富士フイルムのX-T2が気になっている。写真カメラとしては、X-T1から興味があったが、X-T2になって4K記録に対応しただけでなく、ビデオサロンでの2号連続でのレポートにもあったように、かなり動画に本気に取り組んだようで、機能、性能ともに、ムービーカメラとしても十分魅力的なものになっている。
正直、これまでの富士フイルムの一眼の動画機能は、レンズの良さは感じるけど、ローリングシャッターも激しく、動画のノイズ対策もゼロに等しく、評価するレベルにはいっていなかったのが事実だった。メーカーからお借りして他社と比較しても、書き方に困るほどで、そのうち最近のラインナップは借りることもなくなった。
ところが今回のX-T2は違うらしい。メーカーの気合の入れ方も違うし、4K動画についても大いにアピールしているし、映像制作者も注目している。そこで私も個人的にお借りして、短い時間だが気になるところをチェックしてみた。


サイズはα6300よりちょっと縦に寸法があるくらい。X-T1よりは大きくなったとはいえ、充分小さい。カメラとしてはシャッター音も柔らかいし、モノとしての質感も高いし、言うことなし。何の気なしにシャッターを切っても魅力的な絵が出てくる。手にとってダイヤルを回しているだけで欲しくなる。
P4150123.JPG
レンズはキットの18-55mmを使用した。遠景よりもスナップくらいの距離の立体感がいいと思った。ワイド側でF2.8と明るいのにコンパクト。

同じ場所でフィルムシミューションを変えて撮り比べてみる


レンズはワイドズームの10-24mm F4。
フィルムカメラでフィルムを選び分けたように、フィルムモードを選択する。動画もまったく写真と同じように撮れる。他者のカメラのピクチャープロファイルとかピクチャーエフェクトとはちょっと位置づけが違うような気がする。
フィルムを入れないカメラがなかったように、必ずどれかを選ぶ。
選んだら、写真でも動画でもルックが違うということはなく、統一されている。
まさに「写真画質」でそのまま動画が撮れるという考え方。波形、ベクトルがあるとわかりやすいので、プレミアに載せたところを画面キャプチャした。
PROVIA(スタンダード)
provia.png
VELVIA(ビビッド)
velvia.png
ASTIA(ソフト)
astia.png
ここまではポジフィルムのラインナップ。
クラシッククロームはデジタル時代になって追加された
ccrome.png
あまり色がない風景なので、違いがそれほど大きくように思えるが、わずかなトーンや白の違い、色の違いで、印象が変わってくる。全体的にはどの画もEOS MOVIEを最初に見たときの印象に近くて、長時間見る映像としてはコントラストは高めで、黒はしまっている。まさに写真的な画質。

同じ条件でF-Logで撮影する


ログは、本体のメモリーカードでは記録できず、4Kムービーの出力先として、カード、HDMI、HDMI(F-Log)の3種類から選択し、HDMIから出力されたものを外部レコーダーで記録する。F-Log出力をATOMOS NINJA ASSASSINで記録した。プミレアで開いた(上はカードが直接プレミアに読み込んで画面キャプチャ)。
flog.png
LUTは富士フイルムのサイトから提供されていて、今のところは2種類ある。
FUJILUT.png
F-Log用のLUTはこちら
プレミアでこの.cubeファイルを適用させた。
F-Log→フジ提供のLUTを当てる1
コントラストをそのままに、色をREC.709に変換するタイプのLUT
flog_c_rec709.png
F-Log→フジ提供のLUTを当てる2
コントラストはWideDRに、色をREC.709に変換するタイプのLUT
flog_wdr_rec709.png
F-Logに1のLUTを当て、その後グレーディングした(周辺減光含む)
flog_grade.png
F-Logは映像、波形を見てもわかる通り、ある程度コントラストがあり、このままでも成立する画だ。他社とは比較していないが、キヤノンC-LogやJVCのV-Logと近い発想だろうか。
Logであっても波形は上から下まである程度広がっている。ただ、フィルムシミュレーションでは飛んでしまったり、潰れていた部分が、Logではすべて残っている。
どうして外部記録しか許されていないのかわからないが、
内部記録したからといって、それほどノイズが増えるタイプのLogには見えない。
もし開発スケジュール的にLog記録を実装するのが間に合わなかったということであれば、ぜひファームアップでLogの内部記録も実現してもらえれば、私としては嬉しい。
とはいえ、このX-T2、少し撮ってみただけなのだが、
ずばり、「VELVIAで風景ムービーを撮ったときが最強で一番魅力を発揮する」という気がしている。あとは肌色再現が良さそうなので、グラビア撮影なんかにもいいのかもしれない(残念ながら試していない)。
以下、テスト素材を並べただけで、音も含めていっさい加工はしていない。
AF-Cはなかなかがんばっている。いじわるな目で見ると、くっくっというフォーカスを合わせようという動きは大画面で見ると微妙にわかってしまうし、静かなところではレンズ駆動の音も入ってしまっているのだが、このAF-Cは動画でも結構使えると思った。

途中からVELVIAに切り替えたら、液晶で見ているだけでも、そこから戻れなくなってしまった。これは怖い。VELVIAには中毒性がある。
露出さえ気をつければ、VELVIAで日本の風景を撮ると、なんとも言えないいい色になる。とくに緑の発色はなんだろう? 
緑はヘタをすると造花っぽくなってしまうケースもあるのに、富士の緑はこれだけ色をのせても作り物っぽさがないのが不思議だ。それとも、これが写真の緑だと富士フイルムに目が教育されてしまっているのだろうか? 人生やり直すわけにもいかないし、これまでの写真の歴史を変えるわけにもいかないので、本当のところはわからない。
いずれにしてもF-Log内部記録を実現させて、そこからVELVIA風にするLUTを提供して欲しい!