ドローンを使ってワンシーンワンカット撮影!「見た目」カットと客観を巧みに行き来して女子高生ふたりの「ふるさと」を巡る会話を追っていく

寅さんシリーズファンの天真爛漫な女子高生・ミキと、生真面目な理系女子・マミ。江戸川沿いを歩きながら“ふるさと”の定義について語り始めるなかで、ふたりの関係が見えてくる。コンテストは5分以内だったが、6分のディレクターズカットは下のURLから見ることができる。5分版で矛盾を感じるセリフが実は解消されていて、必見。

聞き手・構成●編集部 一柳

 

ディレクターズカット版    https://bit.ly/kosuge_editver

 

 

 

4Kドラマ部門グランプリ
「ふたりのふるさと」(4K)― 小菅規照 さん(カズモ)

 

 

—小菅さんの経歴を教えてください。

映画監督志望で、映画の専門学校に行きまして、卒業してそのまますぐフリーの演出部として活動してきました。中田秀夫監督の現場で学んだことも多くて、テレビドラマも多くやらせていただいてきました。今は制作会社(カズモ)に所属しています。

——自主制作もやってこられたんですか?

ほとんどできてなかったのですが、カズモに入ってから齋藤寛朗さんに、時間をとってなにか作ったほうがいいよと勧められて、今回5分のコンテストがあるからということで機会を作っていただきました。

——5分という尺はどうでしたか?

戸惑いはありましたね。5分だとストーリーの起承転結を描くには短い。最初に脚本を書いた段階で長かったので、スタッフのアイデアを聞いて、情報を全部なくしたらどうなのかとか結構ぎりぎりまで脚本は直していました。僕の書いた脚本だとどうしてもリアルな若い子たちの言葉遣いではなかったので、言い回しなどは調整しました。ふたりのキャラクターや関係性をどう端的に伝えるかは脚本の段階でも悩んでいて、芝居の段階で、たとえば「君は髪をかきあげるよりも眼鏡を気にする子なんだよ」というような話を伝えて演出していきました。

今回ワンシーンワンカットだったので、要素は伝えるけど芝居としては素直なリアクションが欲しかったので、固め過ぎたくはなかったんです。でもカットバックではないので、どこかで失敗すると全部頭から撮り直しですし、5分過ぎるとNGですから、そこは悩みました。でも、彼女たちが毎回新鮮な気持ちで楽しんでやってくれたので助かりました。

——現場で何度も何度もやっているんですね。

朝から夕方まで使って、リハーサルで10回以上、回しはじめてからも10回以上で20数回やっています。昼食で一度ブレークできたのが良かったかもしれません。

——ドローンで撮影しているそうですが?

最初にドローンで撮ったらどうかというアイデアがあったんす。ドローンでも芝居を撮れることを証明したくて。実験段階では普通に片方ずつ撮って、編集で繋ぐということも試しましたし、ワンシーンワンカットも試しましたが、かなり難しいということが分かりました。芝居が動けば動くほどカメラがどうしもてキャッチできないんです。

そこで思い付いたのが、「見た目」ショットを入れるということでした。どちらかの見た目で撮れば、ドローンカメラが揺れたとしても相手が絵に入ってくれば芝居として見えるんじゃないかと。ただ一人称になってしまうと、物語がどちらかから見た話にならない。それだと僕がもともと描きたかったものと違ってしまう。途中で話が変わるタイミングで、逆の見た目にしようと思いました。そうすればそれぞれの物語をわりと強く見せられるかなと思って。撮影方法が逆に演出を強くしてくれたかもしれません。最初、客観から入ろうとしたのですが、それができず、見た目から入ったことで結果的に面白くなったなと思います。

 

撮影はDJI Mavic Mini

ドローン1台でワンシーンワンカット撮影。このようにトレイに載せて右の写真のように持って芝居をフォローしていった。最後の空撮シーンはこのトレイから離陸させている。

 

——視点が変わる時に鈴の音がしますよね。

リュックについている鈴の音がするという設定なのですが、ちょっとした引っかかりをつけたいと思いました。普通に考えてちょっと違和感のある音かもしれないけど。実は編集段階でこの鈴の音はありなのか、なしなのか最後まで悩んでいました。

——ありですよ。あの音でなぜか分からないですが感動しますから。現場の音の収録はどうしているのですか? ドローンの音とかは編集の段階で消しているのでしょうか?

セリフはピンマイクとガンマイクです。両方のいいところを使っています。一人称の見た目になるところはそれっぽくなるように調整しています。ドローンの音は消しています。そもそもドローン自体、小さいMavic Miniなのでそんなに大きい音ではないし、むしろスタッフの足音のほうが大きいくらいでしたね(笑)。

——現場の人数は?

最小の10人です。カメラマン、録音部、衣装、メイク、制作、ふたりの出演者という感じで。一度カメラが回り始めると5分間は回しっぱなしなので、衣装さん、メイクさんは土手の向こうに隠れてもらって。

——楽しそうな現場ですね。素晴らしい作品をありがとうございました。

 

撮影現場

●監督・脚本・ドローン:小菅規照、●撮影監督:彦坂みさき、●録音:小黒健太郎、●音楽:平本正宏、●出演:藤嶋花音、日下玉巳

 

 

●VIDEO SALON2022年11月号より転載