオとは差別化を図った。神田が比較的法人向けなのに対して、高円寺は場所柄、個人向けでカルチャー的なコンテンツを企画、配信する。機材面でもヒマスタ系とJUNS系のコラボになっているのが違いだ。

ヒマスタ系の特徴はカメラはGH系などのデジタル一眼を使い、背景のボケも活かした雰囲気のある画にすること。いくつかのカメラをローランドのオートスイッチング機能を活用して、オペレーターなしで切り替えて見せていく。配信エンコーダーはセレボのLiveShell.X。一方JUNSは自社のPTZカメラを各所に置き、それをコントロールしながら、これまた自社の配信用のターンキーPCを使う。2系統のシステムが機材室に用意されていて、別々に運用することもできれば、機材をクロスオーバーして相互乗り入れするかたちで利用することもできるという。まったくコンセプトが異なるように見えるが、共通しているのは両者のカメラはスタジオの各所に据え置かれて、それが極力目立たないようになっていること。カメラマンが操作するという発想はないし、カメラが目立ってスタジオっぽいということはない。また機材は階段の下の物置のようなスペースにすべてまとめられ、ゲストや観客などの来場者の目につくところにはない。

その場所が本来持っている雰囲気を壊さず、むしろ小物やライティングで強調することで、ゲストがバーのような飲食店風スタジオにやってきて、観客も自然にそれを聞いているというスタンス。実は“飲食店風”ではなく、半年前には飲食店としての営業許可もとっているので、現在はホンモノの飲食店としても使われている。内装は、手は加わっているが、以前、イタリアンレストランだったときものがベースになった。


▲「公開収録」、「BAR営業」、「クラフトビールとスパイスカレーの営業」の予定表が入り口に貼られている。もちろんWEBサイトでも予定を確認できる。

 

そのコンセプトを参考に、各所で現在拡大しているヒマスタ系スタジオは、元理髪店やスナックだったりという、今、新しく作ることは難しいような居抜き物件を利用し、そこをスタジオにしていく試みだ。

配信の内容はゲストを迎えた井戸端会議もしくは近況報告的なもの。従来のラジオに動画が加わった動画回覧板であり、決して目新しいものではないと川井さんは言う。既存のテレビやラジオにもある「徹子の部屋」とか「Ryu’s Bar」、「AVANTI」(東京FM)といった昔からあるトラディショナルなもの。それをネットのライブ配信で可能にしたのがヒマスタ系スタジオのノウハウと言えるだろう。

 

 

飲食店でもあるのでカメラは目立たないように配置

 


カメラはGH2を中心に目立たないように、しかし効果的なアングルになるように配置している。Cam1などは夜になるとゲストの背景はちょうど車のヘッドライトがボケていい感じに。

 

▲ライブ配信の機材は階段の下の物置のようなスペースに。オートスイッチングでの運用が多いので、ここで長時間操作することはない。入って左側がヒマスタスタイルの機材、正面がJUNSの配信PCとPTZカメラコントロールシステム。

 

 

配信システムはバックヤードに

▲ヒマスタのスッチング、配信システム。スイッチャーはメインにローランドV-60HD、サブにV-02HD。エンコーダーはセレボLiveShell.Xが2台。

▲こちらはJUNSの配信システム。配信ソフトOBSで高画質安定配信が可能なモニター一体型でコンパクトなターンキーモデル。手前がリモートカメラLiveCAMのコントローラー。リモートカメラLiveCAM61はフルHDで20倍ズームを搭載。天吊り状態での使用もできる。

 

 

実はライティングが重要


▲カウンターに磁石で設置することでゲスト、ホストのホウレイ線を消す。磁石の位置は画面にライトが入らないためのバミリの役割も。

▲厨房内のライトはホストのためのバックライトになる。ライブ配信では後処理ができないので、その場の空間の雰囲気を作るライティングが重要になる。

▲奥のデルタステージは一段高くなっていて、スポットライトも当たるように。その横の壁にスクリーンがあり、一番手前のライト型のプロジェクター「スペースプレーヤー」で映像を投射する。

 

 

各所に細かいアイデアと遊び心が詰まっている

▲ライブであることをアピールするために日にちがわかるもの、時計が各所に置かれている。これも演出の一つ。

▲出演者はどう写っているか気になるもの。カウンター上のモニターに表示。

▲アンドロイド端末を額縁に入れて。

▲スマホ充電用のUSB端子が各所に。

▲エポックメイングな古い機材をディスプレイ。

▲なんとトイレの中の壁にも名機がぎっしり。

 

 

VIDEOSALON 2020年1月号より転載