REPORT◉三好 宏弥 アポロ・プロダクション
協力◉アスク・エムイー、リーンフェイズ
2022年4月のNAB 2022で発表されたAJA HELO Plusがいよいよ発売となる。
今回はひと足早く評価機をお借りすることができたのでHELOとの違いや、新機能にも注目してチェックしたい。
はじめに、そもそも旧機種のHELOや、今回取り上げるHELO Plusは何を目的とした機材なのか…?
筐体にプリントされた「H.264 STREAM / RECORD」の文字通り、H.264での「配信」と「収録」を主な目的とした機材である。
配信機能としては一般的なライブ配信で多く使われるRTMP/RTMPSはもちろん、今回のPlusでは次世代の伝送プロトコルとして期待されるSRTにも対応したのがトピック。収録機としてはUSBメモリやSDカード、NASストレージに直接収録できるのが特徴だ。
前面パネルには「RECORD」「STREAM」ボタン、オーディオレベルメーター、USB 3.0コネクタ、SDカードスロットなどが並ぶ。ボタン横のLEDは配信と録画のステータスがひと目で分かるようにレイアウトされている。また、Plusになって追加されたオーディオレベルメーターにより音声のレベル確認がしやすくなった。USB 3.0コネクタにはUSBメモリを挿して直接映像収録することが可能だ。筆者所有のUSBメモリでも問題なく収録することはできたが、メーカー検証済みの対応USBメモリを使用することをお勧めする。対応USBメモリのリストはAJAのウェブサイトで確認することができる。
対応USBメモリのリストは随時更新されます。https://www.aja.com/assets/support/files/8873/en/AJA_HELO-Plus_Approved_Media_v1.0.pdf
背面にはアナログ音声の入出力、SDI入出力、HDMI入出力、設定用のMini-USB、LANポート、電源端子が備わる。
SDIとHDMIの両入力を持ったエンコーダーというのは実はあまり多くなく、HELO Plusの特徴であるといえる。電源コネクタは破損や抜けるリスクの低い4ピンミニ XLR端子となるなど、業務機としてのポイントを抑えた堅実なアップデートと言えるだろう。
本体はHELOよりも一回り大きくなった印象だが、片手で簡単に持てるコンパクトさは変わらない。金属製の筐体ながら質量は0.46 kg に抑えられており、薄型で設置の自由度も高い。
WebUIは前モデルや同じAJA製のKi Proシリーズなどに近いデザインとなっている。
Ki Proシリーズ と収録開始/停止を連動させることも可能。
こちらはKi Pro Ultra PlusのWebUI。同一ネットワーク上のHELO Plusが認識されているのがわかる。
配信の設定もWebUIから簡単にできる。OBSなどのソフトウェアや、他社のエンコーダーを使用したことがある人であれば問題なく使いこなせるだろう。
2画面+テロップが使えるレイアウト機能
HELO Plusになって追加されたユニークな機能がレイアウト機能だ。単一カラーの背景の上にSDIとHDMIの2入力を任意の位置にレイアウト、さらにはグラフィック(テロップ)を重ねることができるようになった。
WebUI上でプレビューを確認しながら画面を作ることができる。細かく数値設定ができるので、画面の一部がはみ出たり、食ってしまうことも無い。
レイアウト機能を使うと最近のプレゼンでおなじみとなった、スライドと縦長の人物の2画面などを簡単に作ることが出来る。
通常2画面を作ったりテロップを入れたりするためには対応したスイッチャー機材が必要だったが、HELO Plusでは単体でできてしまうのだ。
さらにこのレイアウトは10パターン×20セット作成でき、ブラウザ上から簡単に切り替えができるので、プレゼンター自ら手元のスマホで画面を切り替えられ、テロップを入れながらプレゼンすることもできる。
レイアウトの切り替えはWebUIからで、同じネットワーク上であればPC、タブレットやスマホからでも操作が可能。
Bitfocus Companion や Stream Deckと組み合わせれば物理キーでのレイアウト切り替えも出来る。
なお、レイアウトされた映像は配信、収録だけではなくSDI/HDMI OUTにも反映された。
HELO Plusが活躍するシチュエーションは
シンプル活用例
例えばHELO Plusを中心としてライプ配信環境を新たに組むとしたら下記のような構成が考えられる。
最低限の構成ではあるが簡単なオンラインセミナー、授業などであれば十分対応できるだろう。
・AJA HELO Plus
・ビデオカメラ(SDI出力)
・スライド表示用 ノートPC(HDMI出力)
・モニター
シンプル&コンパクトに組めて、事前設定さえ済ませておけば出演者自らオペレートすることも可能だ。
既存のシステムとの組み合わせでも活躍
画面レイアウト機能やテロップを出す機能の無いスイッチャーとHELO Plusを組み合わせて画面レイアウトの作成や、テロップを挿入するような使い方も有効だろう。スイッチャーのリプレイス無しに映像演出のグレードアップが可能となる。
複数の機材を連携させて使う
同一ネットワークに複数台のHELO PLusが存在する場合、1台を親機としてまとめて制御することも可能だ。
大規模なイベントで複数言語の配信を同時に行う場合などに威力を発揮するだろう。
また、Stream Deckなどとの組み合わせで、それぞれの言語のテロップや蓋を同タイミングで出すこともできる。
PCレスの安定配信
PCを使用した配信は画面構成の自由度は高いものの、長時間、長期間の安定稼働に課題は残るし複数のスタッフが機材を共有するような環境では、ベストな環境を保つのは難しい。
その点HELO PlusであればPCにつきもののトラブルからは無縁、設定も一般的なブラウザから行えるので導入のハードルも低い。
安定した配信環境を構築しつつ、レイアウト機能により複数画面やテロップ挿入などの演出までできるHELO Plusは今後の配信シーンで注目の機材となると感じた。
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