2年ぶりのリアル開催となったVook主催のイベント「VIDEOGRAPHERS TOKYO」。コロナ禍の影響で長らく大規模なイベントが開催できない状況が続いていたが、2日間にわたり開催されたイベントは大盛況のうちに終了した。ここでは会場でのセミナーや展示の模様を中心に紹介する。
レポート●関根慎一
株式会社Vookは6月10~11日の2日間、映像クリエイターカンファレンス「VIDEOGRAPHERS TOKYO」を渋谷ヒカリエで開催した。映像クリエイターのためのカンファレンスイベントとして2020年に始まったイベント。映像業界で活躍するクリエイターを招いて講演やワークショップを行うほか、協力メーカーによる製品展示やタッチ&トライなども実施する。2021年は新型コロナウイルス感染症の蔓延でオンラインのみの開催となっていたが、2022年はオフラインイベントとして復活した。
渋谷ヒカリエ会場では、展示ブースが集まる9階のホールA/Bをメインに展開。カメラボディ、交換レンズ、ジンバル、三脚、記録メディア、ストレージ、スイッチャー、PC、液晶ディスプレイなど、映像の撮影と編集にかかわる機材を幅広く展示していた。
一部のメーカーではブース内でセミナーイベントも実施しており、実際に業務で機材を使っているプロの経験に基づいた活用術やアイデアの解説が目を引いた。
一例を挙げれば、ニコンブースでは映像作家の上田晃司さんによる「Z9」の使いこなし講座として、撮影現場で便利な機能の紹介やコロナ禍におけるワンオペ事情を披露している。またパナソニックでは、ライブエンジニアのサカイアキヒロさんがライブ案件の現状と、業務で工夫したポイントについて具体的な事例を挙げて解説。複数台のArduinoを制御してライブ配信に活かすというエンジニアならではの事例を挙げている。メーカーブースではこのように、撮影や配信の現場で役立つ知識や技術をはじめとした、実用面に振った話を多く聞くことができた。
2日間で59のセミナーを実施
会場内に設置されたイベントステージはRED、BLUE、GREEN(2日目はAdobe STAGE)に色分けされており、ドキュメンタリーやMV、ライブ配信、撮影技術、カラーグレーディング、照明、タイポグラフィ、写真、初心者向けの編集ツール操作指南、若手映像製作者へのインタビューなど、様々なジャンルの講演や対談を実施。2日間で2700人の動員だったという。
筆者が取材したタイミングでは、RED STAGEの講演で映像ディレクターの大石健弘さんとドキュメンタリー監督の岸田浩和さんが登壇。実際に業務として制作した映像を例に、ドキュメンタリー映像制作の方法論について議論していた。
BLUE STAGEでは、映像講師の山下大輔さんによるAfterEffects初学者向けの講座を実施しており、Illustratorで素材を作り、AfterEffectsで「動くWeb広告」を完成させるまでの一連の流れを実演する形で解説。複数のアプリケーションを使った実践的な内容となっていた。
協賛メーカー17社の展示ブース
●パナソニック
「LUMIX GH6」と交換レンズの試用や、「キャリア形成」を切り口としたブース内セミナーを実施していた。また、会場で配布しているカードを受け取ると、港区・南青山にあるLUMIX BASE TOKYOで提供している機材レンタルサービスが10円で受けられた(通常料金はS5のボディのみで当日5500円から)。有効期限は7月31日まで。
https://lumix-base.jpn.panasonic.com/support/rental.html
●ニコン
「Z9」をはじめとしたフルサイズミラーレスとジンバルを組み合わせた運用を提案したほか、4月に開発発表したリモートグリップ「MC-N10」を参考展示していた。ステージでは映像クリエイター向けに、Zシリーズの使いこなし術や、ロケ現場での機材セッティング事例などを紹介していた。
●キヤノン
「EOS C70」や「R7」「R10」など最新モデルを試せたほか、「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」を用いて撮影したVR動画を視聴できるコーナーを用意していた。また、RAID取り扱いのHollyland Solidcom C1も合わせて展示されていた。
●ASUS
クリエイター向け製品群「ProArt」のPCディスプレイやマザーボードを用いたデスクトップPCの構築例、編集にも使えるジョグダイヤルを搭載したノートPCProArt Studiobook Pro 16 OLEDを展示した。
●ソニー
ハイエンドシネマカメラ「VENICE」や、αシリーズのミラーレス機を展示。Eマウント交換レンズのタッチアンドトライが人気だった。また、「Xperia 1 IV」とVlogモニター「XQZ-IV01」、シューティンググリップ「GP-VPT2BT」 を組み合わせた撮影セットの展示も行なっていた。
●リーベック
「HS-150M」をはじめとした新製品三脚シリーズのほか、ジブアームの「JB-40 KIT」を展示した。
●ウエスタンデジタル
SanDisk Professionalのドッキングステーション「PRO-DOCK 4」や4ベイ構成のハードウェアRAID「G-RAID SHUTTLE 4」、外付けSSDなどを展示していた。
●MOZA
レンズ交換式カメラ向けジンバル「AirCross3」「Air2S」をはじめ、スマートフォン向けジンバルやスライダーなどを展示。カメラ/スマートフォン兼用の汎用ジンバル「Mini-P MAX」も参考展示していた。
●シグマ
ワンオペ向けのシステムを提案する切り口で、各マウントのミラーレス機向け交換レンズを展示した。下写真は新発売の16-28mm F2.8 DG DN | Contemporary。EマウントとLマウントを用意する。
●サムスン
大容量映像の収録とバックアップを念頭に、SSDを活用したワークフローを提案。定番のT5やT7、4月に発売されたT7 ShieldなどのポータブルSSDも展示。
●Blackmagic design
「Pocket Cinema Camera」や「Video Assist 12G HDR」を用いて撮影した素材をDaVinci Resolveで編集して納品するまでのワークフローを展示。すべてのフローをBMDの製品で行える点をアピールしていた。下写真は4月発売のHyperDeck Shuttle HD。卓上型のレコーダー/プレーヤーでSDカードスロットを搭載し、スイッチャーなどと組み合わせてメディアプレーヤーとしても使える。
●EIZO
6月に発売されたばかりの新製品・HDR制作に対応した「ColorEdge CG2700S」を展示。27型・2560×1440ドット。HLG、PQに対応し、色域はDCI-P3を98%カバーする。キャリブレーションセンサーも内蔵。
●アスク・エムイー
マルチカメラ収録やVRリグを用いた撮影で重宝するタイムコードシステムUltraSync ONEやアクションカメラやiPhoneなどにBluetooth接続でタイムコードを同期できるUltraSync BLUEを展示。Ovide SmartAssistやAJA Io X3などの撮影・編集支援システムも展示していた。
●タムロン
「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)」や「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)」など、35mmフルサイズおよびAPS-CのEマウント用交換レンズを展示。昨年末発売になった動画向けレンズ35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)と28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)も展示されていた。これらの2本はUSB-CでPCと接続し、専用ソフトTAMRON Lens Utilityで回転角やA-B地点のフォーカス位置のメモリなどにも対応する。
●デル・テクノロジーズ
映像をはじめとしたコンテンツ制作に向けたモバイルワークステーションを中心にブースを展開。写真中央は14インチのモバイル仕様ながらNVIDIA RTX A1000のGPUを搭載するPrecision 5470 ワークステーション。写真下はUSB-Cケーブル接続で使える14インチポータブルモニターC1422H。
●日本シーゲイト
M.2接続の高速SSD「Firecuda」シリーズや、バックアップ向け高信頼性HDD「Ironwolf」シリーズの展示を行なった。
●ローランド
8月に発売予定のPCなしでライブ配信ができるAVミキサーSR-20HDをはじめ、同社がラインナップしているスイッチャーとミキサー各種を展示。来場者限定のモニターキャンペーンも実施していた。
●VIDEOGRAPHERS TOKYO公式サイト