4月20日、東京・港区の東京タワー内3から5階にかけて、eスポーツパーク「RED° TOKYO TOWER」(レッド トーキョータワー)がオープンした。
同所は、ゲームを軸にした大型エンターテインメント施設。32台のゲーミングPCや配信スタジオなどを備え、eスポーツの大会開催はもちろん、eモータースポーツや謎解き、ARスポーツのHADOやボードゲーム、さらにはカフェ&バーやオリジナルショップなど、一般客も楽しめる多種多様な“遊び”が用意されている。
今回ビデオサロン編集部が注目したのが、施設内に設けられたという約100~150人を収容できるイベントスペース「RED° TOKYO TOWER SKY STADIUM」だ。大型4面LEDパネルと立体音響システムが常設され、カメラ映像と3DCG映像をリアルタイム合成して映し出せる。最先端XRアリーナをうたう本スペースでは、eスポーツイベント、音楽ライブ、ファッションショーなど様々なイベントに活用できる。
この「RED° TOKYO TOWER SKY STADIUM」のプロデュースを行なったのが、IMAGIGA GROUPのIMAGICA EEXだ。IMAGICA EEX CEO兼CCOの諸石治之さんは、「映像が空間に溶け込んでいるような体験を得られる特別な場所。臨場感と没入感のあるパフォーマンスが発信できます」と施設の特徴を説明する。
本スペースはどのようなシステムで運用されているのか。LEDパネルはパナソニックのEQ1シリーズを使用。複数枚を連結させ、正面が9m×3m、左右が5.5m×3m、床が5.5m×9mという寸法だ。正面と左右は3.9ピッチで、映像を高精細に映し出す。
カメラはPTZカメラ。パナソニック AW-UE150Kを5台備え、あらゆる角度から映像を届ける。さらに臨場感のある映像を配信に組み込むため、ワイヤーカムのfeiyu pocket 2sも2台常備。
客席横を走るように設置されており、「カメラがワークしている中でリアルな空間からいつの間にかデジタルな空間にシームレスに変えていくこともできます」と、配信映像のXR体験をさらに高めてくれる。
XRシステムの要となるリアルタイムレンダリングソフトは、放送局などで使用される「Viz Engine」を中心に据えて設計。UnityやUnreal Engineなどとの連携も可能だ。
ここまでの規模のシステムを組み込んだ日本のeスポーツ施設はそうそうない。“映像演出”という面にかなり注力していることが分かる。海外のeスポーツシーンを見ると、大会のオープニングセレモニーでARライブを行うなど、最先端の映像演出が行われている。
施設館長の長野さんは、「世界のeスポーツはフェス化しています。日本も、エンターテイメント性に富んだ新しいeスポーツの形をここから発信していきたい。さらにこの『RED° TOKYO TOWER SKY STADIUM』を中心に、周辺の増上寺やプリンスホテル、芝公園など様々な施設をサテライト会場として連携し、ゆくゆくは日本を代表する大型フェスへと発展させていけたらと思っています」と展望を明かす。
ゲームの大会を、大型フェスへと発展させていくには、これまでの枠組みに囚われない柔軟な発想が必要だ。それは映像クリエイターも同じで、今後求められるスキルも変容してくる。
「僕らもそうですが、映像ってどうしても16:9というスクリーンのサイズにとらわれてしまうと思うんです。これからは、このような立体的な映像空間など、フレームに縛られない表現や、体験全体をデザインできるような映像クリエイターが求められていくと思います」と諸石さん。
そのためにはどうすればよいのか。「想像力の解像度をあげていく必要があると思います。緻密に分解して、いろいろな要素を、音響さんや照明さん、デザイナーさんなど多くのクリエイターたちと掛け合わせ、よりリッチな絵を描いていかなければなりません」と語る。一歩、二歩先を描く思考が必要になってくるようだ。
年々盛んになるeスポーツだが、この施設の登場でどのような盛り上がりを見せていくのだろうか。それと同時に、XRを軸にした新たな映像表現も増えていくはず。今後の展開に注目していきたい。