NHKは、全国のNHKの放送現場で得たノウハウやアイデアなどを活かして
ここでは気になった展示をダイジェストでレポートする。(編集部 一柳)
水冷式ラジエターを採用した大出力大型LEDライト
ドラマ撮影が行われる大型スタジオではこれまで実用的な大出力LEDライトはなかった。従来のHMIやハロゲンに代わるライトとして、超高効率で大出力のLEDライトを開発。一般の家庭用コンセントでも使用できるもので、オールLED化を期待できるという。
LEDといえども基板で発熱するので、低騒音ファンを用いた水冷式ラジエター方式の冷却システムを搭載している。LEDの光を取り出す仕組みに2次光学レンズを採用し、効率化を最大限に図っている。6色カラー光源と色温度の異なる白色を2色採用する8色構成の2500W級LEDエンジンを搭載し、色温度の可変範囲は2500〜35000Kとなっている。今後ドラマスタジオで長時間運用テストを行いプロトタイプの検証・改善を進めて、新放送センター大型スタジオなどに導入する予定だという。(放送技術局 制作技術センター)
大河ドラマ『どうする家康』インカメラVFX ミニチュア撮影体験
大河ドラマの撮影の模様を体感できるミニチュアを展示。インカメラVFXは背景のLEDウォールに映像を表示しながらカメラの動きとCG背景の描画を連動して撮影する手法だが、このところ映画、ドラマで使われるようになってきた。展示では『どうする家康』の制作現場のインカメラVFXをコンパクトに再現した。実際の撮影で使われたCGをベースに1/10スケールのミニチュアを制作。小型カメラで撮影し、隣のモニターに映し出していた。(放送技術局 制作技術センター)
マーカー型AR技術でカメラ映像からPC1台でARを出力する
徳島放送局が開発し、最優秀を獲得した展示。映像に連動したAR(拡張現実)をリアルタイムに表示する演出を実現するには、高価な特注機材を導入して、番組ごとに細かい調整が必要だったが、マーカー型ARの技術を使い、カメラ映像からPC1台でARを出力する「デジタル・パターン」を低コストで開発した。
パターン(フリップボード)上のARマーカーの大きさ、向き、角度に対応したARをリアルタイムに表示する機能をPC1台で実現。フリップボード上に静止画、動画、3Dキャラクターの3種類をAR素材として使用可能だという。(徳島放送局)
フリップボード上に3Dキャラクターを表示して出力したもの
フリップボード上に動画を表示して出力したもの
フリップボード上に静止画を表示して出力
中継現場への連絡をスマホやタブレットで
放送局と中継現場では指示をやりとりするための連絡回線を構築する必要があるが、緊急報道では現場に到着してすぐに放送になる場合もあり、素早く連携系を準備しなければならない。現場で簡単に連絡系をセットアップできるように中継で必要とされるスタジオ映像、スタジオ音声、司令用インカム音声、中継タリー、コメントCUEを一つのアプリに使いやすくまとめたもの。スマートフォンやタブレット端末、PCのWEBブラウザで使用可能。アプリ立ち上げから連絡系の構築まで最短30秒だという。(大阪放送局)
AIと距離センサーを利用したフォーカスアシストコントローラー
被写体を検知するAIと距離センサーを活用し、カメラマンと一体となって迅速かつ正確なピント合わせをが可能にするフォーカスアシストシステム。現状はPCで動くプロトタイプであり、現場へ導入するには小型化、高性能化が必要になる。最終的にはカメラ内に実装することを目指している。
カメラマンはモニターを見ながら、左手のグリップで操作する。
グリップ部分。エンジン部分はカメラに実装を目指すが、操作はこのグリップが理想的だという。
物体検知AIで人物を複数認識して、距離センサーでそこまでの距離を表示している。レンズ側のフォーカス、ズーム位置、アイリスの合わせて制御する。オートフォーカスではなく、あくまでカメラマンの操作をアシストする役割を果たすもの。
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