レポート●編集部

 

VR映像というとVRゴーグルを装着して視聴の間は「一人で体験するもの」というイメージがありました。しかし、それも過去の話になりそうなVRコンテンツが公開されています。7月15日(土)〜8月27日(日)までの間、開催中のイベント「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り」で展開されているVRアトラクション「ABAL:DINOSAUR(アバル:ダイナソー)」では3DCGで作られた恐竜世界を同時に最大6人で体験でき、なおかつ、そのVR空間の中を入り込み自由に歩き回れるというのが特徴ということ。今回、公開前に体験する機会をいただいたので、レポートしてみたいと思います。

 

VRゴーグルやマーカーを装着してアトラクション内へ

モーションキャプチャー用の反射マーカーが取り付けられたVRゴーグル(サムスンGearVR)と手足にもそれぞれ写真のように専用のパーツを取り付けます。これらはゴムとマジックテープで固定するので手軽に着脱できました。

 

こちらは日頃はテレビ朝日の会議室として使われている部屋だそうです。写真からはまったく伝わりませんが、イカダに乗ったり、崩れ落ちそうな崖を渡ったりというアドベンチャーな恐竜ワールドを体験中です。「ABAL:DINOSAUR」ではVR空間の中のキャラクターとして自分はもちろん、他の参加者も映像の中に入って、共に恐竜世界を味わえます。

 

部屋の周囲には至るところにご覧のようなモーションキャプチャー用のセンサーカメラ(VICON VERO)が設置されていました。

 

参加者各自が手足頭に装着する装備を見てみると、反射マーカーの配置が微妙に異なるのがわかります。これによって、それぞれのキャラクターを識別しているそうです。

 

他にも同様のアトラクションは以前からあったようですが、画質を良くするためにバックパック型の映像機器を背負ったり、映像を再生するためのパソコンとVRゴーグルをつなぐケーブルがあったりと、VR空間を自由に動き回ることができませんでした。今回の「ABAL:DINOSAUR」ではそうしたものに比べると画質は犠牲になるものの(とはいえ充分な画質に感じました)、軽量な装備でVR空間を自由に歩き回ることができるのが実に楽しいわけです。映像コンテンツ自体はGearVRに装着したGALAXYで再生する仕組みですが、参加者6人でVR世界を共有するためには同時に同じ映像を見る必要があります。アトラクションでは6人の映像が同時再生されるトリガーとなる出来事が組み込まれており、そうした仕組みにも工夫が凝らされているということでした。

 

 

 

ABALシステムの開発とVRコンテンツ制作を手掛けた尾小山さん

▲ABALシステムの開発を手がけた株式会社ABAL代表の尾小山良哉さん。

 

今回のシステムを手がけたのは株式会社ABAL。同社は数多くの映画やTVCMなどのエンターテインメントを手がける株式会社ROBOT(ロボット)とVFXやCG、VRを得意とする映像ディレクターの尾小山良哉さんが代表を務める株式会社wise(ワイズ)、画像認識・位置測定・空間認識技術等のソフトやハードウェアの開発を行う株式会社A440の3社がそれぞれのノウハウを持ち寄り、2016年に設立したジョイントベンチャー企業。

 

迫力の3DCGとその世界観に感情移入させるための映画的なストーリーテリング。さらには、その空間の中を登場人物の一人として自由に動き回れる小型軽量なモーションキャプチャーの仕組みが三位一体となって、とても新鮮な体験でした。今回は15分のコンテンツでしたが、ゴーグルのリフレッシュレートが向上していけば、VR酔い対策も可能になり、さらなる長尺のコンテンツにも対応していけるだろうということ。

 

ABALシステムは50㎡程の会議室からセンサーの数を増やしていくことでスタジアム規模の空間でもVR体験が可能になるということ。システムの設置や撤収も容易にできるので、コンテンツを変えて様々なシチュエーションで活用できそうです。今後の可能性を非常に感じさせるVRアトラクションでした。

 

ここでは実際のアトラクションの魅力はお伝えしきれていませんが、「ABAL:DINOSAUR」は8月27日(日)までテレビ朝日にて開催されています。ぜひ、夏休みの間、家族や友人と一緒に体験してみてください。

 

 

●ABAL社のホームページ

http://www.abal.jp/