10月19日、秋葉原のUDXビルにおいて、ブラックマジックデザインによるセミナーが開催された。メインは9月のIBCで発表された製品紹介や買収についての報告だが、その件はすでにこちらで紹介している。セミナーでは、シグマから、フォトキナで発表され今年末から順次発売されるSIGMA CINE LENSについてに説明があった。
会場では、URSA Mini 4.6Kと組み合わせたデモ機も展示。この組み合わせはビデオサロン11月号(10月20日発売)の表紙とまったく同じ(ぜひ11月号を手にお取りください)。
シグマが動画用レンズ、特にCINE LENSに参入したのは驚きだが、その背景としてシグマの若松氏は、「シグマはArtシリーズなどデジタル時代に向けた高画質なレンズを出しているが、ユーザー調査してみると、特に18-35mm F1.8などは意外に動画の現場で使われていることがわかった」と言い、それが動画市場への参入に繋がったようだ。そこからプロの映像制作の現場に赴き、どのように使われ、自社のレンズがどのように捉えられているのかを調査していった。使われている現場で特に組み合わされていたのはブラックマジックデザインのカメラで、プロダクションカメラやポケットシネマカメラでは、なかば標準レンズのように18-35mm F1.8が使われていたという。
評価を聞いてみると、画質については充分満足していただいていたが、操作性が不満という声が多かった。そのあたりは動画向けに作っていないので仕方がない部分だ。
そこでSIGMA CINE LENSとしては、「100%流用、100%新規」をテーマに掲げて開発を進めた。つまりレンズの部分はレンズ構成、コーティング含めて、従来の写真用のレンズを100%流用する。シグマのレンズは5000万画素を想定して設計しているので、動画でいえば、6K、8Kは充分にカバーできる。写真のレンズを流用することによって、量産効果を出すことができ、安くユーザーに提供できる。
そしてそれ以外の鏡筒の部分は完全に新規に起こした。動画制作の現場を取材してみると、想像した以上に埃や水など過酷な現場が多かった。それに対応した防水仕様にすることでメンテナンスサイクルを伸ばすことができる。また映像制作での操作に対応したギアリングなどを設ける必要もある。
現場で使いやすいようにリングのギアの位置はプロダクトラインで統一している。
価格はまだ発表されていないが、フォトキナでは5000ドル以下とアナウンスされている。CINE LENSとしては特に高価なわけではないが、アマチュアがおいそれと気軽に買える価格ではない。ただ、CINE LENSといってもレンズ設計は同一なので、プロは操作性を重視してCINE LENSを、ハイアマチュアはそのプロと同等の画質が得られるArtシリーズという棲み分けになるのだろうか。ArtシリーズのレンズにカールツァイスのZEISS Lens Gearを装着してCINE LENS化するというのもいいかもしれない。