osmo_phantom_drift.jpg
レポート●松本 敦
●実際の動画はこちら

▲今回の撮影は福島県二本松市にあるエビスサーキットのPV動画。ドリフトの聖地としてモータースポーツファンに親しまれており海外からの利用客も多い。この動画はPhantom3とOsmoで撮影したものを抜き出したスピンオフムービー。
福島県二本松市に「ドリフトの聖地」として絶大な人気を誇るエビスサーキットがある。映画『ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT』でスタントもこなしたD1ドライバー・熊久保信重氏が支配人を務めるこのサーキットは外国人にもひじょうに人気を集めている。
 今回制作したのは海外向けのプロモーション映像。外人のみで行われるGAIJIN GRANDPRI X(G1GP)をはじめ、世界中のドリフト好きが24時間ドリフトを楽しむ「エビスドリフト祭り」の模様を計4日間撮影させていただいた。

ワンマンオペレーションで挑むイベント撮影

 エビスサーキットのドリフトコースは全部で5種類。コースの雰囲気が分かるように、Phantom3による空撮を導入。正式に許可をいただいて撮影を行なった。地上でのメインカメラはパナソニックGH4。5種類のコースを移動するということで荷物は最小限にとどめるために、Ronin-Mではなく、スタビライザー付き4KカメラOsmoをインサート用の移動ショットカメラに採用した。そして迫力の車載映像を撮るため、GoProを準備した。
 ある程度のスケジュールは分かるものの、どこで何が起こるかわからないイベント撮影においては必要最低限の装備で身軽にしておくことも大切。これらの機材のおかげでPhantom用のリュックとカメラ用のショルダーバッグという軽装で身軽に撮影できた。
drift_nimotu.jpg
⬆メインムービーの撮影に使用した機材一式。ドローン用のリュック(thinkTANKphoto エアポートヘリパック:34,560円)と肩掛けタイプのカメラバッグひとつに入れて持ち運んだ。
 また、バランス調整不要で使えるのがOsmoの利点。イベント時にニュージーランドから撮影に来ていたチームはRonin-Mで撮影をしていたが、2人体制のチームで行なっていた。ワンマンオペレーションでRonin-Mを使用していてはセッティングに時間を取られてしまい、いい瞬間を逃していたかもしれない。

迫力のドリフトレースをPhantomとOsmoで

 スピンオフムービーではPhantom3とOsmoのみで撮影したG1GPの模様を集めた。画質設定はともに4K/24pで統一。スペック表を見ても分かる通り画質はほぼ同じと考えていいだろう。大きな違いとしてはOsmoではタイムラプスとスロー撮影が可能だが、今回の撮影では使用していない。またOsmoは内蔵マイク収録でモーター音が入るなどのネックがあったものの、今回のような爆音鳴り渡るドリフトシーンでは気にならなかった。
phantom_osmo_cameraspec.png
⬆Phantom3 ProfessionalとOsmoのスペックを見ると、2.7Kと1080/120fpsの撮影機能の有無以外はほぼ共通。

Phantomでの空撮のポイント

 今回の撮影にあたって世界中のドリフト空撮映像を見て研究していたものの、走る車を撮影するのは大変だった。Phantomはスマートフォンやタブレットを使って、カメラ映像を視聴できるFPV機能を搭載しており、レースで何度も車が通行するのを手元のモニターで確認しながら撮影した。
 空撮の場合はカメラの角度や高さ、スピードなど様々な要素によって見え方が全く異なるので、何度も撮影してバリエーションをで撮影した。個人的には真俯瞰で撮影してドリフトの軌跡が分かるショットがお気に入りだ。

空撮素材に自然につながるOsmoの浮遊感

 間近に迫る迫力の映像を押さえるため地上からの視点としてOsmoを使用した。人の背中越しにドリフトを撮るのは危険も伴うためPhantom3では困難だが、Osmoであれば気軽にできる。
 Phantom3と同じくスタビライズ機能が働いているので空撮素材のあとにつないだとしても、違和感なく動きがつながるのがうれしいポイントだった。
 また、今回の撮影の後、海外ロケでRonin-Mをメインで使う撮影があったのだが、その際にもOsmoが大活躍してくれた。カリフォルニアのジョシュアツリー国立公園で本番前にロケハンを行なっていたが、広大な場所でロケーションを探す際にRonin-Mだとやはりセッティングに時間がかかる。Osmoならば荷物にもならずに確認用の映像が撮影できて、ひじょうに重宝した。

一人でできることに可能性が飛躍的に高まってきた

 メインムービーでは前述の通り、異なるカメラ4台を使用したものの時間的な制約もあり、色補正までは行なわなかった。最低限の設定として各カメラのフレームレートを24pに統一したくらい。本来であれば全部の色味をもっと追求するべきなのだろうが、例えば走行シーンとインタビューシーンで画の違いが出てメリハリがつき結果的にはよかったのかもしれない。
 メインムービーは海外のWEBサイト等でもピックアップいただいて、YouTubeにアップしてから2週間で2万回以上の再生回数となった。クオリティももちろん大切だが、イベント終了後の熱の冷めやらないうちにアップするということも旬を逃さずに拡散するうえで大切なのかもしれない。
 機材の進化によって一人でできることの可能性が飛躍的に高まってきた。撮影対象によってカメラの使いどころも大きく変わるが、どの機材をメインにするのか考えるのもまた楽しい時間でもある。


ebis_circuit.png
⬆エビスサーキットのWEBサイト。空撮はすべて許可を得た上で行なっている。
●メインムービーはこちら

▲メインムービーには海外利用客に向けてコース紹介をはじめ、利用風景、福島の名所紹介なども盛り込まれている。
(この記事はビデオSALON2016年2月号より転載)
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1542.html
●DJI Phantom 3 Professionalの製品情報
http://www.dji.com/jp/product/phantom-3-pro
●DJI Osmoの製品情報
http://www.dji.com/jp/product/osmo