コントラストを抑え、映画のような柔らかい雰囲気を演出できるフィルター「ブラックミスト」。日頃ウェディングを主軸に活動する映像作家の酒井洋一さんに、ブラックミストを使って作品撮りをしてもらった 。酒井さんの目にこのフィルターはどう映ったのか?

映像●酒井洋一(HIGHLAND)/

モデル●武石 愛未、 mira/制作●日内地 摩美(HIGHLAND)、松岡裕未子/

ヘアメイク●望月理絵/

取材・文●笠井里香/構成●編集部/

協力●NiSi Filters Japan

 

NiSi Black Mist 7,600 – 9,300円

67/72/77/82mmのフィルター径のモデルをラインナップ。濃度も1/2、1/4、1/8から選べる。1/2が効果がもっとも強く、1/4、1/8になるにつれ効果が弱まる。

 

 

『MERRY GO-ROUND WEDDING』

森のなかのカフェ。新婦が席でオーダーを終え、ウェディング誌を見ながらくつろぐ。すると、目の前に天使が現れ、新婦にクリスタルのメリーゴーラウンドを差し出す。それを手に取ると回転し始める。気がつくと、ウェディングドレス姿になった新婦の目の前に夜のメリーゴーラウンドが現れる。

 

 

1/8という濃度があることで意味のある使い分けができる

学生のころからミスト系フィルターは使っていましたが、現行品のブラックミストは効果がやや強すぎるため使いどころが難しく、積極的に使うことはなかったのですが、最近Vlogなどでもミスト系が盛り上がっていて、気になっていたところに今回のお話をいただき、作品を作ってみました。

今回、NiSiブラックミストの1/8、1/4、1/2のすべての濃度を使って『MERRY GO-ROUND WEDDING』の撮影を行いました。ウェディングの撮影の用途で考えると1/8の濃度がちょうどよく、常に取り付けていてもよさそうです。1/4以上になるとブラックミストの効果をしっかりと感じられるようになりますが、何か意図を持って使ったほうが効果的だと思います。

この作品では天使が女性の前に現れるとき以降を1/4、最後のメリーゴーラウンドに乗るシーンに1/2を使いました。1/2をつけたところで、本当にメリーゴーラウンドがドリーミーに映るのか?という不安もありましたが、メリーゴーラウンドの電球が悪影響を与えることもなく逆にたくさんあることで光が溢れる雰囲気が出て結果的にはとてもいい仕上がりになりました。

▲NiSi Black Mist 1/2

▲NiSi Black Mist 1/8

▲NiSi Black Mist 1/4

▲NiSi Black Mist 1/4

▲NiSi Black Mist 1/2

 

撮られる側の表情が変わる ブラックミストの魔法

ウェディングの撮影を仕事としていますが、当日撮って出し、挙式開始2時間半後にはエンドロールを流すというようなスケジュールも少なくありません。当然現場ではカラーグレーディングをする時間もありません。そういったなか、ブラックミスト(1/8)を使って撮影すると、新郎新婦の肌の質感が整い、ドレスも併せ白飛びしてしまう部分を抑えてくれるため、描写面の効果だけでなく、撮影後にかかる処理の時間が短縮できるという利点も感じました。

結婚式という大事なシーンでは、特に新婦さんの多くはリアルであることよりも、柔らかで情感あふれる映像のほうが喜んでいただけます。僕としては映像で、女性をさらにきれいにお化粧してあげるような気持ちで撮影をしています。必ずしもありのままに撮ればいいというわけではないんですよね。また、現場でフィルターを入れることで後処理なく、クライアントにその場で完成形に近い状態を確認していただける点でもメリットがあります。

映像を気に入っていただいて、安心感を持っていただけると、表情が変わりますし、「感情」面で大きな影響があると思いますね。

撮る側としては、映像を始めたばかりの方にもオススメしたいですね。ブラックミストを使うことで雰囲気よく撮れて、映像がうまくなった気にさせてくれます(笑)。高まる気持ちがパフォーマンスを上げてくれるのは撮り手にとって大きなアドバンテージです。

 

PRODUCTION NOTE

今回の撮影ではカメラはBMPCC 4K、レンズはオリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROを使用。DJIのジンバルRSC2に常に載せ、ほぼそのセットで撮りきった。頻繁に機材のセットチェンジをできないウェディングの現場さながらの条件でテストした。






 

VIDEOSALON 2021年2月号より転載