ブラックマジックデザインの発表によると、New Wave Entertainment は20世紀フォックスの『オリエント急行殺人事件』の広告キャンペーンのサウンドデザインに Fairlight DAW を使用した。アガサ・クリスティの小説が原作の同作は、ヨーロッパを旅する豪華列車に閉じ込められた13人の見ず知らずの乗客と車掌が、互いに犯人ではないかと疑い合う様子を描いている。

New Wave Entertainment はロサンゼルスに拠点を置くマーケティング会社で、ポストプロダクション/フィニッシングを専門としたサービスを提供している。チーフエンジニア兼シニアミキサーのマーク・ロドリゲス(Mark Rodrigues)によると、今回のキャンペーンではサウンドエフェクトが重要になる、と同社はプロジェクトの開始当初に気づいたと言う。

「機関車のサウンドや背景の環境音に、叫び声、銃声に加え、列車の汽笛を多用してミュージカルのような雰囲気をサウンドエフェクトを使って生み出した。サウンドエフェクトを多く使うと編集やミキシングに若干時間がかかるが、 Fairlight のスピードはその遅れを補う以上に早い。また、 Xynergi コントローラーを使うとボタンを1〜2回押すだけで数百のコマンドが実行できるので、膨大な量のサウンドエフェクト編集の際に助かった。」(マーク・ロドリゲス氏)

ロドリゲス氏らは、以下で構成される8台の Fairlight システムを使用した。5台の3.5ベイのEVO 24フェーダーコンソール、1台の3ベイのEVO 18フェーダーコンソール、3台のXE-6フェーダーパネルを組み合わせた Xynergi コントローラーに加え、2台目の Xynergi コントローラーには1台の編集ベイを接続した。

「過去18年に渡って Fairlight を使用している。弊社自身やクライアントのニーズに合わせてFairlight も成長しているのがその理由だ。編集の速度、編集機能自体、ミキシングルーム間でのコラボレーション機能が Fairlight を使用する大きな要因。信頼性が高いことも極めて重要な要素だ。システムがダウンすることで納品を遅らせることはあってはならないからだ。」(マーク・ロドリゲス氏)

Fairlight では他のプロジェクトを読み込んで現在のプロジェクトにコピーできるが、これも同社のワークフローに欠かせない画期的な機能だとロドリゲス氏は語る。

「現在のプロジェクトを開いたままで、他のプロジェクトに行き、スポットやミックスをコピーし、必要なオーディオエレメントを探すために別のプロジェクトを検索し、それらを現在のプロジェクトに瞬時に移動して使用できる。また、ビデオスクローラーではビデオの各フレームのビデオストリップが表示されるため作業には欠かせない。会話の同期の調整やサウンドエフェクトを配置する場所をフレーム単位で確実に探すことができる。前後に位置するフレームをクリックするだけで、タイムラインを移動できる。

統合デュアルビデオトラックを使用して、映像をオフラインとファイナルに分割して、フレームアキュレートであることを確認している。これはバージョン間でコンフォームを行う際にも非常に便利。映像が変わる場所が的確に分かるので、どのオーディオを使用するべきか簡単に分かり、すべてをゼロからやり直すのではなく、以前の作業を生かして作業できるため、非常に多くの時間を節約できる。クライアントとの承認作業中に、現在のスポットに、他のスポットの最後の部分を編集できるのは本当に素晴らしい機能だ。オーディオでビデオの編集が行われることはある。後日ビデオ編集ベイでラフカットを仕上げる場合でも、ガイドラインとしてビデオエディターが使用でき、作業のスピードアップに繋がる。」(マーク・ロドリゲス氏)

New Wave Entertainment には複数の部門があるため、Fairlight のシステムは様々なプロジェクトや納品ファイルに使用されている。『オリエント急行殺人事件』では同社は国内と海外テレビ用スポットCM、テレビ/ラジオ/オンライン用の予告編に加え、映画館での広告、舞台裏映像、SNS用(Instagram、Facebook、Snapchatなど)マーケティングCMの制作を行なった。

「今回のプロジェクトのような作品では、テレビ放送、SNS、映画館での放映用に個別のプロジェクトを Fairlight で作成し、納品用の圧縮を個別に行うことで、多くの時間を節約できる。スポットは225個以上で、それぞれ最大10バージョンあったため、約2250ファイルが納品されたことになる。

Fairlight の速度が非常に早いことに加え、ミキシングルーム間でスポットやミックスを自由に移動できるため、3つのミキシングルームで本作の作業を行い、最終的に1つに統合することができた。各スポットが承認されたら、専用の部屋でステムファイルの作成を行った。これは、ミキシング担当者がクライアントと他のスポットの承認を行いながら、ファイル作成者がミキシングルームから承認済みのスポットを受け取って作業ができたため、承認プロセスの中断や遅延を招くことなく行えた。」(マーク・ロドリゲス氏)

ロドリゲス氏は最後に、Fairlight の触覚コントロールの速度について次のように述べた。

「30個以上のマクロプリセットを設定でき、各ボタンで実行できるコマンド数に制限がないのは、本当に素晴らしい。ビデオベイでの映像と統合作業のためにファイルを渡すにあたり、デジタルファイルは特定の方法で整理されている必要がありる。デジタル納品用のマクロは、300以上のコマンドやボタン操作をマクロキーを一押しするだけ実行する。コントローラー・ジョガーホイールは、オーディオのスクラブに絶えず使用している。また、高速でスクラブして特定のビデオショットを見つけるのにも役立っている。」

 

ブラックマジックデザイン
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