【シリーズ特集】WEB動画の潮流とこれから Vol. 2 ─WEB動画広告に力を注ぐ制作会社の制作スタイル ② LOCUS の場合


取材◉岡本俊太郎(Vook)/文◉青山祐介

LOCUS の場合

“コンテンツを作るのは人” をモットーに
クリエイターが創作に打ち込める
制作環境の構築に力を注ぐ

写真左から株式会社 LOCUS 事業戦略部の寺尾彩加さん、取締役 事業戦略部部長・セールス&クリエイティブ担当役員の藤森俊吾さん、同社プロデューサーの佐藤美祐さん、黒木博孝さん。

 

クラウドソーシングではなく、一人ひとり書類選考・面接をした700人のクリエイターを厳選し、制作案件に応じて適した人材をアサインする。営業もクリエイティブも一つのチームになって制作を手がけるLOCUSの制作スタイルについてお話を伺った。

7年前に企業の新卒説明会等で流す採用映像の制作を中心にスタートした LOCUS。ここ3年ほどでWEB動画の制作案件が急増し、今や採用系の案件2割に対して8割を占めるまでになっているという。

現在のWEB動画市場は、Google が提唱する “HHH戦略” にあてはめると、Heroコンテンツによるブランディングにクライアントが予算を割く傾向がある他、自社の製品やサービスの見込み客をターゲットにし、リピートして見てくれるような Hubコンテンツよりも、動画マニュアルといった Helpコンテンツのニーズが高まっているという。とりわけ、これから増えていくであろうIoTツールの使い方は従来の文字ベースの説明書では理解してもらいにくく、そこに動画を活用しようと考えるクライアントが増えているそうだ。

「今、クラウドソーシングが注目を浴びる中で、うちはそれとは違うところが特徴なんです。人が関わることで、ゴールがどこにあるかを最初のヒアリングから、クリエイターまでしっかり浸透させて制作をしていくことができる。そこが LOCUS の最大のメリットだと思っています」という藤森さん。

LOCUS ではクライアントと接する営業担当と、クリエイターと接するプロデューサーが、それぞれの案件に関わるスタイルを取っている。「小さな代理店と制作会社が一緒になったようなもの」という黒木さんの言葉通り、一気通貫のこの体制が、映像制作会社やクリエイターが代理店の“下請け”にならず、クライアント、クリエイター双方で満足度が高いクリエイティブを実現することができるのだという。

制作フロー紹介

ヒアリングでクライアントの要望を「ゴール」を見据えて

【ヒアリング】動画制作の目的や用途、ターゲット、伝えたいメッセージ、予算などについて営業担当が要望を聞き出す。
【発注】権利関係や利用範囲などを確認。発注書と契約書を作成。
【映像コンテンツ制作】ロケハン、キャスティング、香盤表の作成。クライアント立会いのもと撮影。
【納品】動画の配信先や用途に応じて、データやディスクテープ等の形式で納品。
【企画提案】訴求点や動画の仕様、制作スケジュールや制作方法、クリエイターのプロフィールなどをまとめた提案書と見積。
【企画設計】絵コンテやシナリオ、具体的な演出プランを提案。
【映像編集】撮影素材やイラスト、CG等をシナリオに沿って編集。試写を経て修正後、MA。

営業もプロデューサーも一つのチームで臨む制作体制

▲LOCUSのオフィス。50人程のスタッフがワンフロアで働き、クリエイターや過去の仕事の情報などを共有しやすい環境を作っている。営業は主にクライアントとのやり取りを担当し、プロデューサーはクリエイターの選定や制作進行管理などを担当する。代理店と制作会社が一体になった制作体制。

プロデューサーが制作の要

LOCUS が手がける制作案件は、まず、営業担当者によるクライアントへのヒアリングから始まる。その内容をもとに LOCUS のプロデューサーが、最適なクリエイターを選び、営業、プロデューサー、クリエイターの三者で事前のキックオフミーティングを行い、作業分担や予算、スケジュールなどの条件決めを実施。特徴的なのは、さらにその上でクライアントも交えた四者で打ち合わせを行うことだ。

「2回目に “契約面のおさらい” をすることで、クリエイターとしては安心して業務に取り組める。クライアントとしても全体が把握できるため安心できるんです」という佐藤さん。その後の作業はプロデューサーがクリエイターの成果物に対しての一次チェックをするほか、予算や時間にもきちんと余裕を持たせた管理を行っていくのが LOCUS 流だ。

「ロケハンに行ってみると “こんな機材があるともっといいクリエイティブができる” という状況で、バッファがあればプロデューサーの采配でそれを決めることができる。その結果、クリエイターは作り手冥利に尽きる制作ができるし、逆にクライアント側は限られた予算の中でコストパフォーマンスが高いものができたと喜んでくれるんです」と佐藤さん。

また、LOCUS のプロデューサーが介在することで、リスクヘッジにもつながると黒木さんは付け加える。案件によっては機密情報が含まれる部分もあり、お金やクリエイティブ面の管理だけでなく、機密情報の管理もできるというメリットもあるわけだ。

現在 LOCUS に登録しているクリエイターは約700人。案件ごとのクリエイターの選定については、「まずは企画のトーン&マナーに併せたり、費用感をバランスさせながら選びます」と黒木さん。ただ、その上でやはり一番大事なのは “モチベーション” だと藤森さんは付け加える。

「クリエイターのやりたいことを活かせる案件は、おのずとモチベーションが高くなるものです。とくに案件とクリエイターの得意分野がマッチした場合、営業担当やプロデューサーの理解を超えた領域の事を知っていたりする。そうなると、気持ちが入った表現の作品ができます。ですから、そこを一番大事にしています」。

スクールと提携し、クリエイターの育成にも注力する

▲今後、映画監督の紀里谷和明さんが主催するプロの映像制作者を養成するPROSCHOOLと提携し、クリエイターの育成にも力を注ぐ。

クリエイターが創作に打ち込むための保険制度も
個人事業主としてクリエイター登録しており、半年間に支払い総額が60万円を超え、かつ委託業務が2件以上のクリエイターには「LOCUSクリエイターズセーフティネット」という保証制度を用意。本人負担なく最大500万円の見舞金・助成金を支払う。

 

●この記事は2017年9月号より転載したものです。

vsw