レポート●株式会社マリモレコーズ 江夏由洋

GFX100 IIとは?

富士フイルムから昨年発売になって、大きな話題となっている中判センサーを搭載したデジタル一眼カメラGFX100 II44×33mmというフルサイズを超えるセンサーサイズが捉える美しい画質が大きな魅力となっており、1200万画素という解像度が最大の武器だ。富士フイルムのフラッグシップ機として登場したこのカメラは、中判センサーを搭載しながらも最大8/秒連写が可能で、8段のIBIS(手振れ補正)を搭載し、AIによる高速AFを実現。静止画・動画ともに今までにない新しい撮影体験を提供してくれる。

そしてこのカメラはUSB Type-C (USB 3.2 Gen 2)を使って、外付けSSDを使った外部収録ができるというのも特徴だ。内部記録としては、CFexpress Type Bカードを採用しているのだが、静止画、動画ともに外付けでの記録のオプションがあるのは嬉しい。

今回はこのSSDSamsungのポータブルSSD T9を使用し、撮影を試みた。内蔵記録ができるカメラにおいて外付けのSSDを使う理由はズバリ、そのコストパフォーマンスにある。GFX100 II の内蔵記録で使うCFexpress Type Bカードは、決して安くはない。実際、4K 映像が撮影できる速さを持つVPG400クラスのカード(最低でも400MB/秒の速さを保証)であれば、256GB4万円前後はするといっていいし、昔のカメラのようにSDカードをたくさん用意するような感覚で買い足せるものではなく、むしろ数枚を大切に使うというのが現状ではないだろうか。

その点SSDはお手頃な値段が魅力だ。今回のT9であれば2TBという大容量でありながら、価格は先述のカードの価格よりもお得な3万円台で手にすることができる。単純計算をすれば、容量のバイト単価としても9~10倍ものコストパフォーマンスの良さだ。しかもT9はUSB 3.2 Gen 2×2のインターフェース対応で最大2,000MB/秒の速度を実現する。嬉しい限りだ。

今回GFX100 IIに取り付けたSamsungのポータブルSSD T9。スピードとコストパフォーマンスが最大の魅力だ。

カメラリグを活用し、幅広い撮影スタイルにも対応

ただ、外付けとなるといろいろとケーブルの引き回しに頭を悩ませることになる。撮影中にケーブルが抜けることは許されないし、SSDが小型とはいえカメラ本体には取り付ける機構は搭載されていない。そこで活躍するのがカメラリグだ。今回の撮影ではSmallRig製のSSDホルダー付きのカメラリグを使用した。このカメラリグはケーブルのロック機構はもとより、ホルダーの位置を自在に変えられる仕組みになっている。ホルダー自体は強めのスプリングでSSDを挟み込む仕様だ。

もちろんリグを組めばそれなりにカメラのサイズが大きくなるものの、カメラのプロテクションに加え、様々なアクセサリーがつけられるのはいい。動画撮影であれば外部モニターや、映像転送のモジュール、あるいは外部給電のバッテリーパーツなども好きなスタイルで組み上げることが可能だ。そもそもリグをセットアップするスタイルであれば、SSDの搭載はその一連でつけられる。今回はカメラの右肩上部にSSDを据えた。なんとなく見栄えもいいと感じた。

GFX100 IISmallRigのカメラリグを使用。SSDのみならず、外部モニターや映像伝送などいろいろな周辺機材をまとめられる。

GFXSSDの相性は抜群。挿せばすぐに撮影スタート

GFX100 IISSDの相性は実にいい。ケーブルを挿せば自動でSSDを認識し、内部記録のフロー同様にフォーマットも簡単にできる。特別な操作は不要だ。書き込みのスピードも充分なため、動画の撮影は8Kサイズの29.97fpsの記録も問題ない。2TBSSDであれば、Apple ProRes 422 HQの最高画質で1時間以上の記録ができる。そして私がいつも使う、4Kサイズの23.976fpsApple ProRes 422 LTであればなんと11時間14分近くまでの撮影が可能になる。これだけ長時間の記録ができるとなれば、インタビューやドキュメンタリーの撮影などでそのメリットが活かせるだろう。

8K/29.97fpsの素材がProRes422 HQでなんと1時間以上収録が可能。2TBの容量は頼もしい。

そして写真撮影でもSSDは重宝する。冒頭にも記したが、GFX100 IIは中判でありながら最大で8/秒の連写が可能だ。大量のファイルを生成する連写では、大容量のメディアが活躍する。RAWだけであれば102MPという巨大なファイルのスチルを2TBSSDの中におおよそ9500枚も記録できるのだ。中判センサーのGFXでの撮影で、残枚数を気にすることは一切なくなる。大は小を兼ねるとは正にこのこと。しかもコストパフォーマンスも抜群だ。ちなみに富士フイルムの記録メディア対応情報サイトによると、T7 ShieldとT9では高速連写持続時間が長くなるというメリットもある。

写真撮影でもSSDは活用できる。GFXのような一枚の画像ファイル容量が大きくても、気にせず連写に挑める。

カメラをどう構えてもSSDはしっかりとリグに固定できるようになっている。撮影をしていても、そこまで邪魔に感じることはなかった。

SSDの利点を考え、効率的な撮影スタイルを

そしてSSDの利点はもうひとつある。それが編集するパソコンへのコピーが簡単だということだ。そもそも汎用的なポータブルの形であるため、そのままパソコンに挿せばいい。内蔵のカードであれば、複数枚に撮影がまたがることが多く、そのコピーが非常に面倒に感じることが多いが、大容量のSSDであれば管理も楽で、特殊なカードリーダーを別に用意することもない。またT9USB 3.2 Gen 2×2対応なので、パソコンがその速さに対応していれば、2TBであっても、コピーにかかる時間も速い。これこそがSSDが持つ一番の利点かもしれないと感じた。

SSDの最大のメリットは、データのコピーだ。複数枚にまたがることもなく、一気に高速でインジェストが可能だ。管理がとても楽なのがいい。

GFX100 IIUSB 3.2 Gen 2の規格なので、撮影だけで考えると使用するSSDは同規格のT7シリーズでも問題はまったくない。T9との主な違いはインターフェースの違いによる転送速度だ。T7シリーズはさらに価格も安いので、このあたりは編集のパソコンのスペックに合わせて見合うものを探すのがいいと思う。ぜひ外付けSSDの運用のメリットを感じていただければ幸いだ。

GFX100 IIの場合、カメラの書き込み速度がUSB 3.2 Gen 2なので、SSDT7シリーズでも問題はない。さらにコストパフォーマンスが高いシステムも組める。

GFX100 II 動作確認済 Samsung 外付けSSD
モデル T9 T7 Shield T7  T5 (販売終了)
容量 1TB*, 2TB*, 4TB 1TB*, 2TB*, 4TB 500GB,1TB, 2TB* 250GB, 500GB,1TB, 2TB*
インターフェース USB 3.2 Gen 2×2
(20Gbps)
USB 3.2 Gen 2
(10Gbps)
USB 3.1 Gen 2
(10Gbps)
USB 3.1 Gen 2
(10Gbps)
書き込み速度(最大) 2,000MB/s(4TB)
1,950MB/s(1TB、2TB)
1,000MB/s 1,050MB/s 515MB/s
読み出し速度(最大) 2,000MB/s 1,050MB/s 1,050MB/s 540MB/s
質量 122g 98g 58g 51g
備考 最大3メートルの落下耐性 最大3メートルの落下耐性
防水防塵(IP65準拠)
最大2メートルの落下耐性 最大2メートルの落下耐性

* 動作確認済み容量 (詳細は前掲の富士フイルム社ウェブサイト参照)

Samsung Portable SSD T92TB
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CK88Z8NY/ (Amazonサイト)

GFX100 II 製品情報
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/gfx100-ii/