【イベントレポート】DJI RONIN-S活用講座「映像表現の自由度を高めるDJI RONIN-Sの使い方」次石悠一


10月4日、渋谷のTRUNK by Shoto Galleryにて開催されたDJI JAPAN主催のイベント「プロビデオグラファーが伝授するDJI RONIN-S活用講座」。午前中はソニーαシリーズとRONIN-Sを使ってウェディング映像を制作している次石悠一さんセミナーが行われた。ここではその講演の模様をレポートする。午後に開催されたパナソニック回のレポートはこちら

 

 

●今回、次石さんがソニーα7S ⅡとRONIN-Sで制作したウェディングムービー

 

●BTS映像

 

次石悠一 氏 Yuichi Tsugiishi

Tomato Red Motion代表。ウェディングビデオグラファー歴14年。森や海岸、草原で自由な形のウェディングを撮影し、「結婚を決めたふたりの想い」を伝える鮮烈で美しい映像は強い共感を呼び、これまでのウェディングムービーにはなかった新たな世界観として評価されている。現在は世界各国からの撮影依頼もあり、活動の幅を広げている。

Tomato Red Motion HPhttps://tomatoredmotion.jp/

 

 

みなさんこんにちは、TOMATO RED MOTIONの次石です。さきほどの映像は今日初めて完パケを見たんですが、自分の声ってこんなに恥ずかしいものなのかと思いました(笑)。よろしくお願いします。私はTomato Red Motionという会社の代表で、ウェディングビデオグラファーとしてこれまで14年活動してきました。近年、ウェディングの形は多様化してきており、最近では一般的な結婚式場やホテル、レストランのほか、草原や森、山の中など様々な場所で撮影を行うようになっています。

 

●過去のジンバル変遷

私は以前から、ウェディングの撮影にジンバルを使ってきました。「MYジンバル」の変遷を見てみると、最初はNebula 4000 Lite、その次にPILOTFLY H2やH2-45をダブルハンドルで使っていました。ウェディングでは、モデルとなる新郎新婦さんはドレスを着ているのであまり動くことができず、主にカメラマンのほうが動いて撮ることになります。そのため、回り込んで撮影するようなカメラワークには、シングルハンドルよりもダブルハンドルのほうが向いているのです。

 

●ウェディングの現場でDJI RONIN-Sを使用してみて

そして今回、3カ月ほど前からDJI RONIN-Sを使用しています。ウェディング撮影で使ってみて、どうだったのか? その使用感をお伝えしていきたいと思います。まず総合的には、とても機動力に優れた機材だという印象です。ウェディングの撮影場所はホテルやレストランなど身動きの取りづらい場所から屋外までいろいろですが、どのような状況下でも撮影スピードを落とすことなく豊富なバリエーションを撮影できると思います。

 

中でも特に良いと思ったポイントは4つあります。まず1つ目は「セットアップの速さ」です。これまでいくつかのジンバルを使ってきましたが、RONIN-Sは組み立ての速さもバランス調整の速さも一番だと思いました。ウェディング撮影ではワンマンのオペレーションが多く、ジンバルの他に一脚やスライダー付き三脚など複数の機材を持ち運んで、さらに新郎新婦を誘導しつつ、機材を組み立てて、動きをつけて撮影して……というところまで、すべて1人でこなさなければなりません。また、挙式は神社で行い、披露宴はホテルで行うというような場合、神社での撮影が終了したら、いったん機材をすべてバラしてバッグにまとめ、ホテルに移動してから再びセットアップし直す必要があります。このような現場では機動力の高さが重要視されるため、機材のセットアップが速いのはとても助かります。

 

2つ目は「モーターパワーの強さ」。ウェディングでは撮影中に歩いたり小走りになったりすることがありますが、Ronin-Sはこれまで使ってきたジンバルに比べて全然ブレません。先日、ある企業の社内運動会で、Ronin-Sを持って並走しながらリレー選手を撮影したのですが、このときもブレることはありませんでした。また、最大積載量が3.6kgあるというのも強みです。この積載量はRonin-Mと同じですが、Ronin-Sのほうが小さいぶん、モーターパワーの強さのわりに小型で軽いというメリットを享受できます。もっと小型で軽いジンバルは他にもありますが、そのぶん最大積載量は落ちてしまうでしょう。

 

3つ目は「充実したアプリケーション」です。アプリ「DJI Ronin」ではタイムラプス撮影などもできますが、私が魅力的に感じているのは、モーターの動きや反応の速度を自分で設定し、3つのカスタムプロファイルを記憶しておけるところです。このプロファイルは本体のMボタンで簡単に切り替えることができます。私は以前のジンバルでは、回り込みの動きがしやすいようにダブルハンドルを使っていましたが、Ronin-Sのシングルハンドルで同じ動きをしようとすると、どうしてもズレ(カメラの傾き?)が生じやすくなります。ですが、この機能を使って「パン方向にだけ動くモード」(ティルトとロールをOFF)をカスタムプロファイルに設定しておけば、本体のボタンでそのモードに切り替えるだけで、回り込む際に腕を斜めに出してしまっても水平が保たれるようになります。これは魅力的だと思いました。

 

▲3つのカスタムプリセットをMボタンで切り替えられる。

 

▲DJI RONINアプリ。Configurationをタップし、画面上にある「USER」タブをタップすると3つまで好みの設定を割り当てられる。

 

4つ目は「ユニークな演出」が可能になること。Ronin-Sを使うと、これまでのジンバルでは不可能だった360度ロール回転させるような動きができるようになります。これを使って、ウェディングの撮影でも新しいユニークな演出を実現できそうだという印象を持ちました。

 

▲ジョイスティックの左右でロール操作をするためには、Configuration内のControl Settingsをタップして、CH1・CH2はN/A。CH3をRollに設定する。

 

●ウェディング映像のなかで実際に使ったRonin-Sの撮影テクニックを披露

さて、ここからはRonin-Sを使って実際にウェディングでどんなシーンを撮っているのか、モデルのゆりさんに協力してもらって4つの撮影パターンを紹介していきます。

 

[直線的な動き]

 

1つ目は、人物を追いかけたりバックしながらフォローしたりする「直線的な動き(動画の4:45〜4:56)」です。レールを敷くことができない場所でもドリーっぽく撮影したり、クレーンがなくてもそれらしく撮影したりすることができます。まず、モデルさんが走っていくところを横からドリー撮影風に撮ってみます。横歩きするとブレてしまうので、下半身はまっすぐ前に歩きながらカメラだけを横に向けて、縦方向のブレに気をつけながら追っていきましょう。次にローアングル。グリップ部分にあるトリガーボタンを1回長押しするとジンバルがロックされるので、通常のアングルからローアングルにそのまますぐ移行することが可能です。

 

▲会場での実演の様子。

 

[回り込みの動き]

2つ目は、人物が真ん中にいてカメラが周囲をぐるぐる回る、「回り込み」のパターン。ウェディングでは余興のダンスなどで使われます。ここでは通常のアイレベルで撮ったあとに片手でローアングルに切り替え、回り込んで撮影しながら後ろにバックし、周りのお客さんも入れて撮るというイメージで動いてみます。この場合も、スムーズにローアングルに移行できるトリガーボタンが重宝します。

▲本編の動画には未収録、実演と合わせてこちらをご覧ください。

 

[ひねる動き]

3つ目は「ひねる動き」。前の2つは24mmや35mmの広角レンズを使うことが多いのですが、ここでは50mmやもう少し望遠のレンズを使って、下から上に向かってひねるようなドラマチックな動きを作ります。なお、このときもアプリを使って「パン方向のみ動くモード」をカスタムプロファイルの2番に設定しておきます。こうすれば腕をどのように伸ばしてもティルトもロールも起こりません。1番に切り替えれば、再びカメラの傾きが追従します。動かしているうちにバランスが乱れてしまったら、トリガーボタンを2回押してカメラのセンタリングを行い、またカスタムプロファイルのモードを切り替えるだけです。

 

▲本編の動画には未収録。実演と合わせてご覧ください。

 

[ロール回転]

ラストは「360度ぐるっとロール回転する」撮影です。私はこのモードをカスタムプロファイルの3番に記憶させています。まずグリップを水平に持ってカメラを被写体のほうに向けます。この状態でジョイスティックを回すとカメラがロール回転するので、撮影しながら被写体に近づいていきます。撮影後、トリガーボタンを2回押すことでカメラの傾きが元の状態に戻ります。

 

▲本編の動画には未収録。実演と合わせてご覧ください。

 

以上、4つのパターンをお見せしました。このように、従来のウェディング撮影はワンカット撮ったら次は違うバリエーションで……という撮影が多くなります。ずっとジンバルで撮影するのではなく、次は一脚、その次はスライダーとカットごとに変えていくような感じです。それはRonin-Sで撮影する場合も同様で、アイレベルのカットを撮ったら次はすぐにローアングルで、とバリエーションを増やしていかなければなりません。そういうときに、アングルやカスタムプロファイルを簡単に切り替えられるRonin-Sの機動力が、少しは伝わったでしょうか。

 

●RONIN-Sに今後期待したいこと

 

最後に、Ronin-Sに今後期待したい点についてお話します。1つ目はモニターの取り付け。もう少し精度を上げてフォーカスを合わせたいときには、モニターを付けられると役立つのではないでしょうか。現在、サードパーティのメーカーからは発売されていますが、DJIからも発売されるといいなと思います。2つ目はフォローフォーカス。ジンバル側のホイールから操作するフォローフォーカス機能はすでに搭載されていますが、一脚やロッドなどに取り付けた状態で、物理的にフォーカス操作できるようになることを期待しています。3つ目はダブルハンドル。シングルハンドルでも操作できますが、最近増えている女性カメラマンにとっては、片手でシングルハンドルを保持するのは重く感じるでしょうから、もう少し重さを軽減できるといいですね。最後はRonin-Sへの期待ではないのですが、各カメラマンがこの製品を使って新しいウェディングの映像演出を生み出していけるといいなと思っています。

 

以上です。ありがとうございました。

 

 

●DJI RONIN-Sの製品情報はこちら

https://www.dji.com/jp/ronin-s

 

●午後の部「RONIN-Sで切り開くワンマン・カメラワークの新しい世界」Osamu Hasegawaさんのレポート

https://videosalon.jp/report/dji_ronin-s_event2/