宇宙遊泳中の宇宙飛行士が、核戦争により死に向かう地球の走馬灯に巻き込まれていく—。映像・台詞・音楽のすべてをAI生成で制作された黙示録的SF短編『ラストドリーム』。手がけたのは映画監督/CMディレクターとして活躍する串田壮史さん。ピラミッドフィルムが新たに設立した「PYRAMID AI」による初のAI映画作品となった本作を、串田さんはどのように形作っていったのか? さまざまなAIツールを駆使したという串田さんに作品の舞台裏と各国の映画祭で見聞きしてきた生成AI作品の動向についても解説してもらった。

※この記事で紹介しているAIツールの情報はMV制作時の2025年12月のもので、ツールの仕様やバージョンが現在のものと異なる可能性がございます。

講師 串田壮史 Takashi Kushida

映画監督/CMディレクター。1982年大阪生まれ。ピラミッドフィルム所属。長編デビュー作『写真の女』(20)は大阪アジアン・SKIPシティ・東京国際・ファンタジアなど90の国際映画祭で上映されて40冠を達成、10カ国でリリースされた。長編第2作『マイマザーズアイズ』(23)は、イギリス最大のホラー映画祭・ロンドン フライトフェストで「Jホラー第3波の幕開け」と評され、世界に向けて配給が行われている。長編第3作の『初級演技レッスン』(24)はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオープニング作品として企画・製作された。最新作であるフルAI短篇映画『ラストドリーム』は、プチョン国際ファンタスティック映画祭のAI部門で最高賞を受賞し、「AI 映画の未来を変える衝撃作」と評された。







短編映画『ラストドリーム』




監督・プロデューサー・脚本・編集:串田壮史

AI生成スーパーバイザー:林 宏介、石丸将太

ダイアログスーパーバイザー:ロナルド石本

制作・配給:ピラミッドフィルム

制作協力:埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ






『ラストドリーム』の企画から完パケまで

各工程を「クリエイター領域」と「エンジニア領域」に分けて制作

『ラストドリーム』を監督した串田です。2006年から20年ほどCMを作りながら、2020年以降は長編映画を3本監督しました。そのなかで関係が生まれたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭から「何か新しい企画はありますか?」と聞かれたので、「全編AIで実験的な短編を作りましょう!」と言ってスタートしたのが『ラストドリーム』です。

作品に出てくる主人公の宇宙飛行士は僕自身の投影です。一方、宇宙空間で彼が出会う神秘的な岩はAIのこと。つまり、AIについて知らなかった僕が、地球の誕生から滅亡まですべてのことを知っているAIと出会う…というのが作品の裏テーマになっています。

今回は『ラストドリーム』制作の舞台裏をお話ししますが、最初にお断りとして、この映画を作った時点と現在ではAIツールの状況は少し違います。スケジュールとしては、2024年9〜10月にシナリオ作成、11月に絵コンテ・ビデオコンテ作成、12月から翌年3月にかけて画像と映像を生成して編集したので、約7カ月の制作期間でした。

なのでソフトの使い方というよりは、AI映画の企画からプロモーションまで一貫して話す、ということです。そういう情報はあまり世に出ていないので、読者のみなさんの活動の幅を広げる際に役立つんじゃないかなと思います。

あと、ワークフローに沿って解説しますが、僕は各工程を「クリエイター領域」と「エンジニア領域」に分けて考えています。シナリオやコンテを作るのがクリエイター領域、AIを使って画像や動画を生成したりPremiereで編集したりするのがエンジニア領域。従来は別の人がやっていたこれらの作業を今回は僕ひとりで完結しているので、両方の考え方を行き来して、頭の中でそれぞれ進言し合いながら進めていきました。



AI映画を作るための10のステップと使用したツール

『ラストドリーム』制作の流れを10のステップに分けてざっくりと解説した図。シナリオやコンテを作るプリプロ時点でも音まわりの生成にAIを使用。実写映画で言うところの“撮影”部分とポスプロの一部では静止画生成や動画生成などでAIをフル活用している。



1:シナリオ

TOOL:手書き




2:絵コンテ

TOOL:手書き




3・4・5:セリフ/効果音/音楽

TOOL:ElevenLabs + Suno




6:ビデオコンテ

TOOL:Premiere




7:静止画生成

TOOL:Midjourney




8:動画生成

TOOL:Runway + Kling AI + Luma AI




9:仮編集

TOOL:Premiere




10:本編集&MA

TOOL:Flameほか