▲有機ELのしくみと開発したフェナントロリン誘導体の特徴
NHK放送技術研究所(技研)は、巻き取りや折り曲げができるフレキシブルディスプレーの実現を目指し、有機ELの研究開発を進めていることを発表した。
これまで技研では、プラスチックのフィルムで形成するフレキシブルディスプレーの長寿命化に向けて、陰極から発光材料に電子を供給する電子供給層の材料に、酸素や水分の影響をうけても劣化しにくい安定性の高い材料を開発。さらに今回、フレキシブルディスプレーの長寿命化だけでなく省電力化も実現できる、新たな電子供給層の材料として独自のフェナントロリン誘導体を開発した。
有機ELでは、電子供給層が陰極から電子を取り出す際のエネルギーを小さくできると、ディスプレーを省電力化できる。開発したフェナントロリン誘導体は、陰極を構成する金属元素と強い配位結合を形成することで、有機ELの電子供給層の材料として広く用いられているリチウムよりも小さいエネルギーで電子を取り出すことができる。
本材料を用いることで、世界最高レベルの電力効率を示す有機ELの試作に成功。酸素や水分に対しても劣化しにくい高い安定性も併せ持つので、フレキシブルディスプレーの長寿命化も実現できるという。
今回の研究成果は、7月24日にNature Communications誌に掲載され、今後も長寿命で省電力のフレキシブルディスプレーの早期実現に向け研究開発を進めていくとしている。