山映像にはRAWが効く
Report ◉井上卓郎
⬆ 筆者の編集・グレーディング環境。
なぜRAWで撮る必要があるのか?
山を撮るためには明るい空から暗い岩陰まで幅広いダイナミックレンジが必要になる。空に合わせると暗い部分は潰れ、暗い部分に合わせると空が白飛びする。最近のカメラにはLogモードがついているのでだいぶ良くはなったが、ダイナミックレンジと引き換えに繊細な色の階調が犠牲になってしまい、空がバンディングを起こしたりする。10bitで記録できるGH5が出てきたが、大抵のカメラはまだ8bit。12bit RAWで記録できるブラックマジックデザインのURSA Mini Pro 4.6Kはどんな色も逃がさない。
私がRAWで映像を撮る最大の理由はRAWデータはカラーグレーディングの耐性がとても高く、かなり色をいじっても破綻することがない点にある。これは単にキレイな映像でなく、自分独自の味のある色付けが追求できるということ。ビデオ的な映像とは違った言葉では表現しきれない空気感を表現でき、見る人を映像の世界に引き込むことができる。
Mini Panelでのグレーディング操作が快適すぎる
今まではAdobe Premiere Proを使用してきたが、URSA Mini Pro 4.6Kの導入に合わせてDaVinci Resolveに編集環境を移行した。RAWデータはとても重く、手持ちのiMacでネイティブ編集するのはほぼ無理なのでプロキシ編集することになる。DaVinci Resolve Mini Panelはプライマリーはもちろんセカンダリーの色調整もできるのでRAWデータを最大限に生かせる。ホイールやツマミで効率よく狙った色を作り出せるのだが、色をいじるのが楽しくて逆に時間がかかってしまうことも(笑)。
【RAW撮影のデータはグレーディング後も階調やディティールが豊かに表現できる】
Before
▼
After
Before
▼
After
カラーグレーディング(現像)をすると、元データには写っていないように見える雲や山のディティールが現れる。雪は階調が潰れやすい映像のひとつだがRAW映像は繊細なグラデーションも表現できる。太陽光のまぶしい屋外で常に撮影するのでモニターに映っている映像で正確な明るさの判断が難しい。白飛び黒潰れしたと思った映像もRAW現像すればリカバリーできる。
私とBMD 井上卓郎
URSA mini Pro 4.6Kで撮影しDavinci Resolveで編集しmini Panelで色を作る。1年前には考えられなかったワークフローで映像を作っている。もちろんBMDの技術力が素晴らしいのもあるが、映像を作る楽しみを思い出させてくれた。かつてのAppleのように使う人をワクワクさせてくれる。それが僕にとってのBlackmagic Designという会社である。
PROFILE
北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を手がけ、人や自然を演出することなく自然な形で表現することを心がけている。自然の中にゆっくり溶け込んで撮影することがモットー。代表作 ゴキゲン山映像「WONDER MOUNTAINS」シリーズ、「くらして歳時記」など。happydayz.jp