【ビデオSALON特別セミナーダイジェストVol.1】 WEB動画の需要が高まってきたが、少人数、低コスト、短納期で作る。クオリティは妥協できない。


5月9日に開催されたビデオSALON特別セミナー(協力:キヤノンマーケティングジャパン、会場:秋葉原UDXシアター、告知ページはこちらを参照)。「生き残る映像制作会社になるためには何が必要か? 〜低予算・短期間・高クオリティに応えるには〜」と題して、タイプの異なる3組のクリエイターに登場していただき、昨今盛り上がりをみせているWEB動画の事例を紹介しながら、そのノウハウを共有していただいた。ビデオSALON.webでは、そのダイジェストとして、数回に分けてレポートしていく。(司会進行/まとめ:ビデオサロン編集長 一柳)

WEB動画の需要が高まってきたが、少人数、低コスト、短納期で作らなければならない。しかもクオリティは妥協できない。各人が表現者としてこだわるポイントもある。

セミナーの冒頭で紹介したのがこの動画だった。

2018/03/29 に公開

今年から大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに移籍して大活躍し、今大きな注目を集めている大谷翔平選手は、アシックスのアドバイザリースタッフをつとめる。アシックスのI MOVIE ME ワタシを、動かせ というワールドワイドの特設サイトの特別篇として、大谷選手が登場。この動画はYouTubeにアップされていて、WEBサイトに写真やテキストは存在しない。WEBにおいても動画がメインで使われる時代になってきた象徴として使わせていただいた。

I MOVE ME. ワタシを、動かせ。 大谷翔平選手にとっての、「I MOVE ME」な瞬間。MLB篇。
▽アシックスベースボールHP https://asicsbaseball.com/store/top.aspx

I MOVIE MEのサイトはこちら(https://www.asics.com/jp/ja-jp/imoveme

 

UW INC

上で紹介した大谷翔平選手のムービーを担当したのは、今回のセミナーに登壇していただいたUW INC。社長の押川賢吾氏 と撮影・編集をメインで手がける福島慎之介氏をお招きした。2013年より映像チーム”UISHAAAWORKS”として四人で活動開始。もともとは役者を目指して上京したそうだが、自分たちを撮っているうちに映像制作チームとして評価されるようになり、今では主にCM、WebCM、MVを制作している。現在のメインはWebCMだという。企画構成から監督、撮影、編集までチーム内で行なっている。2017年6月に法人化し、社名を”UW INC”としてまだ1年。

撮影・編集を担当した福島慎之介さんは、「大谷翔平選手 I MOVIE ME ワタシを動かせ」では時間がない中で、会議室で、いかにかっこよく撮るかに腐心して撮影したという。

映像制作も独学であり、自分たちがかっこいいと思える表現を追求してきたら、それがクライアントに評価されて仕事が増えてきた。クライアントからは「とにかくかっこいい映像にしてください、という頼まれ方をする」のだという。制作スタッフは社内にいる四人。完全に役割を決め込んでいるわけではないが、一人はアフター・エフェクツが得意、福島さんが撮影・編集を担当、押川さんがプロデュース・制作的な役割を果たすことが多いが、全員がシネマトグラファーとしてカメラを回し、編集作業をすることができる。外部スタッフは、手伝ってもらったとしても照明など、撮影現場で手伝ってもらうケースが多いという。

2017年中の仕事をまとめたデモリール(権利関係もあり、これが全てではない)。

 

クリス・モアさん

クリス・モアさんはビデオサロン本誌でも何度か取り上げたことがあるので、ご存知の方も多いかもしれない。ニュージーランド生まれで日本の大学院を卒業後、日本国籍を取得。40歳くらいまで映像業界とは無縁だったという。クリスさんが映像業界で有名になったのは、広島でのウェディング撮影。30台後半にウェディングの写真の仕事を始め、EOS 5D MarkIIに興奮して動画を始め、ウェディングの仕事も映像のほうに切り替えていった。ウェディングの仕事は順調に伸びていたそうだが、繰り返しの仕事に対して自分が飽きっぽいということもあったし、これ以上いいものは作れないという思いがあって、ウェディングの仕事をやめ、企業系の仕事をするようになった。企業系の場合、東京が有利なので3年前に東京に出てきた。

ウェディングであれば、いろいろなことを試しながら自由にできたし、何をやっても褒められたが、自分の中で飽きてきてしまったという。しかし映像としては、それ以上のものはあるはずで、それに挑戦してみたくなったそうだ。

クリスさんがディレクションしたのが以下の富士通のブランドムービー。

リレントレス(relentless)、自分自身に容赦ない姿勢。 専門種目も、タイプも、世代も違う二人のアスリート。彼らにとって、走る意味とは──。 [スポーツを通じてつながる、感動のある未来へ]
映像はこちらのサイトに入り口がある。http://sports-topics.jp.fujitsu.com/movie/
 作品はインタビューの音声を使っているが、あえてカメラを回さずに、音声だけ録ったのだという。そのほうが場所を選ばないし、自然な感じでリラックスして話を聞くことができ、本音を引き出せるのではないかと思ったそうだ。ウェディングで映像を始めたときは映像にこだわりがあったのだが、だんだん映像の意味を深めていくためにどうしたらいいのかを考えるようになり、映像も重要だけど、音声も重要だということに気がつき、両者が合わさることによって、さらに表現が深くなっていくことを体験してきた。
最近のパターンとして、インタビューをベースに、映像をインサートしていくようなドキュメンタリータッチの映像が多くなっているが、映像作品に「音声」とか「言葉」というベースが欲しいということを多くの制作者が感じているのかもしれない。
クリスさんは一歩すすんで、現在制作している作品では、「ナレーション」に挑戦しているのだという。

公文健太郎さん

 三人目はフォトグラファーの公文健太郎さん。前述の2組が基本的に映像制作を主軸としているのに対して、公文さんはあくまでフォトグラファー、写真家という立場で、最近ムービーにも取り組むようになった。公文さんの師匠は、写真家でありながらドキュメンタリー映画監督、プロデューサーも務める本橋成一さん(ポレポレ東中野のオーナー)。本橋さんの「ナージャの村」や「アレクセイの泉」が好きで、映画には憧れがあったという。師匠からも映像をすすめられていたけど、これまでは手が回らなかったそうだ。
もちろん一眼レフで映像が撮れるようになって、試したりしていたそうだが、画質的に全然満足できなかった。「写真のほうがきれい」と思えてしまって、大変な苦労をして動画をやることもないなと思っていたという。それが、たまたまEOS C300をお借りしたことがあって初めてLogで撮ってみたら、自分がやりたいことが実現できた。写真ではできない時間の流れのようなものを写真と同じようなクオリティでできることに気がついた。それはLogによって、階調と色の表現の幅が広がったのがポイントだった。
フォトグラファーとして仕事をしているクライアントのうち8割くらいは「動画も一緒にできませんか?」と聞いてくるのだそうだ。実際に時間的、物理的にできないこともあるが、「スチルをメインにした上で、動画もということであればやりますよ」という受け方をしている。あくまで写真家というスタンスは崩さない。
ライティングも含めて動画ではスチル撮影の環境をそのまま流用して、調整も同じようにやっていく。ウェブサイト上の同じページで使われるから世界観も同じでなければならない。写真でやっていることをそのまま動画でも実現できるようなって、こういったハイブリッド撮影ができるようになった。

http://noresoreaomoriya.jp/

 

3組に共通するのは、異分野(隣接分野?)から映像制作業界に入ってきたということ。映像を専門に勉強してきたわけではなく、映像制作会社で叩き上げてきたわけではなく、従来のしがらみというか、固定観念がないということが、功を奏しているのではないかと思った。

また、従来の映像制作のような役割分担型のチームではなく、スモールチームであり、小回りがきくこと。写真家の公文さんは、もちろん写真撮影の延長なので、アシスタントが一人というスタイルだし、UW INC.やクリスさんの場合でも、WebCMや企業ビデオであっても、制作スタッフはせいぜい4、5人である。

もう一つ、実はこれが一番重要かもしれないが、理想としている表現が自分の中にしっかりあるということ。それが個性となり、他では代え難いオリジナルの仕事ができているのかもしれない。

◎次回は、撮影現場&機材篇をお届けします。