2020年3月号特集【「写真」から「動画」へ】の中で、機材導入についてお話いただいたお二人=フジヤカメラ店◎北原弘明さんと、フジヤエービック◎鶴田大輔さん(本誌ではP.56~57)の対談をさらに詳しくご紹介。動画を撮るための機材について深い知識や情報を得られます。

また同特集では機材のみならず「動画撮影」で知っておきたい知識や考え方がたくさん載っていますので、ぜひ本誌とあわせてお読みください。

VIDEO SALON 2020年3月号

編集部)今日はお忙しいなか、ありがとうございます。まずそれぞれお店の特徴をはじめ、どういったお客様が来店され、どんな機材をお求めなのかお話しいただけますでしょうか。

 

北原さん(以下、北)●フジヤカメラはスチルカメラ専門店ですので、写真をメインに撮られる方の来店が大半を占めます。そのうちプロカメラマンは1〜2割でしょうか。最近の動向としてYouTubeでご覧になった動画を示して「こういう動画を作りたいんだけど…」「この動画はどんな機材で撮れるの」など、YouTubeの影響を大きく感じます。そこを入り口にして、写真と並行して動画も「本格的に編集や作品づくりをしたい」というニーズが目立って多くなったと感じています。

 カメラやレンズをはじめ関連製品を数多く展示・販売しているフジヤカメラ店(東京中野)。北原さんはスチル関連ももちろん知識・経験豊富だが動画方面も強いので、動画に興味をお持ちの方はぜひご相談を。

 

鶴田さん(以下、鶴)■フジヤエービックはフジヤカメラのAV(オーディオビジュアル)部門として独立したお店です。ビデオサロンさんに掲載される時は映像機材がメインですが、高級イヤホン・ヘッドフォン・ハイレゾプレイヤー等に強い、オーディオ専門店でもあります。映像関連でお越しのお客様は、放送・収録用の業務用機材や、レンズ交換式の一眼動画やシネマカメラをお求めになるプロのお客様が多いですね。

レンズ交換式の一眼動画・シネマカメラが増え、AFなどカメラ側の機能向上により、高画質な映像が以前より手軽に手に入れられる環境が整いつつあります。導入の敷居が下がったことで、映像表現として一眼を動画撮影に使うことが一般化されユーザーが増えたのがこのところの傾向でしょうか。個人で導入できる価格帯でも、高画質な動画カメラが最近とても増えていると思います。

 VIDEO SALONでも馴染深い、映像&音響機材専門店のフジヤエービック(東京中野)。鶴田さんはその知識の豊富さと最新事情キャッチの早さ等々どのジャンルでも抜きん出ている。最近は店頭に立つことは少なくなっているがお店に顔を出すと瞬く間につかまってデスクに戻れないそう。もし見かけたら話しかけたい方No1と言える。

 

編)最近の売れ筋はどの辺りですか?

鶴■よく売れているのはポケシネ4Kですね。カメラ任せで簡単に撮れるカメラではありませんし、操作はマニュアルで他にもいろいろ揃える必要があって「安いカメラ」という認識はないのですが、あの価格であれだけ高画質なフッテージが撮れるカメラは他にありません。

編)北原さんにお聞きしたいのですが、先ほどおっしゃっていた「カメラ店ながら動画のことを聞いてこられるお客さまが増えた」というところで、そういう方は動画にすでに詳しい方が多いのですか、それとも分からないけどとにかくやりたい、という方が多いのでしょうか?

北●店頭ではあまり深くは聞けないのでなかなか絞りづらいのですが、やはり傾向としては動画を本格的にやりたいのだけれど、どのカメラを買えばいいですか?といった辺りの質問が多いような気がします。

 

「動画」を始めたい方へのオススメカメラは?

編)動画用の一眼ならどんな機種をおススメしていますか?

北●まずはマイク入力のあるカメラをおススメします! 私自身の体験ですがカメラマイクを加えた時の満足度がとても高かったので。予算やアウトプット先をお聞きした上で…ですが、入門者にやさしい定番のソニーのα6100~6600をオススメすることが多いです。予算に余裕があれば同じソニーのフルサイズセンサーであるα7 III、マイクロフォーサーズのパナソニックGH5、また最近注目しているのは撮って出しの発色が上品な富士フイルム X-T3やX-T30あたりですかね。

北原さんの一押しカメラは自身でも愛用しているソニーα6400(これから買う人で予算にあうならα6600を推薦)。レンズはシグマのコンテンポラリー(後述)、マイクはRODE VideoMicro、モニターはSmallHDのFOCUS 5と全体的に機動力重視。

 

編)VIDEO SALONが扱っているようなカメラからすると、ヘッドホン端子のない一眼のことは聞いても、マイク入力は基本的に付いているのかと思っていましたが…マイク入力のないカメラも結構あるんですね。

北●下位グレードのカメラには付いていないものもあります。初めての方は見落としがちなことのようで、マイクの話をすると考えを変える方が多いです、やはりマイク入力はあったほうが良いと。

編)具体的にはどういう?

北●初めての方ですとお客さまのほうで予算を決めている方も多くて、例えば5万円でレンズも含めてご購入というと、非常に入門的な機種になってしまうのでマイク端子がなかったりします。そういった場合はこちらからアドバイスをして、もうすこし上位機種でマイク入力のあるモデルのほうが良いんじゃないですか?とお話します。すると、確かにそうですね、となることが多いです。

私も愛用しているRODEのVideoMicroみたいな1万円以下のマイクであってもなかなか良い音ですし、実際このマイクをご案内すると購入いただくことが多いですね。予算にこだわる方も多いのですが、動画については「この部分をこうすると良くなります」という具体的な提案をすると趣旨替えをしてくださる方も多いです。

鶴■やっぱり内蔵マイクだと限界がありますから小さいマイクながらVideoMicroはオススメですね。(※編集部注:マイクほかのオススメ機材については後編で詳述)

 

編)予算のお話が出たので少しお聞きしたいのですが、映像クオリティを優先して予算を乗せていくのと、音声入力などの拡張性を重視して予算を乗せていく、どちらのケースが多いのでしょうか?

北●う~ん…、動画カメラを初めて買う方だと映像面の良し悪しであるとかスペックの読み解き方みたいなのは知らない方のほうが多い感じです。ですので、どちらかというと何ができるかというほうが大きいですかね。例えば、オートフォーカスが速くて正確だとか、マイク端子があるとか、暗いところに強いであるとか、自分がメインで撮りたいと思っていることと照らし合わせて、それに強いカメラだと分かると「これにします」というケースが多いように思います。

編)ある意味、カメラ選びとしては大正解、とも言えますね。

 

動画に強いフジヤエービックからのアドバイス

編)フジヤエービックのお客様は動画について知識のある方が多いですよね。BMPCC以外のお勧め機種はどのあたりでしょうか。また機材購入についてのアドバイスなどはありますでしょうか。

鶴■機材購入は、予算と使用目的次第ですよね。ただレンズは長く使えるので、できるだけ長く使える質の良いものを勧めています。ボディは毎年のように新機種が出るので買い替えを前提として、使用頻度や用途に合わせて選ぶのが良いと思います。三脚など周辺機器にも言えますが、買い直しが一番コストが掛かるので、上位機種への買い直しが必要ない、長く使える物を買うことが結果的に一番リーズナブルだと思います。

編)動画については、どのくらいできるか・するかはその方その方で大きく差がありますもんね。

鶴■そうですね。今はやりたいと思ったときに、YouTubeであったりインターネットで知りたい情報を得たり、あとVIDEO SALONさんみたいにより深い情報を入手できるツールもあるので、自分にいま必要な情報を咀嚼し、そこに時間と情熱を注げばステップアップしやすい恵まれた環境だと思うんですよね、そこは、昔よりも今、すごく良い環境が整っていると言えます。

 スチルカメラ店と映像・音響専門店という立ち位置の違いはありつつも互いに知識や情報を共有。この対談でもお二人のコンビネーションが伝わってきた。

 

編)北原さんはカメラ以外の物でオススメするなら何ですか?

北●やはりレンズですね。明るくて高性能なレンズです。写真では最も重視される機材の一つですが、動画では「とりあえずズーム」という方が多くて少し勿体なく感じます。例えば暗い場所で撮るとなったら高額なカメラが必要と思われる方が多いですが、明るい単焦点レンズならカメラの性能を大きく補ってくれます。そんな中でもおススメなのは、SIGMA 16mm/30mm/56mm F1.4 DC DN | Contemporary の3本です。APS-C用のレンズですが、コンパクトで明るく超高性能でボケも綺麗なので、どれか1本でいいので使ってみることをお勧めします。欠点は手ブレ補正がないことですが…。

 

編)北原さんはα6400を愛用されているということですが、もし買い替えを検討する場合、例えばα6600やα7 IIIなどは買いたいと思われますか?

北●もちろん思います! やっぱりα6600が欲しいです。さっき言いましたSIGMAレンズやマニュアルフォーカスレンズを使う際にも、ボディ内手ブレ補正は便利ですし。また最近4Kも撮影するようになったのですが、α6400だと4K撮影はFHDと比較してバッテリー消費が激しいようです。実験したら15%も減りが早い。2倍以上の容量を持つFZ100をバッテリーに使うα6600はやはり魅力的です! …実は取り置きしちゃいました(笑)

編)そうでしたか(笑) 手元に来るのが楽しみですね。

 

「編集」をすると撮り方が大きく変わる!?

編)ところで、このあいだ北原さんに事前にすこしお聞きした話ですと、編集をするようになって撮り方が変わったということでしたが、それは実際どんな感じなのでしょうか?

北●そうですね。僕の個人的な話で申し訳ないのですが、子供もいて旅行に行った時にムービーを回すことが多いんですけど、編集すると「このカットがあったほうが流れが良いな」というのがだんだん分かってくるじゃないですか。例えば、移動中に高速道路で走っているシーンも撮るようになったり、編集点を考えて旅行中に起点となるようなシーンを見つけると、動画を回すようになりました。

あと僕は写真畑にいた時のほうがずっと長いのですが、写真はシャッター切った瞬間にかなり多くが決まってしまうと思うんです。でも動画は「RECボタンを押してSTOPするまで 」の作業は、全体としてみたら半分以下だと思うんですよ。趣味として楽しむ場合、写真のようにシャッターを切った瞬間に多くが決まるのも、それはそれで緊張感があって楽しかったのですが、動画はRECボタンを押して録画した後に、家に帰ってパソコンに向かって毎日ちょっとずつ編集をしていく楽しみがあります。動画編集は写真では味わえない楽しみだったので、すごい新鮮だったのを鮮明に覚えていますね。結構好きなんですよね、むしろ編集をするほうが。

編)ちなみに編集ソフトは?

北●プレミアです。

編)CC(クリエイティブクラウド)ですね。

北●ほんとうはDaVinci Resolveを使いたいんですけど…。うちのパソコンだと走らないんですよね。プレミアは意外と軽いのでうちのパソコンでも運用できます。

編)ということはまだカラーグレーディングまではしていないのでしょうか?

北●プレミアでも色調整はできるので、露出を上げ下げしたり少し色被りをとったりはします。本格的なグレーディングまではしてないですが…。でもたまにLogで撮って後からLUTを当てる時もあるのですが、LUTだと自分の好みドンピシャにはならないこともあるので、その辺のところからおそらく今後自分で本格的なグレーディングに踏み入れていくんだろうなと想像しています。

編)その辺はこれからの楽しみでもあるわけですね。

ところで、鶴田さんに機材面でもうちょっとお聞きしたいのですが、カメラがすでにあってプラスαを導入するとしたら、順番的に導入するおすすめ順みたいなのはありますか?

 

(後編「カメラ以外に動画撮影で導入すると有効な機材」に続く)

VIDEO SALON 2020年3月号