5月9日に開催されたビデオSALON特別セミナー(協力:キヤノンマーケティングジャパン、会場:秋葉原UDXシアター、告知ページはこちらを参照)。「生き残る映像制作会社になるためには何が必要か? 〜低予算・短期間・高クオリティに応えるには〜」と題して、タイプの異なる3組のクリエイターに登場していただき、昨今盛り上がりをみせているWEB動画の事例を紹介しながら、そのノウハウを共有していただいた。ビデオSALON.webでは、そのダイジェストとして、数回に分けてレポートしていく。(司会進行/まとめ:ビデオサロン編集長 一柳)
第1回目はこちらから
少人数スタッフで動きのある映像を撮る
第2回目は撮影現場編をお届けする。
UW INCの撮影現場
まず、最初にUW INCさんのアシックスWEB用PVを撮影した現場から。
https://www.asics.com/jp/ja-jp/gt2000
こちらの映像の撮影現場、撮影機材を見せていただいた。
UW INCの映像の特徴は、とにかくカメラが動くこと。福島さんは「昔からカメワラーク大好きっ子で(笑)、動いている画をとりたくなってしまうんです。なにかとジンバルとか、ドリーとか、クレーンを使って撮ってしまいます」
このアシックスのGT2000のプロモーションビデオの撮影もジンバルで撮影しているが、そのメリットとして、「撮影時間が短くなる」という点もあるという。
「最初にカット割りを考え、撮るカットを決めたら、ジンバルを利用してどんどん撮っていくことができます。レンズはEF-S17-55mm F2.8 IS USMだけで、寄ったカットと引いたカットを撮っていきます。このムービーの場合、撮影時間は2時間半から3時間くらい。撮影場所自体、観光地で、もちろん撮影許可はとっていますが、人止めなどをしないでほしいと言われていました。しかもお昼時に撮影していたので、のんびり撮影するということはできない現場だったです。でも、ジンバルを利用することによって、スピーディーに撮っていくことができました」
カメラはEOS C200B。最初のカメラはEOS Kissシリーズだったこともあり、これまでずっとキヤノンを使ってきた。
「昨年の夏、カメラをいろいろ検討していたとき、REDも含めて選択肢はあったんですが、我々が動画に入った最初がキヤノンで、レンズもいろいろあったところに、ちょうどEOS C200が出たんです」
「しかもEOS C200Bという、EVFがなくてジンバルにのせることを想定したモデルを出してきたので、キヤノンは本気だなと思いました。これはまさに自分たち向けのカメラだなと思ってすぐに導入しました。これはキヤノンからお金をもらっているとかではまったくないです(笑)」
そこからはC200Bばかり使っているという。こういうような状態で使うことが多い(写真下)。
RONIN-MXで、下に置けるオプションのバー(サードパーティのもの)をつけることで、現場での機動力があがる。こういったタイプのジンバルはずっと持っているか、スタンドを用意してそこに置くしかなかったが、この状態であれば、「すぐに置いて休憩できますし、何よりも一人でできることが増えましたね」
押川さんは「オートフォーカスも積極的に使う」という。このシステムであれば、一人でも動きのある映像を撮ることができる。マンフロットのズームリモコンをつけることで、片手持ちにならなくてもRECボタンを押すことができるようになった。ちょっとしたことだがその労力もばかにならない。
モニターはカメラマン向きの正面のものと、上向きのものの2つが取り付けられている。
下の写真はシステム前方に設置された上向きのモニター。
純正のモニターでないと、波形が見られないので確認用に装着しているということもあるが、ここにあれば、モニターを動かさなくても、ローアングル時にはこのモニターで確認することができる。それぞれそれほど重いモニターではないので、2つ装着してもそれほどの重量にはならない。
ただ、トータルとしてはそれなりになるので、ミュージックビデオで4分を通して撮るということになると、後半は厳しくなるそうだ。「もう少し体を鍛えないとな、と思っています(笑)」。
ジンバルを使うとどうしても縦に揺れてしまうということがあるが、Adobe Premiere Proのワープスタビライザーで吸収することができ、多用しているという。
カメラワークとしてどうしても無理があって、揺れてしまうときはあるが、そういう場合は、編集上でスタビライズをかけることを念頭において撮影したりする。
クリス・モアさんの撮影現場
Vol.1でも紹介したクリス・モアさんがディレクションの富士通のブランドムービー。
2017/03/28 に公開
その撮影現場の模様を見せていただいた。大メーカーのブランドムービーの制作現場だが、スタッフは少ない。モニターを見ながら台車を押しているのがクリスさん。
スタッフは演出のクリスさん、カメラマン、その助手、音響スタッフという4人。
カメラはEOS C300 Mark II。走っているシーンの音もしっかり録れているが、音声スタッフがガンマイクで狙っている。音はEOS C300 Mark IIであればゲンロックがあってタイムコードの同期ができるのいいという。アスリートにもピンマイクをつけてもらって、ワイヤレスで飛ばして、ガンマイクとワイヤレスの両方で録っている。
クリスさんの現場もUW INC同様にジンバルを利用することが多い。下の写真はMOVIだが、やはり脚がないのは不便だという。ただ、最近はこの組み合わせが多い。以前はRONINを使っていたが、MOVIのほうがカーボンを使っていて軽い。少しでも軽くなったらいいなということでMOVIを使っているそうだ。
クリスさんの映像もUW INC同様にカメラが動いていることが多い。
「ジンバルのいいところは、動きを出した映像を撮ることもそうだけど、カメラ位置を早く決められるというところ。そんなに準備の時間がなくても、とりあえずやってみることができる」
時間がない現場で、そういうことがメリットになるようだ。
空撮のカットもあるが、それはクリスさんのオペレートでMavic Airで撮影。編集でEOS C300の色と合わせるのに苦労したという。ワンポイントであれば、ディレクターがドローンを飛ばして、印象的なカットを撮るということも効果的だ。
一人で取材的に撮影するシーンがこちら。これはビデオサロンでのレポート用に昨年の夏にEOS C200を使っていただいたときのもの。カメラ本体に一脚、ガンマイクというシンプルな機材構成でインタビューしながらの収録だった。
公文健太郎さんの撮影スタイル
写真家である公文さんの場合は、スチルとムービーでレンズを共用している。機材のシステム全体はこんな感じ。
EOS C200は単焦点レンズをつけて、スチル用のバッグに入れているという。最近はクルマの後ろに突っ込んであって、いい風景があったら、クルマを止めて、すぐに出して映像を回すというスタイルをとっているそうだ。
「スチルの仕事用にレンズが、あおりのレンズ含めて、11mmから400mmまで揃っているのが強みなんですが、あまりズームは使わず、単焦点で24mm、35mm、85mm、そして100mmのマクロの4本をメインで使っています」
ただ、スチルは35mmフルサイズだが、ムービーのC200の場合はスーパー35mm。そのあたりの違和感はなかったのだろうか?
「それで28mmも試したのですが、ちょっとパースがついてしまうのが気になって、35mmだと目線に近い感じなので、僕は35mmの手ブレ補正付き、EF35mm F2 IS USMを常にEOS C200もつけていますね」
ザハトラーの三脚やリーベックのスライダーも購入したそうだが、基本的にはアングルにこだわって、きっちりいい画をとって、あとは相手が動いてくれればいいかなというスタンス。たまに相手が動かない時があるので、そういうときだけカメラを少しだけ横にスライドさせる程度。
(上の写真)スライダー上のEOS C200をオペレートする公文さん。周りにある機材はスチル関係。プロフォトのストロボなど。それにLEDがついているので、それを利用して動画を撮ったりしている。カメラは写真用のEOSで、横でスチルの撮影をしながら、動画を同時に回していくというスタイル。
UW INCとクリスさんは、動画であることの必然性を最大限に生かして、カメラワークや音声を重視しているのに対して、公文さんは写真家ならではの強みをいかして、トーンや構図で勝負をしている。それぞれの長所を生かしているのが印象的だった。
Vol.1はこちらから