映画作家・ふるいちやすし、ZOOM F1シリーズを使う〜被写体3人でもF1シリーズがあればワンマンオペレーションで対応できる!


Report●ふるいちやすし
協力●株式会社ズーム

ZOOMからこれまでにないタイプの音声レコーダーが登場した。手の中にすっぽり収まってしまうサイズのレコーダーでラベリアマイクと組み合わせたり、同社独自のマイクカプセル交換システムに対応。ショットガンマイクやXYステレオマイク、MSステレオマイクとも組み合わせられる。しかも価格も安い! 複数台導入すれば、音声のスタッフを用意できない小規模な映像制作の現場でかなり使えそうだ。本誌でもおなじみのふるいちやすしさんならどう使うか。実践していただいた。

◉使用機材

「ZOOM F1-SP」:オープン価格(3万円前後)

小型軽量ながらがっちりした筐体のコンパクト音声レコーダーと着脱式のショットガンマイク、さらにカメラ搭載用のショックマウントを同梱した音声収録機能付きのガンマイクセット。

【レコーダーF1スペック】
記録メディア:
microSD/microSDHC規格対応カード(Class 4以上、最大32 GB)
記録フォーマット:WAV、MP3
電源:単4電池×2
外形寸法:64mm (W) x 79.8mm (D) x 33.3mm (H)
重量:120g (電池含まず)

同梱品:フィールドレコーダー『F1』、ショットガンマイク(SGH-6)、ショックマウント、
ウィンドスクリーン、ステレオミニケーブル、単4アルカリ電池×2本、クイックガイド

「ZOOM F1-LP」:オープン価格(2.4万円前後)

F1-SPとレコーダー部は共通で、こちらにはショットガンマイクではなく、ラベリアマイクとベルトクリップが付属する。

同梱品:フィールドレコーダー『F1』、ラベリアマイク(LMF-1)、ウィンドスクリーン×3個、
マイククリップ、ベルトクリップ、単4アルカリ電池×2本、クイックガイド

同録のダイナミクスを求めてF1-LPを複数台利用する

また小さいフィールドレコーダーが出たな、と気になっていた。かつて同じように思い、ZOOM H2を4台まとめて買ってからもう何年経つだろうか? それとは比べものにならない小さな筐体で、さらにマイクを選べるフレキシビリティーと96kHz対応という高性能を身につけ、ZOOM F1シリーズが発売された。セットとしては、レコーダーのF1は共通で、ショットガンマイクとのセットであるF1-SPと、ラベリアマイクとのセットになるF1-LPの2商品がある。この性能と小ささをどう活かすかは人によって様々だと思うが、私が真っ先に思うのはやはりF1-LPを利用した映画でのセリフの録音だ。

F1とラベリアマイクを役者の衣装に隠し、一人ずつの声を回しっぱなしで録っておきたいと思うのはH2を買った時と同じなのだが、それには2つの理由がある。まず一つ目は私はアフレコが嫌いだということ。音質という面ではもちろん後でスタジオで録ったほうがいいに決まっている。だが芝居においての〝良い〟というのは音質だけでは決まらない。役者の心情や熱量がそのまま表現された同録のダイナミクスこそが、多少の音質や安全性を犠牲にしても必要なものだと考えている。さらに同録できるような静かなロケ場所を探すのにも手間がかかる。もちろん周辺ノイズがどうにもならないこともしばしばあるが、そのノイズさえも臨場感として美しいものだと感じている。

〝言葉が聴き取りやすい〟というコンビニエンスと臨場感とのせめぎ合いで頭を悩ませることも多いが、少なくとも映画は報道やバラエティーとは違う。もっと臨場感にこだわるべきだと思うし、そのためにガンマイクや時にはステレオマイクを使ってギリギリの選択をする。そして役者の口に近いラベリアマイクでさえも、アフレコよりはずっといい。その臨場感を求めてスタジオでリバーブをいじくり回すよりも、映像に映っているその場の空気感をそのまま捉えるほうがずっと楽しいのだ。

もう一つの理由はワイヤレスの音に満足できないということだ。あの独特の詰まった感じのする音質が我慢ならない。もちろん状況によっては使わざるを得ないこともあるが、できれば使いたくない。そんな思いでH2を役者に持ってもらうことを考え、随分多くのシチュエーションで活躍してくれた。ただ、衣装によっては膨らみを隠せないこともあり、もっと小型化できないものかという不満は常に持ち続けてきた。それが一気に解消されるような小ささでF1が登場したのだ。

また、H6発売と同時期に相次いで発売されたZOOMオリジナルの端子を持つ様々な魅力的なマイクもそのまま装着できるのがさらに使用シチュエーションを拡げている。XYステレオマイクやMSマイクに付け替えてアンビエントノイズを録るのもいいし、ショットガンマイクを付けてそのままポールの先に付ければケーブルレスで振り回せる。いずれにしてもこの小ささと軽さなら、役者に持たせるだけでなく、セットや道具に簡単に隠せるし、アイデア次第でどんなシチュエーションでも様々な音像で収録することが可能だ。

▲ 録音対象に応じて最適なマイクを選ぶことで、あらゆるシチュエーションに対応できる。左から【SSH-6】MSステレオ方式のショットガンマイク【XYH-6】大口径ダイアフラム搭載XYステレオマイク【MSH-6】MS方式のステレオマイク【XYH-5】ショックマウント搭載XYステレオマイク【EXH-6】デュアルXLR/TRSコンボ入力【SGH-6】超指向性ショットガンマイク

あえて私の現場からの要望を言うとしたら、動作状況が分かるリモコンが欲しい。役者の衣裳に一度隠してしまうと度々取り出すのは困難だし、細かいことを言えば楽屋やトイレに行く時には止めてあげたいし、動作状況の確認も難しいからだ。そしてこの小型化技術で今後薄さにも挑戦してほしい。

◉実際の撮影風景

登場人物が3人になるとワンマンオペレーションでの同録が急に難しくなるが、F1シリーズがあればそれに対応できる!

今回の収録では役者3人によるフリートーク番組という設定でそれぞれに持たせた。通常このようなケースではラベリアマイクが衣裳の上に見えていても不自然ではないが、映画のシーンでの使用も想定してあえて衣裳の下に隠してみた。実はワンマンオペレーションで登場人物が3人になると多くのカメラが2CHしかないことなどから、音声収録はどうしたらいいのか悩むことになる。F1-LPのような個別に収録できるレコーダーがあれば、それを増やしていけばよいということになる。

撮影するカメラは2台。一台は固定で、3ショットを狙い、F1レコーダー+XYステレオマイクをカメラ上に搭載した。もう一台は私が一脚で3人のワンショットを撮影していくが、そのカメラにはショットガンマイク付きのF1-SPを搭載した。このスタイルで、いろいろな音場を収録してみた。位相やディレイに注意すればこうやって収録したいくつかの音声を細かくミックスしていくことも可能だろう。

(写真左)F1レコーダーとXYステレオマイクの組み合わせ。(写真右)F1レコーダーとショットガンマイクSGH-6の組み合わせで、これがF1-SPとなる。

使用した製品を整理すると、F1-LP(ラベリアマイクセット)が3セット、F1-SP(ガンマイクセット)が1セット、F1レコーダーにXYステレオマイクXYH-6ということになる。音声としては、モノラル4+ステレオ1、合計6チャンネルの贅沢な収録だ。これだけの録音も、最初の準備に時間をかければ後は回しっぱなしなのでワンマンオペレーションも可能だ。

さて、皆さんならどう使うだろうか?

役者3人に仕込むF1-LPレコーダー3台をセットしているところ。

◉解説と収録ムービー

 前半がふるいちやすしさんによる解説、後半が番組を想定したムービーです。音声はラベリアマイクのみ、ショットガンマイクのみ、XYステレオマイクのみ、ステレオマイクとラベリアマイクをミックスした音声を聴き比べることができます。