パナソニックは、6月29日、東京八重洲において、4月に開催されたNABでの展示機器を中心に展示会とセミナーを開催した。今年は通常の機器の展示会というのではなく、リモートカメラ技術セミナーや8Kセミナーなども実施。
プレス向けのリモートカメラ技術セミナーでは、冒頭にパナソニックAVC社イメージングネットワーク事業業部 放送システム事業担当総括の宮城邦彦氏が、「今年のNABは、Varicam 、P2 Castなど様々な商品があったが、HDRの運用やIP技術の進化など、パナソニックが持つ技術の紹介という趣が強かった。2020年のオリンピックの8K運用に向けて、パナソニックの技術力で貢献していく」と語った。


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 そのなかで、今回は特別にリモートカメラの技術をピックアップ。リモートカメラはAVC社の事業の中でも今後の核になっていくカテゴリだという。世界全体で260億円の市場があり、そのうち3〜4割のシェアをパナソニックがとっており、しかもこのジャンルは年率10%で成長しているという。北米では、ロボティックカメラ、もしくはPTZ(パンチルトズーム)カメラと呼ばれている。ズームレンズなどはほぼ日本でしか作られていないが、こういったリモートカメラはさらに雲台の制御もあり、画像分析・処理とも統合することで、技術の集大成的なものになる。これにIPネットワーク技術を組み合わせることで、多彩な用途で使われる可能性がある。
 新しい技術ということでは、昨年末に発売したリモートカメラ用の自動追尾ソフトウェアが注目される。この自動追尾ソフトウェアのコア技術は、①動き・頭部検出、②テンプレートマッチング、③重み付け、④顔認証となる。
 ①動き・頭部検出では、カメラ画像の動きのある部分を抽出し、上部を頭部候補として判定。追尾中は負荷を軽減するために、頭部の周辺(白枠部)のみにガボールフィルタを適用。②テンプレートマッチングは、直前10コマとの差分によって頭部の位置を判定し、講師などが正面、横、後ろなど体勢をかえても追尾を継続する。①と②の重み付けをかえることで、誤動作を防ぐことができる。現状ではこの作業を対象に合わせてマニュアルで行うが、将来的にはこの部分も自動化を目指している。④顔認証により、登録された顔との照合により追尾対象を決定する。黄色い枠が表示されたときに、顔認証がなされている。

 これにより、講師を自動で追尾。オペレーターの負担を低減でき、タグや発信機の携帯が不要なので、講師の負担も減る。しかも低コストで既存のシステムに追加することができる。
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▲リモートカメラの技術と事例について説明する同事業部 プロAVマーケティング部 システムソリューション営業課 米澤 功浩氏。
 リモートカメラシステムの納入事例として、イトマンスイミングスクールAQUIT(アキット)における水泳フォーム撮影システム。
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 英国王立音楽アカデミーでの演奏収録システムなどが紹介された。
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 展示会場では、リモートカメラのAW-HE70とそのコントロールシステムカメラAW-HEA10をiPadでコントロールするデモ。アシストカメラは広角レンズが装着されており、全体を撮影することができる。その中のある被写体をタップするだけで本カメラのほうをズームするということをiPadのアプリ上で行うことができる。IP映像を用いることで、遠隔地からでも確実に映像をみながらカメラ操作が可能になる。
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展示会では、8K映像制作システムも参考出品されていた。8K放送にむけた8Kカメラはまだプロトタイプという感じのボックスタイプ。スーパー35の8Kセンサーを採用し、PLマウントを採用。レコーダーはP2カード4枚に記録するタイプで、業界初の放送用8K P2レコーダー。AVC-Intra圧縮をベースに小型化を実現した。レコーダーのほうはAJ-ZS0500という型番もついて商品化されている。
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