われらがブラックマジックのシネマカメラがフルフレームセンサーになって帰ってきた!「Blackmagic Cinema Camera 6K」を検証する


REPORT◎井上卓郎

映像業界にシネマを意識させたカメラBlackmagic Pocket Cinema Camera(以下BMPCC)の最新版、名称からPocketが外れBlackmagic Cinema Camera 6K(以下BMCC6K)として新たに登場した。フルフレームセンサーを採用しマウントもLマウントとなり最新のレンズが使用できる嬉しい進化を遂げたBMCC6Kの魅力を全力でレビューする。

 

BMPCCシリーズの意匠を引き継ぐ外観と操作性

BMCC6KBMPCCシリーズの意匠を引き継いだデザインだ。レンズマウントがLマウントになったのでBMPCC6Kよりマウント部の張り出しが短くなり少しだけコンパクトになったが、チルトする5インチのモニターをはじめとして基本的なデザインは変わらない。またメニューのインターフェースも安心のBlackmagic OSが採用されている。大きなモニターと相まってとても使いやすい。私的には他社カメラと比較しても一番使いやすいオペレーティングシステムだ。

 

フルサイズセンサーとLマウント

BMPCC4K4/3サイズ、6Kはスーパー35サイズのセンサーだったが、BMCC6Kでついにフルサイズ35mmセンサーとなった。またマウントもLマウントとなりシグマ、Lumix、ライカなど個性豊かなレンズを使うことができる。またLマウントはフランジバックが短いのでマウントアダプターを介すことで今までのレンズ資産を活かすことも可能だ。ちょうどこのカメラの発表のタイミングでブラックマジックデザインもLマウントアライアンスに加盟した。

 

モニターが大きいのは正義

大きなモニターは、撮影中に「これいいな」と思える瞬間を捉えるのに役立つ。自然を撮影する私にとって、光を見ることに集中ができる大きなモニターは撮影しながら完成のイメージを膨らませることができる。外部にモニターを付けるためにリグを組み、ケーブルを取り回し、大きなバッテリーを取り付ける。この作業がないだけでも撮影に集中することができる。私が使っているBMPCC4K / 6Kに比べ輝度が上がり、チルトすることでとても視認性が高くなっている。

 

CFexpress Type Bになった収録メディア

収録メディアはBMPCCシリーズではCFast 2.0が使われていたが、BMCC6KCFexpress Type Bに変更になった。最近はCFexpressの方が容量、価格、入手性において優れているのでありがたい。またUSB-Cを介して外部SSDに収録も可能だ。こちらについては別途レビュー記事を書いたので併せて読んでもらいたい。

話題のシネマカメラBlackmagic Cinema Camera 6KSamsung ポータブルSSD T9検証する

https://videosalon.jp/pickup/samsung_bmpcc_inoue/

 


 

EVFを装着することで上がる視認性と安定性

別売りのビューファー Blackmagic Pocket Cinema Camera Pro EVFを付けると明るい屋外での撮影や、ハンドヘルドでは3点支持ができるので撮影が安定する。とてもコンパクトなEVFなのでつけっぱなしでも邪魔にならない。

 

必要十分な時間 撮影可能なバッテリー

バッテリーはNP-F570を使用している。カメラに付属のバッテリーで実測80分程度の連続撮影ができた。撮影条件によって前後するとは思うが充分な時間だ。別途2本くらいは予備のバッテリーを持っておくと良い。注意点としてNP-F570のバッテリーは大元のソニーでは生産終了しており性能のばらつきが多いこと。筆者の手元にあった得体の知れないNP-F570互換タイプのバッテリーでは30分くらいしか撮影ができなかった。追加する際はブラックマジックデザイン純正のバッテリーを購入することをおすすめする。

 

映像の基礎が身に付くカメラ

BMCC6Kは、映像を撮る上で大切な要素が詰まったカメラだ。露出の3要素(絞り、シャッター速度、ISO)の判断、手ブレを減らす持ち方、マニュアルフォーカスなど、基本的な撮影技術を身につけるのに最適だ。最近のカメラはほぼすべてオートでできとても便利ですが、オートに頼ることで失うものも多いと私は思っている。映像の基礎が身に付くという点で、これから映像をしっかりとやりたいという方にはBMPCC4Kをオススメしているが、もし予算が許すならBMCC6Kを最初の1台にするのも良いのではないだろうか?

Photo:鈴木佑介

 

ビデオカメラではなくシネマカメラ

BMPCCを長く使っていると慣れでなんでも撮れるカメラになってしまっていたが、やはりこのカメラは被写体と向き合いしっかりと撮るカメラと再認識した。スチルカメラにはないシネマカメラ特有のしっとりとしたカラーサイエンスはとても良い。大きなモニターも相まってか撮影中に興奮してしまった。撮るものすべてが画になる。やはりこのカメラはシネマカメラだ。

BMPCCシリーズにはなかったOLPFフィルター(ローパスフィルター)が追加され、より自然な色合いで記録ができる。解像感が落ちるのでは? という懸念も杞憂に終わり、今までのシリーズの中で一番印象的な画が撮れるように感じた。

Blackmagic RAWで収録した映像は編集もカラーグレーディングもサクサクだ。カラーグレーディングでこねくり回さなくても自分の求める色に最短距離で辿り着く。






 

オープンゲートで広がる表現


通常はセンサーの上下は使わずに16:92.39:1といったアスペクト比で撮影を行うが、オープンゲートではアスペクト比3:2のイメージセンサーのすべての領域を余すことなく使い撮影ができる。撮影した映像は3:2になるが上下に余裕を持った撮影や、アナモルフィックレンズの性能をフルに使うことができる。私はアナモルフィックレンズで撮影はしないのだが3:2という画角はとても新鮮だった。横長=シネマみたいな風潮がある中で3:2の画角はBMCC6Kのカラーサイエンスと相まってノスタルジーを感じ、むしろこちらの方がシネマっぽく感じるという不思議な感覚があった。

意外だったのが3:22.39:116:9などの画角を混ぜて編集しても違和感がなかったという点。画角の切り替わりに変化がつけることができ、画角に意味を持たせてストーリーに組み込めば話に深みを持たせることができるのではないかと表現が広がる可能性を感じた。

またオープンゲートのメリットとして今まで捨てていた上下、特に被写界深度を余すことなく使え、同じ被写界深度でも奥行きと立体感を感じることができる。

 

BMPCCシリーズとの棲み分け

使いたいレンズ、どのくらいボカシを使いたいか、掛けられる予算などから選べば良いと思う。フルフレームかスーパー354/3か? どのセンサーを選んでもブラックマジックデザインのカメラの根本にあるものは変わらず、しっとりとしたシネマカラーサイエンスを堪能できる。

 

Blackmagic Cloudとの連携

BMCC6KBlackmagic RAWと併せてH.264プロキシを同時に収録できるようになった。Blackmagic RAWは編集時にとても軽いのでプロキシはいらないのでは?と思ったが、多分これはBlackmagic Cloudとの連携への布石でiPhone用のAPP Blackmagic Cameraと同様に現場で撮影した映像のプロキシをまずアップロードし、追って高画質のBRAWをアップロードすることで撮影から編集へのスピードが格段に上がることになると思う。

特にウェディングやイベントの速報性が求められる現場で重宝されるシステムになると勝手に思っている。 正直私はそこまで速報性が求められる撮影や複数人でのチームプレイなどもなく、ネット回線すらない場所での撮影が多いので、無縁な技術なのだが、もし実現すればとても未来を感じる。

 

残念な点

BMPCC 6K Proに搭載されていた内蔵NDフィルターがなくなったことが残念だ。ただこれはLマウントのフランジバックが短いので物理的に入れるスペースがなかったのであろう。しょうがない。

カメラ内レンズ補正が効かない。これは後々改善されるかもしれないが、最近のレンズはボディー内での補正を前提としているのでレンズによっては歪みが大きく出る。ただしDaVinci Resolveで編集時に気にならない程度に補正は可能だ。せっかくLマウントアライアンスに加盟したのでカメラ段階で対応してもらえると嬉しい。

BMPCCシリーズではSDカードも使うことができたが、BMCC6Kでは使うことができない。とはいえBMPCCシリーズでもほとんど使ったことはなかったので私的には問題はないが。

ProResでの収録ができなくなった。基本的にBRAWでの収録以外の選択肢がなくなったのでBRAWを読み込めないソフトでは直接編集ができない。DaVinci Resolve Studioが同梱されているので使ってねということだと思う。

人によってはAFがとか手ブレ補正がとか言いたいかもしれないが一言、「そういうカメラではない」。ちなみにAFに関してはAFボタンもしくは液晶にタッチすることで可能なのだが、最近のミラーレス用レンズはAF性能が上がっているらしく、BMPCCの頃より大分速くなっていた。また手ブレ補正もカメラ内部のジャイロデータを使ってDaVinci Resolveで補正することができる。

 

総評

BMCC6Kは、スチルカメラにはないシネマカラーサイエンス。シンプルで直感的な操作性、高い映像品質、Lマウントの採用による幅広いレンズの選択肢、そしてDaVinci Resolveとの組み合わせで、高いレベルの映像制作ができるカメラだ。BMCC6Kの映像表現の幅の広さは、多くの映像クリエイターにとって魅力的なカメラとなるのではないか。

 

Blackmagic Cinema Camera 6K製品情報
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagiccinemacamera

vsw