【レポート】ブラックマジックデザイン×パンダスタジオ〜インハウス配信ができるショールーム的スペース


デジタルシネマカメラからカラーグレーディングのみならず、スタジオやライブ配信関連のスイッチャーまで幅広く、コストパフォーマンスの高い製品群を展開するブラックマジックデザイン。今回のNAB 2023でも大量発表したのは記憶に新しいところ。実は配信や機材レンタルでこちらもおなじみのPANDASTUDIO.TV(パンダスタジオ)の秋葉原スタジオの中に、ブラックマジックデザインの製品で統一された部屋があると聞いて、一体どういうことになっているのか調査すべく訪問した。(取材:一柳./2023年3月2日)

迎えていただいたのは、写真左から、ブラックマジックデザインの荒井さん、岡野さん、そして株式会社PANDASTUDIO.TV  秋葉原スタジオの中村央理雄さん。

ブラックマジックデザイン、パンダスタジオともに、動画での情報発信を積極的に行なっていて、オンラインセミナーも実はこのスペースから収録したり配信することが多いという。

ブラックマジックデザインの日本のオフィスは現在のところ(目黒区駒場)に移転した時にレポートしているが、そのビルの中にショールームもあった(当時のレポートはこちらから)。しかし、それから会社の成長に合わせて社員も増え、当然扱う機材も増えたことで、デモやオンラインセミナーをする部屋が足りなくなってきたという。そこでいつでも配信ができるような部屋が必要になってきた。

都内で適当なところを探したが、なかなか目的に合った物件が見つからない。そこでパンダスタジオに相談したところ、秋葉原スタジオのなかで使っていない部屋をその用途でも使ってもいいという申し出があり、この部屋ができたという。

このスペースから新製品を紹介するセミナーなども配信されている。ちなみにテーブルに置かれているのは新製品のATEM Television Studio HD8。取材した日の少し前にも新しいスイッチャーを紹介するセミナーが開催されたり、Cintelフィルムスキャナーのセミナーもここで開催された。

照明やグリーンバックもあるスタジオで、かつ同社の製品で揃えられていて、説明を担当するスタッフがカメラ操作、スイッチングなどもできるので、自分たちだけで配信することができる。

同社の配信関連の製品が充実し、かつ製品が次から次へとリファインされるだけでなく、製品どうしが連携する機能が増えてきたため、お客さんをここに招いて説明することで製品の魅力を正確に伝えることができる。いわゆるデモンストレーションルームの役割も果たしている。

ブラックマジックデザイン製品の最近のテーマが「SHOOT、EDIT、STREAM」。つまり撮影から収録、編集、配信まで、すべてを自社製品でできるようになったことで、スタジオのシステム自体もほぼ自社製品だけで構成できるようになった。

特徴的なのは同じメーカーであるメリットをいかし、機能を連携させていること。それにより使い勝手を大幅に改善しているところが画期的だ。連携機能などはデモをしないとわかりにくいことが多く、実際にどう便利になるかをここで見せることができる。

 

すべてのカメラがスイッチャーと連携する強み

まずカメラだが、同社のスタジオカメラはもちろんのこと、URSAシリーズ、ポケシネシリーズ含めてすべてタリーが連動するというのがポイント。ここはスイッチャーとカメラを両方手がけているメーカーならではだし、シネマカメラであってもマルチカメラ撮影・配信の1台として利用できるということ。

ということもあって、この部屋にはスタジオカメラだけでなく、URSAにBlackmagic URSA Studio Viewfinder G2を装着してスタジオ仕様にしたモデルも置かれていた。

スタジオカメラの特徴はなんといっても、10Gイーサネット接続1本で、映像音声信号の送信のみならず給電が可能なこと。さらにプログラムリターン、タリー、トークバック、カメラコントロールなども可能になる。接続が1本で済むのであれば、設置や撤収も手早く済ませることができる。特に電源まで供給されることに驚く人が多いと言う。

テレビ局も配信番組を作ることがで増えているが、このあたりの機能が評価されてスタジオカメラとATEMシリーズをセットで導入しているそうだ。

接続にはBlackmagic Studio Converter(下の写真・ラック下段左側)が必要。カメラ1台ごとにコンバーターと組み合わせ、ここからスイッチャーにSDIで入力する。

ATEM側からカメラの輝度と色味をコントロールできるのも同じメーカーであることの強み。ATEM Software Controlから制御できるが、ATEMでもExtremeモデルであれば本体パネルからカメラコントロールができるようになっている。

実は某ファッションブランドのショップからのライブストリーミングでもカメラはURSAが使われているそうだが、採用されたポイントはスイッチャー側からリアルタイムで色味を調整できることだったと言う。

ATEM SDI Extreme ISO。ISOはアイソレーションの意味で、スイッチングのプログラムアウトだけでなく、各入力を個別で記録にしておけるということ。

ATEMのコントロール画面。「全入力を個別収録」にチェックを入れておくと、各入力の信号をATEMにUSB接続したSSDに記録してくれる。

これだけでもかなり重宝するが、編集ソフトのDaVinci Resolveとも連携していて、DaVinciにもっていくと、マルチカメラ編集の素材としてすぐに利用することができる。

HyperDeck Shuttle HDは一見、コントローラーに見えるが、実はライブプロダクションでのクリップの
再生や収録ができる、デスクで使用するために設計されたレコーダー&メディアプレーヤー。本体の後ろ側にSDカードスロットがあり、メモリーカードに入れた素材を再生したり、そのカードに記録することができる。またUSB-C経由で外付けSSDも利用できる。テレプロンプターとしても使用可能だという。

こちらは別室になるが、スイッチャーなどのパネルのオペレートを上から撮影する用途のために、URSAが天井に設置されていた。

 

パンダスタジオ秋葉原は配信の歴史に合わせてスタジオを増設してきた

パンダスタジオ秋葉原のほかのスタジオも見学させていただいた。

パンダスタジオはレンタル事業もスタートさせ、最近ではバーチャルプロダクション用のLEDパネルを利用したスタジオもお台場にオープン。まさに時代の進化とともにスタジオを増やしてきたという経緯がある。

(バーチャルスタジオで収録した事例がこちら。KADOKAWAより発売された、雲研究者 荒木 健太郎氏の著作、「すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑」の解説動画)

ここ秋葉原のスタジオはパンダスタジオでは最も古くからあるもので、スタートは2010年。つまりUstreamなどの配信黎明期からの歴史がある。

スタジオを巡ってみると、まさにライブ配信の歴史の地層が積み重なった聖地とも言える場所だった。

まずは2階の白スタジオはパンダのぬいぐるみがインパクトがある部屋。ホワイトボードや電子黒板を活用した初期のeラーニング撮影はここで行なっていた。

その隣のブルーバックの黒スタジオ。ブルーバックを使ったクロマキー合成処理のeラーニング収録から、ネット番組配信まで幅広いジャンルで使われている。ただブルーバックが色がかぶって使いにくいということもあり、次にグリーンバックのスタジオを次から次へと新設していくことになる。

こちらが全身グリーンバック撮影が可能なオレンジスタジオ。スマホゲームの生放送やCM・動画素材の収録に数多く利用されてきたという。ところが「山ガール」のブームがきたときに、ウェアの緑がグリーンバックと被るということで、カーテン式になり他の色も使えるようになっている。

このスタジオのカメラはソニーのEX1。放送用カメラを担当していたソニー厚木Tecで作られた初めてのハンドヘルドカメラ。往年の名機だが、配信であれば古いカメラでも有効活用できるといういい例。

2Fのスタジオ用のコントロールルーム。

秋葉原スタジオで最も広いのが3Fのハリウッド・スタジオ。クロマキー合成によるバーチャルセットとリアルのセットを組み合わせた撮影やYouTube、FacebookLiveなど各種、ライブ放送に対応。テレビ番組のロケでの実績もあるという。

こちらのカメラはソニーのPXW-Z280.

隣接した控室だが、こちらもグリーンバックでの撮影が可能。コロナ禍のときは、別室からの配信として使われたという。

こちらも控室だが、ハリウッド・スタジオはスペースに余裕があるだけでなく、控室やミーティングルームが隣接してあるというのが、番組などでタレントを呼びやすく、使いやすいところ。

秋葉原スタジオには、これ以外にもスタジオがあり、目的に合わせて選択することができる。

そして4Fのキリンスタジオというのが、ブラックマジックデザインの機材で揃えられたスタジオということになる。

ここでは、ライブ配信関係だけでなく、CintelフィルムスキャナーやDaVinci Resole Advanced Panelも用意されているので、ブラックマジックデザイン製品全体のショールームとしても利用されている。

 

ブラックマジックデザインの製品情報

https://www.blackmagicdesign.com/jp

パンダスタジオについて

https://www.pandastudio.tv/

パンダスタジオ秋葉原

https://www.pandastudio.tv/studio_category/akihabara/

パンダスタジオお台場
https://www.pandastudio.tv/studio_category/odaiba_studio/

 

 

 

 

vsw