第23回TAMA NEW WAVE コンペティション受賞作が決定。『はこぶね』がグランプリに


11 月19日、多摩市ヴィータホールで第23 回TAMA NEW WAVEコンペティションが開催された。TAMA NEW WAVEは毎年秋に多摩市で開催される映画祭TAMA CINEMA FORUM内のプログラム。「日本映画界に新風を送り込む新しい才能の発見」を目的とする中・長編コンペティションで、2000 年から続いている。今回は全国から最多の205 作品の応募があった。

当日は、事前審査の結果ノミネートされた6作品を上映。トークイベントも開かれ、ゲストコメンテーターの安川有果監督と小原 治さんが各作品にコメントを寄せつつ、監督らと意見を交換した。

ノミネート作品と受賞作は次の通り。

 

ノミネート作品

『にびさびの巣』

  • 2022年/41分
  • 監督・脚本=岡田深
  • 撮影=角洋介
  • 音楽=ioni
  • 出演=竹内啓、岡田深、ノブヲ、夏目志乃、一芭、有希九美

 

『瀉血』

  • 2022年/86分
  • 監督・脚本=金子優太
  • 撮影=正木智也
  • 出演=金子優太、佐竹遙人、翠野桃、吉田共朗、石神リョウ

 

『MY HOMETOWN』

  • 2022年/42分
  • 監督・脚本=古川葵
  • 撮影=西尾聡真
  • 音楽=タカスギケイ
  • 出演=空花、越山深喜、有希九美、橋本蒼汰、中岡さんたろう、森本のぶ

 

『あいつをよろしく』

  • 2022年/66分
  • 監督=立薗駿
  • 脚本=北浦勝大
  • プロデューサー=山﨑公太
  • 撮影・照明=祝立志
  • 照明=大迫秀仁
  • 美術=劉通
  • 録音=鈴木昭彦、清水裕紀子
  • 整音・効果=鈴木昭彦
  • 編集=SUBINUER ABUDUKELIMU
  • 音楽=田添茜
  • 出演=石川瑠華、中山求一郎、藤井千帆、山本桂次、中尾有伽、鎌滝秋浩、トムキラン、仲嶺奈里子

 

『はこぶね』

  • 2022年/99分
  • 監督・脚本=大西諒
  • 撮影・音楽=寺西涼
  • 出演=木村知貴、高見こころ、外波山文明、内田春菊、五十嵐美紀、愛田天麻、森海斗、範多美樹

 

『ジンジャーミルク』

  • 2021年/60分
  • 監督・脚本=今井ミカ
  • 撮影=大橋光、棚橋瑛梨
  • 音楽=門傳一彦
  • 出演=宮岡直紀、玲央、中嶋秀人、岡林愛

 

受賞作品

  • グランプリ『はこぶね』(監督:大西 諒)
  • 特別賞『ジンジャーミルク』(監督:今井ミカ)
  • ベスト男優賞:木村知貴(『はこぶね』)
  • ベスト女優賞:空花(『MY HOMETOWN』)

 

▲グランプリを受賞した『はこぶね』の大西 諒監督(写真左上)。

 

▲特別賞『ジンジャーミルク』の今井ミカ監督。

グランプリ受賞を受けて、大西監督は「できあがったものに僕自身いいなと思える部分があるんですけれども、実は現場ではキャパオーバーで、慌てふためきながら記憶が飛ぶくらいの状態でした。参加していただいた方が経験のある方ばかりで、支えていただいたことに感謝しています。次を作っていくうえで自分の興味関心とか自分の非常に個人的なものにのっとってものを作っていくところ、それは今回の作品の中で守れたところじゃないかなと思います。次の作品を作るときもそれを貫いていこうと思います。」と今後の展望を語った。

一方、特別賞の今井監督は次のように喜びをかみしめた。「小さいころから映画監督になることにあこがれをいだいていました。ろう者の物語を描いた映画を作りたい、ろう者が登場する映画が当たり前になってほしい、そんな思いを抱いてきました。なかなかそれが叶わずあきらめてしまうようなときもありましたが、これまで私の家族からの応援をもらい、また制作する仲間からも支えていただきました。さらには地元・群馬のみなさんもいつも応援してくだいました。そして『ろう者と聴者は対等になる』という言葉を信じてきたのでここまでやってくることができたと思います。この映画作品は、育成×手話×芸術プロジェクトの中でろう者を中心に制作の育成も一緒に行われ、中には聴者にもいます。皆さまに支えていただくことでこの作品が完成し、このような特別賞までいただくことができ『ジンジャーミルク』を一緒に作った仲間のみんなにも感謝の想いを伝えたいです。」

同時に、今後の抱負についても力強く語った。「私は『目』で生きています。手話という言語には文字はありません。そのため、手話を残す方法は映像ということになります。私にとって映像、映画とは人生と深く関わっている大切な存在です。今回受賞したことを大切に胸に刻んで、また新しい映像制作に邁進していきたいと思います。」

トークイベントのなかで、自身も第14回コンペティションでグランプリを受賞している安川監督は、参加した監督らに「正直、グランプリというのは重要じゃないと思っています。私は映画祭で出会った人や『また作品を見たい』と言ってもらったことが励みになって、ここまで続けてこられてこともあるので、結果にとらわれすぎずにひとつひとつの出会いを大事にしていってください。みなさんの『これからも撮り続けていきたい』という言葉を聞いて負けてられないなと感じたので、どこかでまた出会えたら嬉しいです。」とあたたかいエールを送った。

ノミネート作品のうち、『にびさびの巣』『MY HOMETOWN』『あいつをよろしく』は、12月31日までvimeoでレンタル視聴が可能(※レンタル購入期限は12月28日)。

 

 

第23回TAMA NEW WAVE
https://www.tamaeiga.org/2022/newwave/

第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
https://www.tamaeiga.org/2022/

vsw