8K CMOS搭載でソニーにもようやくREDに本格的に対抗できるデジタルシネマが登場した、ということでF65が話題ですが、その実機が日本で見られるとあって、
川口のSKIPシティにまで行ってきました。
SKIPシティは行かれたことがある方ならわかると思いますが、川口といっても、JRの川口駅や西川口駅からバスにのって20分くらいかかるので、ちょっと行くには大変なのです。
以前、筆者の方がよくSKIPシティでテスト撮影などをしていたので、頻繁にいっていましたが、東京からいくとソニー厚木に行く(つまり半日仕事)感覚といいますか。
セミナーは1時からと3時からだったのですが、3時からの回に行ったところ、1時のセミナーに参加した放送ジャーナルとビデオαの編集の方とすれ違って開口一番
「F65、ファインダーでしか画が見られないよ〜!」と言われて始まる前にがっくり。
その模様はこちらをご覧下さい。


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F65はたしかにファインダーでしか画が確認できなくて、実機を見るというレベルではなかったのですが、
ソニービジネスソリューションの小倉さんのお話がこのセミナーではとくにわかりやすくて、よかったですね。
小倉さんといえば、ソニーの業務用機器をお使いの方ならご存知だと思いますが、展示会での人を引きつける巧みな機材説明トークで、まわりに人垣ができるほど。
元カメラの設計だけあって、技術に詳しいし、現場での使い方もよく把握しているので、技術と現場の架け橋になる存在です。
今回のセミナーもそうだったのですが、ソニーの製品がいまいちなところははっきり言うところも信頼される理由かもしれません。
(私は、そうですね、たぶんDXC-537Aか637という20年近く前のカメラのころからお世話になっている記憶があります)
セミナーの最後に今回のデジタルシネマカメラの新製品とは関係なく、
今、ソニービジネスソリューションで考えていること、というか小倉さん自身が整理していること、というのが個人的にも分かりやすくてよかったので、ここでそのまま紹介します。
言われていることは今や当たり前のことなのですが、
ここ数年の変化を把握する意味でも分かりやすいと思いました。
編集部でもこういった話は断片的にしますが、おそらくソニーの商品企画段階でも、またマーケティングレベルでも日々、こういった話をしているのでしょうか。
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ここでふと気がつくと確かにそうだなあと感じるのが、
「ショルダーカムコーダー→ハンディカムコーダー」というところ。
本当にショルダーからハンディに置き換えられるシーンが増えたように思います。
「シネマ映画製作者→誰もが作れる環境」というのは、EOS MOVIEによって完全に
その流れは確立したと思います。しかも劇場公開クオリティだって夢ではないという
レベルのものも個人で買えるクラスの機材でできてしまう。
それまでは映画の機材は個人が触れるものではなかったし、映画そのものも職人が作る世界でした(もちろん職人が作る良さは絶対にありますが)。
そもそもビデオサロンが映画の現場を取材すること自体があり得なかったのですから、
EOS MOVIEというのは、今振り返ってみると大げさではなく革命でした。
60i→60i,60p,24p,30p
というのも当たり前になりました。それまでは何も考えずに60iでしたが、今や最終パッケージが何で、どういうテイストの映像に仕上げたいかで最初に選択する必要があります。
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シネマ映像とビデオ映像の違いは、どちらが良い悪いではなく、また、どちらが好きか嫌いかでもなく、コンテンツに合わせて使い分けるという時代になりました。
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従って、カメラもひとつのカメラで済むということではなく、用途に応じて求められる機能がまったく違ってきます。フォーマットも決して上のフォーマットであればよいということはなく、ドラマ制作用途でもなければ、AVCHDで充分で、むしろ上位フォーマットでは困ることだって起きてきます。4Kなどはシネマの用途以外には必要ないし、大判センサーというのもCMや映画だけでしょう。ブライダルはなによりも高感度とバックアップシステム。イベント収録などはカメラマンを何人もかけられないので、リモート制御が欲しい、などなど。
カメラや機材を評価する側も、これはどういう用途のために作られたカメラなのか、そしてそれは現場の欲求に合致しているのかどうか、というところが評価ポイントになってくるということでしょうね。
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プロのカメラマンに求められることも変わってきます。
これまでは主に左側にあるようなことで済んでいたのが、
大判センサーのカメラが出てきたことで、カメラ選びから、60i/24p/30pなどのフレーム選択からハイスピード撮影などのフレーム操作、被写界深度をコントロールするテクニック、ピクチャープロファイルでルックを作れる技術も求められると思います。
これまでのビデオカメラマンはこの図の右側にあるようなことはあまり考えなくてよかったのですから、大変です。
ということで偶然ではないと思いますが、ビデオサロン誌上でも、短期集中のピクチャープロファイル講座を次号から始めています。これまでルックコントロールというのは、記事にしてもまったく受けなかったのですが、あえて提案の意味も込めてやってみることにしました。ルックをいじれる技術とセンスをもっていることは、これから映像を撮る人にとって不可欠になるのではないでしょうか。それはプロのビデオエンジニアの専権事項ではなく、演出をしている映画監督や映像クリエイター、イベントを記録するビデオグラファーにとっても、ピクチャープロファイルが必修科目になるような気がしています。
そんなことなどを
小倉さんとも立ち話をし、
「ビデオサロンとしても、やらねばならないことがいっぱいあるなあ」
「景気が悪いとかいって愚痴っていてはいかん」
と思いながら帰路についたのでした。