フルサイズセンサーと4K/60p 10bit 4:2:2収録を備えるLUMIX S5。小型軽量サイズながらプロユースにも耐えうるこのカメラを使いCinematic Vlogの第一人者でもあるAUXOUTさんに作品撮りしてもらった。

映像●AUXOUT/モデル●RICO/取材・文●青山祐介/構成●編集部/協力●パナソニック株式会社

 

パナソニック LUMIX S5

オープン価格    https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5.html

 

 

『BENEDICTUS | Cinematic Vlog Shot on LUMIX S5』

ベネディクトゥス(Benedictus)は、ラテン語で「祝福があるように」という意味。「どうか君が穏やか日々を過ごせますように」「どうかその場所が光で満ちていますように」楽曲の歌詞の和訳とともに、穏やかで幸せそうな散策の風景をVlogにまとめた。

 

 

スローを効果的に使って女性のしなやかさを表現

──LUMIX S5で作品を撮ってみた第一印象を教えてください。

今回のお話をいただいてLUMIXを初めて触ったのですが、メニュー構成もわかりやすくて、とても使いやすいというのが正直な感想です。僕は旅のなかでそのときの感覚で撮ることが多いこともあって、カメラには軽さや機動性を求めるのですが、S5はその点申し分ないですし、ボディがしっかりしていてグリップも握りやすい。また、撮影中にいろいろ設定を切り替えることが多いのですが、そういった機能へのアクセスもとてもよかったと思います。

──具体的にはどういった機能を使われるのでしょうか?

S5にはダイヤルのカスタムモードがC1からC3まで3つあるのですが、僕はこれで動画のサイズやフレームレート(4K/30・60、FHD/120fps)を割り当てて切り替えながら使いました。撮影するシーンに応じて、プレビューしながらモードダイヤルをカチカチと回すだけで、これらの設定が一瞬で変わるスムーズな操作感が気に入っています。

──作品のなかでスローも活用されていますが、60fpsで撮影するのは4Kでスロー撮影するためですか?

僕の作品にはコンテがなく、撮影時にはスローにするかどうかを意識していなくて、編集の段階で決めることも多いです。そのため、とりあえず60fpsで撮ることもあります。ただし、ここは絶対にスローだと思った時には、120fpsで撮るようにしています。この作品では逆光の夕陽でオレンジ色に照らし出された髪を撮るのにスローを使ったりもしました。髪の毛がちょっと揺れただけでもとフワッと動いて、女性のしなやかさを表現できるんです。

──仕上がりのサイズはFHDなんでしょうか。

4KになるとPCのスペックが求められることもあって、これまではほとんどFHDで撮影していました。YouTubeにアップするときにはFHDをDaVinci ResolveのSuper Scaleという超解像の機能を使って4Kにアップコンバートしています。ただし、近頃は4Kでも60fps、120fpsで撮れるカメラが増えてきたので、最近は4Kで撮ることが増えています。

──今回の作品はどんなシチュエーションで撮影されたのでしょうか?

紅葉の季節ではあるのですが、色とりどりの紅葉というわけではなく、足元には枯葉が敷き詰められていて、周囲の木々はまだグリーンというロケーションでした。森のなかに入ると光が遮られて、どことなく海外のようなシチュエーションがカッコいいと思い、撮影しました。

そんななかでの撮影でしたが、S5のカラーサイエンスはとてもいいと思いました。サンプルをtwitterにアップしたら、「スキントーンが神」というコメントをもらったのですが、全体的な色味こそいじっているものの、顔にマスクをかけてスキンの色だけを抽出していじったりはしていません。全体的な色味を調整したら、素直にスキントーンがきれいになりました。

──実際撮影に使われてみて、Sシリーズのレンズの印象はいかがでしたか?

今回、色々なレンズを試しましたが、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6のキットレンズが、軽くてとても使いやすかったですね。また、LUMIX S 85mm F1.8は、Bロールを撮るときによく使いました。ポートレート以外にも落葉や木漏れ日などにフォーカスしたりといった使い方です。いずれもレンズのサイズ感と軽さが、手持ちで動画を撮るのにちょうどいいと思いました。

コンパクトで自分自身も旅を楽しみながら撮影できる10bit素材は階調の破綻もなく補正の手間も少ないカラーグレーディングが楽しくなるカメラです。

 

AUXOUTさんが気に入ったLUMIX S5のポイント

▲FHD時は最大で180fpsのハイフレームレート撮影が可能。120fpsまでであればAFが有効となる。

C1には4K/60fps、C2には4K/30fps、C3にはFHD/120fpsの設定を割り当てた。即座に設定を切り替えて使えるのが便利だった。

▲新発売のLUMIX S 85mm F1.8。主にBロール(インサート)の撮影に使用。軽くて明るい単焦点はVlog撮影に重宝する。

▲4K/60p対応で動画でも使える。6Kオーバーサンプリングでスチル用途でも使えるため、サムネイルの撮影にも便利に使えた。

 

 

色を補正するのではなく 色をつくることが楽しめる

──今回の作品で施したカラーグレーディングについて教えてください。

LUTを使わずにLogの素材をグレーディングする場合、ノードの数が増えてしまうので、同じようなシーンで撮ったものは、すべて同じグループにまとめて処理し、その後で、個別にカットごとに露出とホワイトバランス、コントラストを調整しています。

今回、S5のホワイトバランスはオートで撮っていますがクセが少なく、ダイナミックレンジの広さによって、暗所でも色味の破たんがないのがいい。グレーディングで色を作るのは楽しいのですが、思うような色が出なくて補正する作業に時間を取られるのは苦痛です。10bitが使えることで、補正作業よりも色を作るという前向きな作業に力を注げるのではないでしょうか。

そう考えるとこの価格帯のカメラで10bitで撮れるのはコンシューマーユーザーとしてはうれしい限りです。上位機種にS1Hもありますが、S5はハイエンドモデルの欲しい機能や性能をしっかり継承していると思います。

──S5を使った作品作りでチャレンジしてみたいことはありますか?

あたり一面雪で囲まれた白銀の世界を撮ってみたいですね。雪の白さのなかにもしっかり階調を再現できるのは10bitならではだと思います。

最近はVlogでも色作りを楽しむ人が増えていますが、10bitには8bitにはない表現の幅があります。これから映像を始める人には、ぜひ10bitで色を楽しんでもらいたいですね。

 

DaVinci Resolveでのカラーグレーディング工程

すべての素材に共通のカラーグレーディングを施した

DaVinci Resolveのノードツリー。素材をまとめてグループを作り、それに対して共通のカラーグレーディングを施した。各コレクターの設定は以下の通り。 ノイズリダクション露出パラレルノードを設定し、彩度を上げたカラーバランスで色味をニュートラルに➎➏で選択した肌以外の部分の色調整(暗部にグリーンを載せ、シャドウを少し持ち上げた)レイヤーノードを設定し、「クオリファイア」でスキンのみを選択「色相vs色相」や「色相vs彩度」を調整し、オレンジ色に寄せた「ミッドディティール」で全体をソフトに「カーブ」でシャドウの部分を少し潰してフィルム感を演出「ウィンドウ」で周辺減光の効果を設定「フィルムグレイン」を追加

 

⑤スキントーン以外の部分のカラーグレーディング


▲「ハイダイナミックレンジ」で「Dark」に少し緑を載せて、「Shadow」にマゼンタを追加。

 

⑦暗部を少し潰すことでフィルム感を演出


▲「カーブ」で暗部を落とし、全体的にシャドウを少し落としつつも、一番黒い部分は浮かせている。黒の階調を潰すことでフィルムルックを演出。

 

⑧「色相vs色相」「色相vs彩度」で温かみを追加


▲「色相vs彩度」でオレンジの彩度を上げ、「色相vs色相」で黄色をオレンジ色に寄せて、夕暮れの温かみを出した。

 

AUXOUT

東京生まれ。幼少期はマレーシアで過ごし、アメリカの大学で音響を学び、帰国後はサウンドエンジニアに。その後、WEBデザイナー、Flashエンジニア等を経て広告代理店のクリエイティブディレクターとして活動。現在は金融関係の企業に勤務する傍ら、「週末ビデオグラファー・フォトグラファー」としてCinema tic Vlogを中心にYouTubeやinstagramで作品を公開2021年1月現在、SNSのフォロワー総数は22万人を超え、国内外から人気を集める。

 

 

VIDEOSALON 2021年2月号より転載