▲博報堂プロダクツ「pod」のみなさん。写真右上から時計回りに、大津 央さん(フォトグラファー)、辻 徹也さん(フォトグラファー)、髙橋 佑馬さん(プロデューサー)、竹花 綾さん(プロデューサー)。

 

2022年12月12日、博報堂プロダクツのフォトクリエイティブ事業本部は、ドローン撮影チームpodを本格的に始動したと発表した。同事業本部に所属するフォトグラファーが自らドローンを操作して撮影することで、より高いクリエイティビティとクオリティを発揮できるとしており、同日それを象徴するイメージムービーをプレスリリースの中で公開している。ここではそんなpodとプロモーションムービーについて、制作に携わったメンバーに話を聞いた。

取材・文◎青山裕介

 

 

 

フォトグラファー自身がドローンを操作して撮影するオリジナリティ

数年前から同社内でドローンを使った部署を立ち上げるべく社内向けのプレゼンを重ねてきたプロデューサーの髙橋佑馬さん。同社アートディレクターの岡村 征朗さんと一緒に行った海外ロケで、ドローンが撮った映像をスマホで簡単に見られることに感動し、「これをフォトグラファーが飛ばしたらもっとすごい画が生まれるのではないかと思った」という。正式にドローン撮影チームの立ち上げが始まると、フォトグラファーの大津さんがドローンスクールでドローンの操縦と知識を学ぶほか、個人や社内で練習する機会を設けて、技術を習得してきた。

現在、博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部 ドローンチームpodには、東京拠点のフォトグラファー2人(辻さん、大津さん)、プロデューサー2人(髙橋さん、竹花さん)、さらに九州にある同社拠点 ENGINE PHOTOCREATIVEのフォトグラファー2人という合計6人が所属する。すでに2021年12月頃からルールを整備し、業務を受注できる体制を整え、実際にドローンによる撮影業務を行っていたが、社内のみならず社外からも案件を受けていきたいという狙いで、改めてpodというブランドを打ち出してローンチした。

podというブランドは「Perspective(視点/こだわる)」「Organized(組織力/つながる)」「Development(発展性/かけあわせる)」の頭文字をとったもの。自社のフォトグラファーがアングルやライティングにこだわって、博報堂プロダクツの組織力を生かすこと、充実した機材や人材を駆使した発展性といった意味が込められている。また、「podのロゴは回転させてもpodに見えます。ドローンのプロペラのように回ってもちゃんとpodに見えるということにもかけているんです」(髙橋さん)という。

 

小型ドローンを駆使してレールよりも低いアングルを狙う

 

今回、撮影チームpodのリリースとともに公開された1分32秒のプロモーションムービーは、 バレリーナの動きをカメラとドローンで捉えたもの。「博報堂プロダクツはドローン撮影の会社としては後発ですが、他社には真似できないクリエイティブ力があります。当社のフォトグラファーが操縦することでしか表現できない画力へのこだわりや表現の広がり。ただの俯瞰の風景撮影では終わらないドローンを使った映像作品を作りたいと思いました。今回ご縁があってpodのブランディングを担当させていたくことになり、動画チームの監督城井さんもアサインさせていただきました」(岡村さん)。

 

制作期間は1カ月余り。バレリーナとpodにある共通点。それは日々の鍛錬の末に得られる表現力であり、常に高みを目指す姿勢でした。バレリーナが優雅に踊っているだけの映像ではなく、息を飲むような現場の緊張感も表現したかった。そこでpodメンバーの意見を取り入れながらストーリー性のあるオリジナル音源を制作。それをバレリーナの皆さんに共有して振りを付け、記録撮影したものをベースにVコンを作りながらイメージを共有していきました。(城井さん)。

 

撮影の舞台となったのは倉庫を利用したゴーカート場。ここにスピーカーを設置して曲を流しながらプレイバック撮影を行なった。「一曲通してのテイクは3回くらいで、あとはパートごとに撮影を重ねました。特に真俯瞰のアングルではバレエの先生がバレリーナのチュチュのふくらみを調整してくださり、podのメンバーはタイミングを調整。両者の息がピッタリ合った時、きれいに広がって花が咲くようなカットが撮れました。あの画が一番ドローンらしいカットで皆さんの笑顔が印象的でした」(城井さん)。

今回の撮影に使用したドローンは、DJIのInspire 2とMavic Air 2s、MINI 3 Proの3台。トーン、ディテールを重視する場合などは、センサーサイズの大きいカメラが使える大型のドローンが必要ですが、場合によっては小型のドローンの方がセッテイングなどの準備が少なく、撮影シュートのタイミングを逃さない。陽が出た瞬間に“待ってください”と言うよりも、パッと飛ばした方がタイミングを逃しません。撮影環境や香盤などの制約が厳しい場合などは小型の機体のほうがいいこともあります」(大津さん)。

▲地面スレスレを飛行させて、MINI 3 Proであおりのアングルで撮影。

 

また、大津さんによると「レールを敷いてそこにカメラを走らせるよりも低いアングルで撮ることができる場合もある」といい、今回の作品の中でもドローンでバレリーナの足元を撮影するカットなどで使われている。また、今回の撮影ではInspire 2を大津さんが手持ちでジンバルとして撮影することもあった。こうした、いわゆるドローンの視点とは違うドローンの使い方が、podが示す“フォトグラファーがドローンを操作して撮影するクリエイティブ”のひとつだといえるかもしれない。

▲ドローンライティングも実施。今回の作品では見せライトとして使用。

 

また、今回の作品ではドローン用のライトを搭載して、ドローンライティングも行なっている。Inspire 2にシナジーテックの「DL100」を取り付けたものだ。podでは撮影だけでなく、こうしたドローンライティングも手掛けており、先ごろ発表された大阪府の万博記念公園の広告ポスター制作では、DJIのMatrice 600 Proにストロボを搭載してスチル撮影を行なっている。

 

所属するすべてのフォトグラファーが当たり前に使えるように

これまでにも、月に5~6件のドローンを使った撮影を行なっている博報堂プロダクツのドローン撮影チーム。今回、podとしてリリースしたことで、今後の案件増に期待している。
「プロジェクトを立ち上げた時からの目標として、当社フォトクリエイティブ事業本部に所属する二十数名のフォトグラファー全員がドローンをそれぞれの表現のひとつの手段として当たり前に使えるようになってほしい」と髙橋さん。

また、フォトグラファーの大津さんは「海外のドローンを使った作品を見ると、いわゆる空撮機よりもFPV機を使うことの方が多く、全編をFPV機で撮った映像を使ったものが目立ちます。やはりFPV機で撮った映像は疾走感があって、見ている方も楽しめるし、撮るほうも楽しい。なので今、マイクロドローンから少しずつサイズアップしながら私自身の練習を重ねています」という。

さらにフォトグラファーの辻さんは、「グラフィックの現場でムービーのカメラマンがいきなりドローンを飛ばし始めて橋の壮大な画を撮ったのを見て、圧倒的にうらやましくなりました。この“うらやましい”を原動力に、地上の画を組み合わせてまた新しい映像表現を生み出していきたい」と話してくれた。

▲Inspire 2を手持ちカメラとしても使用。

 

 

ドローンチームpodについて