DJIから立て続け登場した小型ドローンMini 4 ProとAir 3。カメラ性能としてはほぼ同等の性能を備える2機種だが、前編では基本性能と違いを解説。後編では旧モデルとも比較しながら新機種の魅力を探っていく。
テスト・文●稲田悠樹(コマンドディー)
後半は、最新のMini 4 Pro、Air 3と1世代前のMini 3 ProとAir 2Sの4機種を比較していく。結論から言うと、それぞれ一長一短あるので、人によっておすすめする機体が変わってくる結果となった。
▼4機種のスペックを比較
Mini 3 Pro | Mini 4 Pro | Air 2s | Air 3 | ||
参考価格(モニターなし送信機付属の場合) | 96030円 | 106700円 | 119900円 | 129800円 | |
Fly More コンボ(送信機モニター付き)+DJI Care 1年 | 149270円 | 170060円 | 165000円(送信機モニターなし) | 200200円 | |
本体性能について
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重量(バッテリー込み) | 290 g(インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 290g(インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 595 g | 720 g |
本体重量(バッテリーなし) | 171g | 171g | 397g | 456g | |
バッテリー重量 | 119g(インテリジェントフライトバッテリープラス) | 119g(インテリジェントフライトバッテリープラス) | 198g | 264g | |
送信機(モニター付き)重量 | 390g(DJI RC) | 421g(DJI RC2) | 390g(DJI RC) | 421g(DJI RC2) | |
本体、バッテリー3本、送信機の合計重量 | 918g | 949g | 1381g | 1669g | |
サイズ (L×W×H) | 折りたたみ時: 145×90×62 mm 展開時:251×362×70 mm |
折りたたみ時: 148×94×64 mm 展開時: 298×373×101 mm |
折りたたみ時: 180×97×77 mm 展開時: 183×253×77 mm |
折りたたみ時: 207×100.5×91.1 mm 展開時: 258.8×326×105.8 mm |
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最大飛行時間 | 47 分 (インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 45 分 (インテリジェントフライトバッテリープラス使用時) | 31 分 | 46 分 | |
最大風圧抵抗 | 10.7 m/s | 10.7 m/s | 10.7 m/s | 12 m/s | |
最大伝送距離(日本) | 8 km | 10 km | 8 km | 10 km | |
映像伝送システム | O3 | O4 | O3 | O4 | |
カメラ・映像性能について
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広角カメラ | 換算: 24 mm 絞り: f/1.7 撮影範囲: 1 m ~ ∞ |
換算: 24 mm 絞り: f/1.7 焦点距離: 1 m ~ ∞ |
換算: 22 mm 絞り: f/2.8 撮影範囲: 0.6 m ~ ∞ |
換算: 24 mm 絞り: f/1.7 焦点距離: 1 m ~ ∞ |
中望遠カメラ | なし | なし | なし | 換算: 70 mm 絞り: f/2.8 焦点距離: 3 m ~ ∞ |
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イメージセンサー | 1/1.3-inch CMOS、有効ピクセル: 48 MP | 1/1.3-inch CMOS, 有効ピクセル: 48 MP | 1inch CMOS、有効ピクセル: 20 MP | 広角、中望遠カメラ共に: 1/1.3-inch CMOS, 有効ピクセル: 48 MP |
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ISO感度 | 100-6400 (自動/手動) | 100-6400 (通常) 100-1600 (D-Log M) 100-1600 (HLG) 夜: 100-12800 (通常) |
100-3200 (自動) 100-6400 (手動) 10-Bit Dlog-M:動画: 100-800 (自動)、100-1600 (手動) |
100-6400 (通常) 100-1600 (D-Log M) 100-1600 (HLG) 夜: 100-12800 (通常) |
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デュアルネイティブISO | 100、800で切り替え | 100、800で切り替え | なし | 100、400で切り替え | |
動画解像度 | 4K: 3840×2160 @24/25/30/48/50/60fps 2.7K: 2720×1530 @24/25/30/48/50/60fps FHD: 1920×1080 @24/25/30/48/50/60fps |
4K: 3840×2160@24/25/30/48/50/60/100fps FHD: 1920×1080@24/25/30/48/50/60/100/200fps |
5.4K: 5472×3078 @ 24/25/30 fps 4K: 3840×2160 @ 24/25/30/48/50/60 fps FHD: 1920×1080 @ 24/25/30/48/50/60/120 fps |
広角カメラ: 4K: 3840×2160@24/25/30/48/50/60/100fps FHD: 1920×1080@24/25/30/48/50/60/100/200fps中望遠カメラ: 4K: 3840×2160@24/25/30/48/50/60/100fps FHD: 1920×1080@24/25/30/48/50/60/100*/200*fps |
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動画フォーマット | MP4/MOV (H.264/H.265) | MP4 (MPEG-4 AVC/H.264, HEVC/H.265) | MP4/MOV (H.264/MPEG-4 AVC, H.265/HEVC) | MP4 (MPEG-4 AVC/H.264, HEVC/H.265) | |
最大動画ビットレート | 150 Mbps | 150 Mbps | 150 Mbps | 150 Mbps | |
カラーモード&サンプリング方式 | ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) D-Cinelike: 10-bit 4:2:0 (H.265) |
ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) HLG/D-Log M: 10-bit 4:2:0 (H.265) |
ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) HLG/D-Log M: 10-bit 4:2:0 (H.265) |
ノーマル: 8-bit 4:2:0 (H.264/H.265) HLG/D-Log M: 10-bit 4:2:0 (H.265) (広角、中望遠カメラ共に ) |
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縦向き撮影 | カメラ向き切り替え | カメラ向き切り替え | なし | 画素切り出し(2.7K) | |
動画モード | 動画(ノーマル、スローモーション) | 動画(ノーマル、スローモーション、ナイトモード) | 動画(ノーマル、スローモーション) | 動画(ノーマル、スローモーション、ナイトモード) | |
その他
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障害物センサー | 3方向(前方/後方/下方) | 全方向障害物検知 | 3方向(前方/後方/下方) | 全方向障害物検知 |
高度操縦支援システム(APAS) | APAS 4.0 | APAS 5.0 | APAS 4.0 | APAS 5.0 | |
フォーカストラック | ActiveTrack 4.0、Spotlight 2.0、Point of Interest 3.0 | Spotlight2.0,Active Track360,Point of Interest3.0 | ctiveTrack 4.0、Spotlight 2.0、Point of Interest 3.0 | Spotlight2.0,ActiveTrack5.0,Point of Interest3.0 | |
マスターショット、クイックショット、ハイパーラプス | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | |
追加された自動飛行 | ウェイポイント、クルーズコントロール、アドバンストRTH | ウェイポイント、クルーズコントロール、アドバンストRTH | |||
対応送信機 | DJI RC-N1、DJI RC、DJI RC Pro | DJI RC-N2、DJI RC3 | DJI RC-N1、DJI RC、DJI RC Pro | DJI RC-N2、DJI RC3 | |
HDMI出力 | DJI RC Proで対応 | なし | DJI RC Proで対応 | なし |
▼4機種の映像(カメラ)のクオリティの違い
▲Mini4 ProとAir 3で撮影した素材を混ぜて編集した。カラーについては、参考のためにLUTを当てたのみにとどめている。
今回一番気になっていた部分は、Mini 3 Pro、Mini 4 Pro、Air 3の広角のセンサーサイズが「1/1.3型 CMOS」、旧型のAir 2Sが「1型CMOS」であることだ。
また比較表にも記載してあるとおり、Mini 3 Proだけが録画モードはD-Cinelikeになるが、10bitでの撮影に対応しているため、4機種いずれも10bitで撮影が可能なのだ。
そうなってくると実際の写り(センサーの処理)が変わっているのかで比較してみるしかないので、撮影してみた。
以下すべて条件を揃えるために4K/30p、mp4記録、EV0にて撮影している以下のデータをダウンロードできるようにしているので、気になる方は、ご覧いただきたい。
●動画データのダウンロードはこちら
<収録データ:容量1.59GB>
Mini 3 Pro:ノーマル、D-Cinelike/MIni 4 Pro:ノーマル、HDR、D-Log M/Air 2S:ノーマル、HDR、D-Log M/Air 3:ノーマル、HDR、D-Log M
▲ノーマルを並べたもの
▲D-Log MをLUTでRec.709に変換したもの
1/1.3型センサーの3機種については、大きな違いを感じることができなかった。(多少最新のMini 4 ProとAir 3のほうがシャープな気がしなくもない)この程度の差であれば、グレーディング等でどうにかなる差であると思う。
画の差で選ぶのではなく、HLGが必要か、4K/60pが必要か(Air 2Sはクロップされる)、中望遠70mmが必要かという点など、ユーザーそれぞれが必要な機能の差で選んでよいと思った。
Mini 3 ProのD-CinelikeとMini 4 ProなどのD-Log Mの差だが、これに関しても大きな差を感じることができなかった。ちなみに上記の参考画像だが、D-CinelikeはLUTがないので、Mini 4 ProのLUTを当てている。
▼機体のサイズについて
こちらについては、機体本体のサイズと実際に現場に持っていく際の荷物感としてのふたつの軸で解説する。機体のサイズが小さいことは飛行させる際に、狭いところに潜ったりすることができる反面機体の飛行の安定性が少し劣る場合がある。
Mini 3 ProとMini 4 Proは、障害物センサーのカメラに差はあるが、サイズ感や重さは、基本的にほぼ差がない。機体のサイズは同じで、重さはMini 3 Proが少し軽い結果となった。
▲左Mini 3 Pro(918g)、右Mini 4 Pro(949g)
ただAir 2SとAir 3は大きく異なる。サイズも重さもAir 2Sが小さい。今まではMiniを超えて、Mavic未満のサイズであったAirがAir 3になってから大型化しており、サイズだけで言うとMavic 3とほぼ同じサイズ(重量は軽いが)になっている。
▲左Air 2S(1381g)、右Air 3(1669g)
よって、機体サイズと荷物の量で、Mini 3 Pro=Mini 4 Pro<Air 2S<Air 3とどこまで許容できるかを選ぶ必要がある。
▼その他の細かな違い
1.HDMIの出力が必要かどうか。
仕事でドローンを使う場合には、現場でディレクターやクライアントなどに映像を見せるためにHDMI出力が必要なこともある。通常のモニター付き送信機にはHDMI出力がなく、DJI RC Proという上位の送信機を利用すればHDMI出力ができるようになるのだが、現状Mini 4 ProとAir 3は最新のO4伝送システムに変わったため、DJI RC Proでの接続に対応していない。今後DJI RC Proの新型がO4対応になれば可能になるのかもしれないが、現状対応できないため、HDMI出力が必要な方は注意が必要だ。
2.縦動画への対応
Mini 3 Proと4 Proはカメラ自体が縦向きになり、4Kで縦動画が撮影可能だ。Air 3はセンサーのクロップで縦動画に対応しているため、解像度は2.7Kになる。Air 2Sは対応していない。
3.障害物回避機能および自動飛行について
こちらについては、最新のMini 4 ProとAir 3は、全方向対応や認識の精度もAPAS4.0から5.0にアップグレートし、方向が増えかつ精度も高まっている。また自動飛行の機能についても様々追加されている。
4.映像のフォーマットなどについて
Mini 4 ProとAir 3は.movで撮影ができず、.mp4のみとなっている。またHLGはMini 3 Proのみ非対応。
5.暗い環境での対応
Mini 4 ProとAir 3はナイトモードに対応しているため、夜間など暗い環境下でもノイズが少なく撮影可能だが、Mini 3 ProとAir 2Sは対応していない。
またMini 3 Pro、Mini 4 Pro、Air 3はデュアルネイティブISOに対応している。Mini 3 ProとMini 4 Proはベース感度がISO 100とISO 800。Air 3はISO 100とISO 400となっている。
▼どんな観点でドローンを選べばいいか?
以下比較した結果をニーズに合わせて記載していく。ドローンを選ぶ際に参考にしていただければと思う。
こんな時はこの機種
1.荷物が軽いほうが良い→Mini 3 ProもしくはMini 4Pro:サイズ、重量共に小さい
2.1/1.3型センサーでは物足りない→Air 2S:1型センサーを搭載
3.4K/60pでクロップなしで撮影したい→Mini 4 Pro、Air 3(Air 2Sはフレームレートが4K/30p以上はクロップされる)
4.中望遠レンズという新しい見え方がほしい→Air 3:中望遠70mmの2眼レンズ
5.最新の障害物回避および自動飛行の機能を利用したい→Mini 4 Pro、Air 3(Mavic 3で追加された自動飛行機能+性能UPした機能も対応)
機種ごとのポイント
Mini 3 Pro:最も安価。D-Cinelikeで10bit撮影が可能。HDRが撮影できない。
Mini 4 Pro:最新機能を盛り込みつつ、価格も荷物も抑えられ、唯一アクティブトラック360が使える。ただし、Mini 3 Proとの価格差と性能差を考えると悩ましい。
Air 2S:4K/30pで22mmの広角、かつ1型センサーで撮影が可能。4K/60pの場合はクロップされる。モデルが古いため飛行時間が短め。
Air 3:70mmの中望遠で表現の幅を広げることができる。ただし全体的に荷物が重く、大きくなる。
▼まとめ
以上前編、後編と4機種の違いを記載してきたが、書いている私もどれがいいのか非常に迷った内容となった。今回の4機種で、特に映像の用途に限って言うと、カメラとしての進化だけで考えると、微細な差なので、Mini 3 Proが安く、クオリティを担保できるので、ドローン初めての方には、1世代前ではあるもののオススメしやすいと思った。なお、この性能では満足できない方は、フラグシップのMavic 3シリーズを検討いただければと思う。
●前編
●製品情報