REPORT◉田村雄介
我々が深淵を長く覗き込む時、深淵もまたこちらを覗いているのだ… あれ、この深淵…レンズついてるぞ…? この深淵は…そう!Canon謹製「マウントアダプター EF-EOS R 0.71×」! 戦え撮影者!覗き込め!モンスターよ、俺になれ!(ニーチェにあやまれ)
フルサイズこそ至高…莫大なレンズ資産を活かしきるのは我らS35…くくく…お前のフランジバックじゃぁー何にもできねぇーなー! 我こそは全てのイメージサークルをカバーする者m4/3…はぁ? 1/1.7型レンズ交換式カメラ知らないとかモグリですか? なんとか65「呼んだ?」 ここはそういうとこじゃねぇすっこんでろ。APS-H「呼んだ?」すっこんでろ! ラージフォーマットだけどミニでぇす! ひっこめ! といった具合に長きに渡るセンサーサイズ&マウント論争で疲弊してゆく我々撮影者。ともすれば悪口にしかならないような戦いの末の2021年現在。ボディ側で様々な規格が咲き乱れてしまった結果、レンズはとりあえずEFを持ってりゃなんとかなるんよ。ってな具合に結論づけられているのではないですか!っと思うんですがどうでしょう。
もともとは写真機に対してサードパーティー側からのアプローチで出てきたマウントアダプター。これが映像を撮る上で各社いろいろな機能やセンサーサイズが乱立してるということもあり、映像業界で急激に重宝され始めたのです。マウントアダプター大流行一歩前の黎明期は電子接点もなんにもなくって、マニュアルレンズではない電子絞りのレンズは純正マウント機で絞りを決めて、そのままカメラから外してレンズが突然死した状態そのものを取り付けたりという工夫から始まり、アダプタそのものに絞り機構を備えたり、電子接点を装備して絞りや手振れ補正が動くようにしたり。
そしてm4/3や初代BMPCCが流行った頃になるとレデューサーレンズ、即ち縮小光学系を搭載してスモールセンサーながらもレンズの実焦点距離に少しでも近づけようと0.71倍や0.64倍、被写界深度は変わらないけど明るさは1段とか1段と2/3明るくなる的な、みんなが標準装備してるというようなマウントアダプターまでが出揃ってきました。そこにはSIGMAが交換レンズメーカーとしての矜持を持って生み出した名機、MC-11なども含まれます。そうこうしてるうちにもカメラ業界はどんどん進化と融合が進み、映像と写真はますますボーダレスに。ほぼ全社ミラーレスの上位機スタンバイ! 映像機としてもバンバンフルサイズ化していくぜ!というところの昨年、元来フルサイズ想定であろうRFマウント機にSuper35センサー搭載という、一見「おやっ…?」と思われる新星が爆誕しました。
そうEOS C70です。
「ショートフランジバックによりボディーの奥行きを大幅に短縮した小型ボディを実現しました」というメーカーの文言通り、ぱっと見一眼レフカメラとシネマカメラの中間のようなサイズ感。そこにEOS C300 Mark IIIで採用されたDGO(Dual Gain Output)センサーを搭載するという、なかなかにチャレンジングな一品。ライバルがこぞってどころか自社でもEOS R5という強烈なフルサイズを走らせ始めた直後に出てきたこのカメラ、と同時にリリースアナウンスされたのが今回ご紹介する「マウントアダプター EF-EOS R 0.71×」。そう、なんとカメラメーカー純正でレデューサーレンズ搭載の自社to自社マウントアダプターをリリースしてしまったのです! これにはおどれえた! 前置きなっげ!
しかしこの前置きにさらなる付け足しをせざるを得ない事実が一つ…DSMC界の雄、REDからもRFマウント採用のSuper35センサー搭載カメラが登場していたのであった…その名をKOMODO…さぁややこしくなってまいりましたが実食タイムでございます。
いろいろと共存させてこそ美味しいSuper35機
さて、今まで僕自身散々マウントアダプターという物を使用してきた中でクセといいますか、思い込みってのがありまして、今まで使ってきたマウントアダプターって多くがm4/3機に対してレデューサーレンズ搭載マウントアダプターを使い、いかに汎用性を持たすか、初代BMPCC、GH5、BMPCC4Kなどなど…というところに腐心してきたわけです。そんな頭からすると当然今回もすべてのレンズが使えて然るべき! 愛用してるSIGMA18-35も10-20も広い画角で使い放題だゼ!って思ったんですが、当然これらのレンズはすべてケラれます。当たり前じゃい! Super35センサーに0.71倍かけてるんだからこれはもう完全にフルサイズ対応EFレンズオンリーですよ。
にもかかわらず最初これらのレンズを装着してキョトンとした僕の顔、想像してください。できないですね。しらないもんね! 僕の顔! 今まで0.64倍などは避けてきたためか、なんとも間抜けな話です。
が、その辺のレンズを使用したければ別の純正EF-EOS Rアダプターなどを使用すれば良いというわけで。フルサイズ機で画質的に若干ためらわれるクロップモードなどを使用しなくてもSuper35対応以上のレンズすべてを受け入れられるというのはまさにSuper35センサーのメリットとも言えます。強いていうならばC70にはSuper16モード、KOMODOでは撮影解像度を変えるといった手段もありますが、これはもうよっぽどリグの都合とかでもない限りないのかな、と。だんだんカメラ寄りの話になってきたので一旦この辺で切り上げとさせていただきます。
▲EF-EOS R 0.71×(左)と愛用し続けてきたm4/3用のSpeed Booster ULTRA 0.71x(右)。こうしてみるとmetabonesも内面処理とか頑張ってる。余談だけどEOS R、EOS RPの4Kクロップ動画用にmetabonesもULTRA 0.71xをリリースしてたりする。
↓こちらはSIGMA 18-35mm。当然ながらワイド(写真上)はがっつりケラれる。下は35mm。24mm以降は意外といけるかな?って感じだけど無理しなくてOK。
↓こちらはZEISS LWZ.3 21-100mm。こちらも似たような結果でワイド(写真上)はがっつり。中距離以降は意外といけるかな?って感(ry
純正ならではの気遣い
カメラメーカー純正のマウントアダプターなのに社外のKOMODOでも普通に使える!嬉しい!といったところで一旦KOMODOにはご退場いただきまして。っていうかKOMODOがホントようやってくれてるんですよ…だってEF-EOS R同梱ですよ?っていやいや退場退場一旦引っ込んで。
この段では純正同士でこそできる機能のご紹介でございます。このマウントアダプター、装着するとC70のモニターに表示されるレンズ情報は恐らく全て換算後の表示となります。例えば40mmのレンズをつけると画面表記は28mmに。F値表記はF4ならばF2.8に。さらにシネマレンズなどを装着した場合はF値表記からT値表記に。恐らくと言ったのはmetabonesでもこの部分、だいたいは対応していたけれどもレンズによって表記に差異があったと記憶しています。今は改善されてるかもしれませんが、今回この純正の組み合わせ。一応恐らくとさせていただきます。
しかしこれはC70単体、もしくはC70複数台で使用する場合は非常にありがたいものです。通常撮影通り表記されているものに合わせれば良いだけなので、現場でのパッと見の考え方が非常にスムーズになります。台数分同じマウントアダプターを揃えられなかった場合などの混在時などに大変ありがたいところ。混在時ではなく単体時でも直感的に数値が飛び込んでくるのはシンプルで良きです。
そもそもC70とKOMODOが混在するような現場はないと思いますが、これが混ざってくると非常に厄介。完全に想定外のケースなので、こんなことが起きないようちゃんと準備しましょう(笑)
C70の場合は、スチルレンズの時は自動的にF値を調整し同じ露出になるようにしてくれてF表記も一緒。
シネレンズの時はマニュアルで設定するためそのまま付け替えるだけだと露出変化が起きる。
ややこしいのだけど、先にEF-EOS R 0.71×でT4にしてしまったため通常のアダプタだと実絞りのT5.6、手動でT4.0に変更して露出もほぼ一緒の状態になる。これがKOMODOだとT5.6基準となり色々ややこしくなる。
C70にシネレンズを装着した場合、T4の時、画面表記は2.8。T1.5の時はT1.0表記。
実際の画角変化
そんでアダプター装着すると実際どんくらい変わるのよ?っていう話なんですがこれはレンズのmm数やら絞り値、対象との距離、レンズやボディ、アダプターのコンディションなんかで本当に色々変わってしまうところなので単純比較でいきたいと思います。レンズチョイスはボディが社外混じりということもあってずばりサードパーティーSIGMAの40mm、シネとスチルでEF-EOS RとEF-EOS R 0.71×を付け替えながらC70とKOMODOでサイドバイサイド。
その画ががこちらになります。色味はなんとなーくあわせてあるだけなので、単純に画角の差異を見ていただければと。ちなみにサイドバイサイドの左がC70、右がKOMODOなのでその分の微差も加味しつつご覧ください。一個嘘つきました。自己所有で同一ガラスの玉がこれなのでご容赦をば!
左がC70、右がKOMODO。画像上が通常のEF-EOS R。下がEF-EOS R 0.71×
同じく左がC70、右がKOMODO。画像上が通常のEF-EOS R。下がEF-EOS R 0.71×
▲KOMODOのほうがちょいと広いか。
KOMODOでセンサークロップで撮影する場合
ちなみにKOMODOで撮影解像度を変更しセンサークロップで撮影する場合はどう? という疑問に対してSIGMA18-35mmをあてがってみると、6K17:9はワイド、テレ、ともにケラれが生じるものの、5K17:9ではテレ側はほぼセーフに。そして4K17:9クロップの場合はワイド、テレ共にケラれが消えた。このように組み合わせ次第ではs35用レンズでも使用できるので、予め手持ちのレンズをチェックしておくといざという時の助けになるのではないだろうか。
6K17:9時 SIGMA18-35mmの18mm
5K17:9時 SIGMA18-35mmの18mm
4K17:9時 SIGMA18-35mmの18mm
もうちょい続きます
レデューサーレンズを介すと歪みとかそのへんどうなの?って話も当然あると思います。これが自分の目で見た限りではかなり良好な部類で調整されてました。これまたSIGMA40mmにKOMODOという一見Canonさんからは怒られそうだけどアダプターの素性を見るにはちょうどよい組み合わせがこちらになります。後ろに敷いた方眼の立て込み精度もあるのでご参考まで。
▲元レンズがボディ補正に頼らないレンズであるということもさることながら、歪みなどの質がほぼ変わらない。これは優秀。
それとこのマウントアダプター、今回は用意できなかったものの、C70に対しては標準装備のスペシャルなオプションも一つ。両脇に飛び出た羽根とボディを固定することにより、マウントアダプタをシネロックばりにボディにガッチリ固定できるのです。これは純正メーカー品として、そして後発部隊としてちゃんと考えてくれたな!とィヤッホイしちゃうところですよ!
▲ボディマウント周辺に見えるネジ部分を使用し、包み込むようにガッチリロックできるのが純正同士の強み。
選択肢が増えることのありがたさといったら!
毎度駆け足で突っ走り、最終段でございます。ある意味ミラーレス後発のような形になったCanonが打ち出してきた手はあれやこれやとありましたが、その中の一環として(RFレンズは使ってもらいたいものの)億本売れに売れまくったEFレンズをそのままフェードアウトさせるのはユーザー的に歯噛みさせることと同義と言わんばかりに、3種類のEF-EOS Rアダプタをリリースしてきました。無印、コントロールリング付き、ドロップインフィルター付き。ここまででもEFレンズユーザー的にはめちゃくちゃありがたいところです。そこにさらに加えてきた一手。元祖一眼レフD30からのEFユーザーとしては涙がちょちょぎれる思いです。
こんなレビューを書いててなんですがC70は手元にないです。が、KOMODOは手元にあります。個人的に所有RFマウントボディはこれで3台目(2台はR5)。そろそろRF沼に親指突き立ててズップリ沈み込んでやろうかなと思っていましたが、BMPCC6K Proのレビュー時にも書いた通りこの疫病蔓延とかいう大変苦しい時期。今時のレンズ選び的にはKOMODO用のチョイスとして大いにアリではないかなと思ってる次第です。もちろんC70に関してもですが。実際仲良くさせていただいているKOMODOユーザーの中にはすでにこのEF-EOS R 0.71×を使ってるゼ!という方もいらっしゃいます。LA-EA5やLA-EA4をリリースしているSONY、マウントアダプター FTZをリリースしているNikon然り、メーカー純正として柔軟な運用がまたひとつ増えるマウントアダプターという存在。この度も是非ともご検討いただいては如何でしょうかっ。というところで今回の書き散らしも〆させていただきたいと思います。おしーまいっ!
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