デジタル・サイネージで業界を牽引するMEDIAEDGE(メディアエッジ)は2019年9月10日、新製品内覧会を開き、新たなチャンレンジとなる新事業を2つ発表した。ひとつが、月額100円から手軽に始められるデジタル・サイネージサービス「つながるサイネージ」。そしてもうひとつが、グローバルシャッターを搭載し、歪みのないHD 240fpsのハイスピード映像を撮影できるスポーツ撮影向けのBOXカメラシステム「QDCAM」。こちらもカメラ本体は60万円を切る価格を予定しているなど、価格的にも思い切った戦略的製品となっているのが特徴だ。

ソニーの法人向けBRAVIAと組み合わせたサイネージサービス

つながるサービス」は従来のサイネージサービスと異なり、特別なハードウェアを必要としないサイネージサービスで、表示用にソニーの法人向け(業務用)BRAVIAを用意する必要はあるが、あとはインターネット環境さえあればシンプルで簡単なデジタル・サイネージを導入できる。

基本の契約プランは、設置するBRAVIA 1台に対して月額100円という設定。契約するとWEB上のサービスページ「つながるサイネージ」にログインでき、表示する静止画データのアップロードと管理、表示デザインの選択、プレイリストの作成(最大10個/1企業)、BRAVIAに選択したデータを反映させる機能などを、手持ちのパソコンやタブレットから実行できるようになる。

また、クラウド上には1GB/月の容量が確保され(*記事修正しました。1TBではなく1GBの誤りです)。表示する画像をクラウド上に一旦アップする仕組み。表示するBRAVIAには、提供されるAndroid用のアプリをインストールして(Google Playからのインストールではない)、あとはインターネットに接続すれば準備完了。

初期費用として3,000円が必要になるほか、動画やPDFファイルの表示はオプションで用意されているので、必要な場合は追加料金を支払えば対応できる。

小さな店舗など、MEDIAEDGEとしてはサービスの対象にしてこなかった市場に向けての新製品となり、これまでやりたかったけど資金的にハードルが高いと思っている事業者には刺さりそうなサービスだ。それにしても月100円という料金で本当に商売になるのか? 逆にこちらが心配してしまいそうだが、これをきっかけにサイネージを導入してもらい、さらに広がっていくことを目指しているので、結論は長期的に見る必要がありそうだ。サービス開始は2019年9月末を予定している。

グローバルシャッターと露光タイミング同期方式を採用

▲QDCAM。カメラからは4本の3G-SDIケーブルで出力し、FHDの240fpと4K撮影に対応する。

QDCAM(キューディーカム)」はスポーツ中継向けの業務用BOXカメラで、FHDなら240fpsのハイスピード撮影に対応するほか、C4K(4096×2160)/24p、4K(3840×2160)/60pの撮影も可能となっている。MEDIAEDGEとしてはまったく新しい事業となるが、この分野に挑むのには理由がある。

5G時代のアプリケーションとしてスポーツ競技場で多視点映像を同時配信し、見たい角度から楽しめるサービスのデモが行われたり、試合の判定にビデオ映像が使われ、練習時のコーチング用にハイスピード映像が使われるなど、スポーツ分野でハイスピードカメラが必要とされているのにも関わらず、高価格で遅延が起きる可能性のある製品が多い、というところに目を付けた。

BOXカメラ部は60万円以下を予定しているというが、価格を下げるために、レンズマウントにマイクロフォーサーズを採用した。アイリスやフォーカス、ズームのリモート操作をそのまま利用できるほか、レンズ価格も下げられる。性能面では、グローバルシャッター方式を採用した撮像素子の採用により歪のない映像を収録できるほか(通常はローリングシャッター方式を採用しているので、素早い動きをハイスピード撮影しても、被写体が歪んでしまう)、ケーブルを引き延ばしても、伝送時に同期がずれないように露光タイミング方式を採用するなど(わずかなズレでも判定には向かない)、スポーツ用途に向けて、最適化した開発がなされている。

カメラシステムと呼ぶのは、競技場などでケーブルを引き回して設置するには、BOXカメラのQDCAMに加え、伝送装置としてカムサイト・ユニットとベース・ユニット、カメラコントローラー、伝送用の光カメラケーブルが必要になるため。それでもシステム価格で220万円~240万円を予定。引き回す必要がなければ、BOXカメラとカメラコントローラーと電源で78万円~98万円になるという。

注意点としては、現時点ではカメラシステムの提供だけで、記録とスロー映像の表示には他社のシステムに組み込む必要があるという点。展示会ではAvid社のFastServe | LiveEditと組み合わせたデモが行われていた。将来的にはレコーダーやPC用のキャプチャーボードの開発を予定しているという。また、レンズマウントにはマイクロフォーサーズを採用しているが、1インチの撮像素子で撮影するため、焦点距離は35mm判換算で2.9倍になる。BOXカメラとリモートコントローラーは2019年12月、伝送装置は2020年2~3月頃の発売を予定している。

会場には17インチのATOMOS NEON(ネオン)を展示

ATOMOSの新シリーズ、4K60pオンセット&スタジオ用シネマモニターレコーダー「NEON」の17インチモデル(パネルはFHD)が展示されていた。背面にまるでNINJA Vのようなパーツがセットされ、これにより4K/60pの表示や記録が可能になり、また、このユニットを交換することで将来的に8Kにも対応できるようになるという。液晶パネル部分はそのまま活かしながらアップグレードできる仕組みは注目したい。

メディアエッジ株式会社
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