【アーカイブ】スタジオに行かずに高品質なナレーションを手に入れるコツ〜ナレーション制作における失敗しないリモート依頼術 Vol.1


企業のプロモーション映像や番組、CMなどに欠かせないナレーション。近年は、オンライン環境を活用し、遠隔地からスタジオ収録に立ち会うケースも増えています。リモートでナレーションのスタジオ収録を依頼する時にスムーズかつ高品質な作品制作を行うためのポイントを株式会社ヴォイスワーク代表取締役の吉村誠一郎さんに聞きました。

講師●吉村誠一郎(株式会社ヴォイスワーク代表取締役・道玄坂702スタジオ管理者) 構成・文●高柳 圭


株式会社ヴォイスワーク代表取締役
吉村誠一郎
個人事業として1987年に創業以来、テレビ局のアナウンサーやナレーターとしての業務を中心に行う。自身で番組やコマーシャル、企業のナレーションから、音声合成の音素、e-ラーニング音声など幅広く活動する傍ら、ナレータープロダクション「ヴォイスワーク」、収録スタジオ「道玄坂702スタジオ」を運営する。

 

VIDEOSALON 2021年4月号より転載

 

 

スタジオを使う「リモート収録」と自宅で収録する「宅録」

私はテレビ局のアナウンサーを経て、ナレーターの仕事も行う傍ら、自身で株式会社ヴォイスワークを起業。ナレータープロダクション事業や東京・渋谷にナレーション収録のための「道玄坂702スタジオ」を作り、スタジオ運営をしております。プロダクションを立ち上げてから30年以上が経ち、様々なプロジェクトに携わるなかで経験と蓄積をしてきた「スタジオに行かずに高品質なナレーションを手に入れるコツ」をご紹介したいと思います。

最近、今の社会の状況もあり「リモート(remote)」という言葉がよく聞かれるようになりました。特にビジネスにおけるリモートは、インターネットなどを利用して、遠隔地で仕事や会議ができる環境を指します。また、テレビ業界では昔から「中継」の意味で、打ち合わせ時「今日のリモートは〇〇からです」というように使われていました。

私自身がいわゆるリモートワークを実施していたのは1980年代まで遡ります。福岡でフリーアナウンサーをしていた当時、福岡以外の九州各地のCMの仕事を受ける機会も多く、収録のスタジオに立ち会えない制作者やクライアントのために、電話の受話器をスピーカーに向けて収録した音を出して確認してもらうということがありました。仕事は電話で受注して、FAXで原稿を受け取り、スタジオで収録した6ミリテープを新幹線で持っていくことも。

一方で、当時は電話回線を使い、福岡と東京のスタジオをつないで、東京に居るナレーターに原稿を読んでもらうシステムは存在しましたが、機材や電話回線の費用といったコストの問題で頻繁には使われていませんでした。

近年はインターネットでメールやデータのやり取りが容易になったことで、リモートでのナレーション収録は一般的になりましたが、スムーズに制作を進めるための注意点は多々あります。ナレーターが自身で収録する「宅録(自宅収録)」と比較して、リモートでのスタジオ収録のメリットは、依頼主が遠隔地からでも収録現場に立ち会えること、音声をその場で聞いてすぐに修正ができること、エンジニアが整音して聞きやすい音にできることなど様々です。

高品質なナレーションをつくるためには、リモートでもスタジオ収録を活用することが必要だと考えます。

 

検証1「リモート収録」と「宅録」の違い

道玄坂702スタジオでのリモート収録と、一般的な「宅録」との違い。ワークフローは同じだが、収録に立ち会えるかどうかが異なり、そのまま品質に直結する。一方、宅録は経費を安く抑えることができるが、リテイクが多くなると結果として、リモート収録と同等になることもあり得る。

 

 

道玄坂702スタジオの収録風景(クライアントはリモートで立ち会い)

エンジニアスペースに隣接したクライアントスペースから収録の指示を出す吉村さん。遠隔地にいるクライアントとSkypeでつなぎ、吉村さんが現場の収録進ディレクターとしてクライアントへの確認、ナレーターやエンジニアへの指示を出す。収録進行ディレクターがいるスタジオは珍しく、吉村さん自身が地方局時代に中継のマスターディレクターを経験したことが生かされている。

▲Pro Toolsを操作するエンジニア。NGが出た場合も、合間に手早くOKテイクだけを切り取っていく。

▲エンジニアデスクに隣接する遮音されたアナウンスブース。クライアントとマネージャーからは音声で指示できる。

 

 

依頼から見積もり、ナレーター選びまでのポイント

ナレーション制作では依頼する前に把握しておくべきポイントがいくつかあります。スタジオへの問い合わせは、電話かメールで行うことになると思いますが、電話で制作物のことを説明いただくよりも、まずはメールの文面で概要が分かるように伝えることで、次のステップに進みやすくなります。「コンテンツの種類」「制作物の尺(時間)」「動画の有無」「希望ナレーター」「予算感」「収録希望日程」などに加え、原稿の大まかな内容があると良いです。

特に予算の規模は必ず伝え、収録希望日程は第二・第三候補まで設定するのがベターです。費用の見積もりを依頼する場合は「収録に要する時間」をあらかじめ盛り込んで伝えていただくほうが良いと思います。

収録の依頼をいただく上で一番難しい質問が「ナレーションを録りたいのですが、いくらですか」というものです。企業VP、番組やコマーシャル、教育用、オーディオブックといったジャンルや、制作物の時間の長短によってかかる費用は変わっていきます。

大まかに言うと、スタジオとナレーターの料金を併せて、短い作品でも最低5万円前後はかかるのですが、できるだけ具体的に内容を伝えることで、受注側が詳細な見積もりを出しやすくなると思います。弊社では、ほとんど案件ごとに設定しているため料金は一律ではありません。

一方、他社では、時間と文字数による費用換算を導入しているケースがあります。外国人ナレーターに多く見られるのが「時間単価制」です。料金体系は分かりやすいですが、上手いナレーターが短時間で終わるのに対して、そうでないナレーターで時間がかかると制作者の負担が増えることになります。

また「文字数換算制」は、短い原稿のものになるほどナレーターやプロダクションが採算割れを起こすリスクがあります。個人営業で宅録できるナレーターが引き受けている場合が多いです。

次にナレーターの選び方ですが、特に決まりはありません。案件の性質に声がマッチするかの確認は、WEBなどのナレーターのサンプルボイスでもできます。なお、ナレーターよって料金に違いがあることもあります。若いから安いというわけではなく、個人の経験や技量によって変わります。地方で放送されている制作物では限られたナレーターが採用され、別の番組で同じ声が流れるという光景がよくありますが、東京のスタジオに依頼することで、ナレーターの選択肢が増えることは、制作物の差別化という意味でリモートのスタジオ収録のメリットと言えます。

 

見積もり依頼までに決めておくこと

ナレーション収録の料金は単純計算で決められないため、上記のような内容を提示してもらえると見積もりも立てやすい。

 

ナレーターの探し方

道玄坂702スタジオのWEBサイトより、ナレーター検索ページの例。ボイスサンプルを聴いて、イメージに近い人を何人か選んでおく。

Vol.2はこちら

 

VIDEOSALON 2021年4月号より転載

 

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