【SAMSUNG SSD WORLD】SIGMA fp/fp LとSamsung Portable SSD T5 / 未体験の映像表現の先


Report◎FPS24 / TAKERU

 

「カメラから外付けストレージのSSDに動画を直接収録可能」という、それまでカメラの知識が乏しかった私でさえ、非常に期待値の高い機能のひとつだったことを覚えています。

私は「FPS24」という名義でYouTubeに旅の動画やレンズレビュー動画を公開しています。主にシグマのカメラとレンズを使用しており、YouTubeを始めたのもSIGMA fpというカメラの存在があってこそでした。それまでしばらく薄くなっていたカメラ欲を呼び覚ましてくれたのが、このfpというカメラです。

2019年7月に発表され、同年10月25日に発売開始となったSIGMA fpは、世界最小最軽量を謳うフルフレームミラーレスカメラでありながら、そのコンパクトさからは想像できないほど高性能かつ拡張性の優れた本体設計で、カメラの新しい楽しみ方に大きく胸が踊り物欲を刺激されました。

特に外付けストレージのSSDを使用することで可能になる動画のRAW撮影は、それまで私にとってあまり馴染みのない本格的で繊細な映像表現を、より身近で低コストに実現できる夢のような拡張性でありました。

外付けSSDを使った収録をする上で、シグマが公式に互換性検証済みSSDとして発表している内のひとつが「Samsung Portable SSD T5(以下、Samsung T5) 」であり、私もこちらをメインに活用しています。

▲非常にコンパクトで堅牢性の優れたシンプルなデザインで気に入っています。

 

早速ですがその Samsung T5 を活用し、SIGMA fp のポテンシャルを最大限に活かせる CinemaDNG 12bit RAW収録 を行なってきました。是非動画をご覧いただきながら読み進めていただけますと幸いです。

 

 

 

SIGMA fp / fp L と Samsung T5

SSDなどの外付けストレージに収録ができる機種というのは、それまで一部シネマカメラを除いて、一般的なフルフレームミラーレスカメラではあまり聞いたことがありません。外部レコーダーを介してRAW収録ができるミラーレスカメラは近年普及しつつありますが、カメラから直接SSDへ収録できるカメラは今現在でも限られています。

▲USB-Cケーブル一本で接続・収録が可能なのはとにかく便利です。軽量で扱いやすく、配線もシンプルなので使わないわけにはいきません。

 

SIGMA fp / fp L では、そのようにカメラからUSB-Cケーブル一本で外付けストレージのSSDへ直接収録する、という運用が可能になっており、カメラのコンパクトさや機動力を損なわず非常に魅力的なセッティングで撮影に挑むことができます。

▲SmallRigからはSamsung T5専用のリグパーツがリリースされています。

 

特にSamsung T5に限ってはfp / fp Lとの相性は非常に良く、カメラ本体のデザインを邪魔しない佇まいなのは嬉しいポイントです。コンパクトかつ軽量・堅牢性にも優れたデザインは素晴らしく、サードパーティー製の専用リグパーツも発売されており、カメラ本体にしっかりフィッティングすることができアクティブな撮影環境でも安心感があります。

▲ジンバル使用の際も他パーツに干渉することなく安定して使用できています。

 

上記の利点も相まって、拡張した場合でもコンパクトかつ安定した重心を確保することができ、ジンバルを使用した撮影も問題なくできています。ただ、SSDと接続する際にカメラ側のUSBポートを占有してしまう為、ジンバル本体から行うカメラコントロール機能が使用できなくなることに注意しなければなりません。

 

 

SIGMA fp / fp L における外付けSSD収録の利点

私が当初、外付けSSD収録に期待していたことは CinemaDNG 12bit RAW収録が可能になるという点よりも、コストパフォーマンスの良い大容量の外付けSSDに、収録可能時間を気にすることなくMOV:H264形式の動画を長時間収録できるというのが主な点でした。

▲嬉しい悲鳴ですが、Samsung T5 を接続しMOV:H264形式で収録しようとすると、大容量SSDの恩恵で収録可能時間がカウンターストップしてしまいます。

 

普段からプライベートの遠征でも長時間動画を撮影する私にとって、記録媒体の容量と転送速度は常に課題です。とある遠征の際に収録した動画の総録画時間はなんと24時間にも及びます。

通常のSDカードから、それほど長尺の動画を転送・バックアップするのには膨大な時間を有します。転送速度の速いUHS-II対応のSDカードは導入コストも高く、個人で使うのにはお世辞にも最適解とは言えません。

ところが、外付けSSDは比較的導入コストも低く大容量、そして転送速度も非常に速いこともあり、カメラの一次記録メディアとして使用可能になるという点は非常に魅力的でありました。

▲SSDからそのまま編集ソフトウェアへデータを取り込み編集ができ、効率的な時間の使い方が可能になりました。

結果的に fp / fp L と外付けSSD収録という組み合わせは私のスタンダードスタイルとして定着し、何ならそのままPCと外付けSSDを接続して編集にまで持ち込める手軽さは、一度経験するとなかなか手放せなくなってしまいます。

 

 

CinemaDNG – 動画のRAW収録について

忘れてはならないのが、外付けSSD収録で可能になる動画の CinemaDNG 12bit RAW 収録(UHS-II対応のSDカードでは CinemaDNG 8bit RAW 収録までが可能)です。非常にコンパクトなフルフレームミラーレスカメラでありながら、外付けSSDを接続することで最大限に発揮できるそのポテンシャルには目を見張るものがあります。

写真撮影をRAWデータで記録している方は多いと思います。撮影後のレタッチでより繊細な表現まで追い込むことができるこの撮影フォーマットは、表現の可能性が大きく広がり無くてはならない記録フォーマットです。そのRAW撮影を、動画でも行えるわけです。


▲上が収録時のそのままの画像、下がDaVinci Resolveでカラーグレーディングを行った画です。非常に繊細な部分まで調節可能なRAWデータは非常に奥深く、新たな映像表現の楽しみ方を見つけることができました。

 

ただ、一般的なMOV:H264形式での収録に比べると、ファイル容量が非常に大きくなることに気をつけなければなりません。下の表は、普段私が写真撮影の際に使用している一般的なSDカード(256GB)と Samsung T5(1TB / 2TB)を接続した際、カメラのインターフェイス上に表示される収録可能時間を表にしたものです。すべて3,840×2,160(UHD 4K)24fpsをベースにしておりますが、カードの種類や環境によっても多少前後すると思いますので、あくまで参考値としてご覧ください。

Samsung T5 2TB Samsung T5 1TB SD Card 256GB
(UHS-II)
MOV:H264
UHD(4K) 24fps GOP
9時間59分以上 ※1 9時間59分以上 ※2 3時間34分
MOV:H264
UHD(4K)24fps ALL-I
7時間36分 3時間48分 58分
CinemaDNG 8bit
UHD(4K)24fps
2時間35分 1時間17分 20分
CinemaDNG 10bit
UHD(4K)24fps
2時間6分 1時間3分
CinemaDNG 12bit
UHD(4K)24fps
1時間45分 52分

※1 256GB : 3時間34分 = 2000GB : 約28時間
※2 256GB : 3時間34分 = 1000GB : 約14時間

 

 

CinemaDNG – RAW動画の扱い方

CinemaDNG で動画のRAW収録を行うと、扱い方も通常の映像ファイルとは少々異なってきます。fp / fp L カメラ内でのプレビュー再生は通常の動画と同じように可能ですが、SSDをPCに接続し収録されたファイルを覗くと、通常の動画ファイルとは異なり連番ファイルが収録されていることに気がつくと思います。

▲収録で使用したSSDをPCで開くと、連番ファイルがカットごとに分けられたフォルダに格納されています。このまま動画のプレビューはできないので戸惑いましたが、意外と簡単に編集ソフトに取り込めるので安心です。

 

Adobe Premiere Proは2021年10月現在、この CinemaDNG動画RAWファイルの読み込みには対応しておらず、主に Blackmagic社製の DaVinci Resolve を使用することになります。通常の取り込み、編集、カラーグレーディングを行う分には無償版でも非常にパワフルです。

▲先ほどの連番ファイルをフォルダごとDaVinciのメディアプールにドラッグ&ドロップ。特別な操作なしでそのまま音声付きの映像データとして認識されました。

 

収録したSSDをPCで開き、カット毎にフォルダ分けされたデータをそのまま DaVinciのメディアプールにドラッグ&ドロップすれば、自動的に映像ファイルとして認識し再生・編集が可能になります。

 

 

その他対応RAW収録について

SIGMA fp / fp LのRAW収録に関して、先程ご紹介したCinemaDNG フォーマットの他に、ProRes RAW 収録とBlackmagic RAW 収録のふたつが可能なことにも少しだけ触れさせて下さい。

ProRes RAW / Blackmagic RAW 収録は外部レコーダーが別途必須となります。私はATOMOS NINJA Vを所有しており、fp / fp LとHDMIで接続したNINJA Vの本体機能を使用してProRes RAW収録が可能です。

CinemaDNGでの動画RAW収録と比べると、ProRes RAW / Blackmagic RAW収録では接続する機材の種類と質量が増えてしまいますが、外部モニタとしての役割を果たしながらRAW収録を行えるので、一長一短とも言えます。

CinemaDNG / ProRes RAW / Blackmagic RAWそれぞれ使用できる編集ソフトや再生環境など扱い方が異なるため、ご自身のスタイルに合ったフォーマットを見つけるのが良いと思います。

下の表は、NINJA Vが収録できるフォーマットの内、ProRes RAWに絞ってモニタ上に表示される収録可能時間を調べたものです。使用しているSSDは「Samsung SSD 870 EVO 4TB」、収録形式はDCI 4K 4096×2160 24pです。SSDの記憶容量、収録形式が違うので一概には言えませんが、CinemaDNG 12bit RAWと比べても収録可能時間の違いはほとんどないように感じます。

Samsung SSD 870 EVO 4TB
ProRes RAW HQ 3時間25分 ※1
ProRes RAW 3時間25分 ※1

※1 インターフェイス上では同じ時間が表示されますが、ProRes RAW と ProRes RAW HQではデータレートが異なるため、実際には収録可能時間に違いがあると思われます。

 

 

RAW収録を経験して

これまで私はMOV:H264収録がメインでありました。基本的にそれは、ただその場の景色を記録する、というシンプルな収録方式だったことに気が付きます。

CinemaDNGやその他RAW収録を体験すると「景色を記録する」というよりも「光を記録する」という感覚に近いと私は感じました。非常に階調豊かで奥行きの感じられる映像は、繊細な色再現力もさることながら、光の明暗・輝きが美しく記録されているように思います。映像を見ながら実際に「まぶしい」や「暗い」を感じられるこの感覚が、RAW収録の醍醐味のひとつだと私は考えています。




またカラーグレーディングの奥深さは、一度体験すると後戻りができなくなってしまうほどです。データ量が重くなってしまうのは仕方がないことではありますが、それをも上回るメリットと感動、突き詰めた表現が可能になると思っています。

 

 

Samsung T5 を活用したRAW収録の可能性

以上、様々なRAW収録について解説しましたが、fp / fp Lで最も手軽かつ低コストに導入できるRAW収録が、先述した Samsung T5など外付けSSDを活用した方法です。購入当初はRAW収録を想定していなかった私でさえ、これほどのめり込むまでになったのはある意味必然的でもあります。

もちろん、MOV:H264形式で収録された映像も非常に美しく、私が今までYouTubeで公開している動画の殆どはこの形式で収録されたものです。画作りという観点ではそれでも非常に満足できるものでありますが、このカメラを使用し始めてまもなく2年です。RAW収録の魅力を見出してから、まるで新たなカメラを手に入れたかのような感覚に陥っています。非常に奥が深く、正解のないカラーグレーディングの世界を今もなお漂っています。


▲シネマカメラとも言われる所以がはっかりとわかりました。是非ご自身のスタイルで体験してみて下さい。

それがこのコンパクトさで実現できるのは非常に先進的でもありますし、是非たくさんの方にもご活用して頂きたいと願っています。これは間違いなくシネマカメラと言えると私は思っています。それは「シネマティック」な映像が撮れる、という意味ではなく、自身の突き詰めた映像表現を可能にするカメラ、であるからです。

 

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