9月23日に発表・発売された「DJI Osmo Nano」。手のひらに収まる超小型サイズながら、単なるアクションカメラの枠を超え、日常のワンシーンを高品質に切り取る性能を備えています。その実力を、ビデオグラファーの河原崎さんにレポートしていただきました。

レポート●河原崎  平
2021年より東京から沖縄へ移住。Web制作会社にUIデザイナーとして勤務する傍ら、個人でもビデオグラファーとして活動している。

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最近のDJIは、先日発売された360度カメラ「DJI Osmo 360」をはじめ、次々と新しい製品を発表しており、その開発力には新製品が登場するたびに驚かされます。そんなDJIからまた一つ、私たちのクリエイティビティを刺激する新しいカメラ「DJI Osmo Nano」が登場しました。名前が示す通り、とても小さく、そして軽い、手のひらに隠れるほどの小型カメラです。しかし、その小さなボディからは想像もつかないほどの性能を秘めていました。

これまでアクションカメラといえば、DJIはOsmo Actionシリーズが牽引してきました。私もこれまでスポーツシーンや海中撮影等で活用してきましたが、このOsmo Nanoは少し立ち位置が違うように思います。これは単なる小型アクションカメラというより、ハンズフリーで日常を切り取る「ウェアラブルVlogカム」とも呼べるかもしれません。このジャンルでは「Insta360 Go シリーズ」などがありますが、Osmo Nanoはそれらの製品を踏まえた上で、DJI独自の強みや魅力が詰め込まれているように感じました。

このOsmo Nanoが一体どんなカメラで、従来のアクションカメラとどう違うのか。そしてどのようなシーンで使うと魅力的なのか、レビューしていきます。

驚きの軽さと、考え抜かれたデザイン

Osmo Nanoは、超小型の「カメラ本体」と、モニター兼充電器の役割を果たす「多機能ビジョンドック」の2つのユニットが基本構成です。これにマグネットマウント機構が組み合わさり、本製品のユニークな使い勝手を生み出しています。かつての「Osmo Action 2」もモジュール式で近いコンセプトでしたが、Osmo Nanoではそのアイデアがより洗練された形で昇華されているように感じます。

「カメラ本体」+「多機能ビジョンドック」。

実際にカメラを持ってみて感じたのは、やはりその「軽さ」です。カメラ本体の重量は52gで、サイズは約57×29×28mm。指先でつまめるほどのサイズ感で、これならいつでもどこでも気軽に持ち出せます。

Osmoシリーズで重要な役割を果たしているマグネット式の着脱機構は、本製品にも採用されています。カメラの背面と側面がマグネットになっており、付属の「多機能ビジョンドック」にカチッと装着できます。このギミックが非常にスムーズで、セルフィー(自撮り)と前方撮影の切り替えも一瞬です。またこの強力なマグネットにより、室内や街中にある金属に直接くっつけることが可能ですし、付属のマグネットストラップやハットクリップ、吸盤付きマウントといった多彩なアクセサリーと組み合わせることで、服や帽子、車のボディなど、様々な場所にカメラを固定することができます。従来のOsmoシリーズのアクセサリーとも互換性があるため、自撮り棒等にも装着可能です。

マグネットマウントによる多彩なアクセサリーにより、様々な使い方が可能です。

特に、首にかけたマグネットストラップで胸に固定して使うことで、ハンズフリーで撮影できるのは大きな魅力に感じました。Osmo Actionシリーズでも、ネックレスマウントやチェストマウントを使えばハンズフリー撮影は可能ですが、「装着してる感」が悪目立ちしたり、着脱が煩わしく感じる場面もあったかと思います。その点Osmo Nanoのマグネットストラップは、服にマグネットを挟んで固定するため、ストラップが全く目立たず、気軽に手軽に装着できます。この装着方法は、思いっきり走るとカメラが服で揺れてブレが大きくなりますが、普通に歩いて撮影する分には、ブレは全く気になりませんでした。(後述の手ブレ補正動画参照)

ネックレス型のマグネットを服の中に忍ばせることで、カメラをスムーズに着脱できます。
さらにクリップ式のマグネットマウントを合わせて使えば、スムーズに角度調整も可能。

核となる「多機能ビジョンドック」の操作性

Osmo Nanoの使い勝手を語る上で欠かせないのが、付属の「多機能ビジョンドック」です。これは単なる充電器兼ケースという脇役ではありません。

1.96インチのOLEDタッチスクリーンは非常にクリアで見やすく、カメラから離れた場所でもワイヤレスで映像をリアルタイムに確認しながら、各種設定や撮影の開始・停止をリモートで行えます。胸元や帽子にカメラを装着している時でも、手元でモニタリングできるため、撮影の柔軟性が上がります。このスムーズな遠隔操作こそ、Osmo Nanoの体験を飛躍的に向上させている核と感じました。

これまでOsmo Actionシリーズ等のアクションカメラは、体に固定して使う際はどうしても構図が確認しづらく、どんなシーンが撮れたかは、撮影後のプレビューでないと確認できませんでしたが、Osmo Nanoでリアルタイムに構図確認できるのは、実際に使ってみると想像以上に便利でした。

カメラ本体と多機能ビジョンドックを分離させて撮影できるのがOsmo Nanoの大きな特長です。

さらに、このビジョンドックはmicroSDカードスロットを搭載しており、ファイル管理ハブとしての役割も担います。カメラ本体の内蔵ストレージがいっぱいになっても、ビジョンドックを介してmicroSDカードにデータを高速でエクスポートし、カメラ本体のストレージスペースを解放できます。これにより、PCがない環境でも長時間の撮影を継続できるため、非常に実用的です。

多機能ビジョンドックのサイドには電源&撮影ボタン、逆サイドにはUSB-CとmicroSDカード。上部と下部にはマグネット式の着脱機構があります。

1/1.3インチCMOSセンサーとLogモードによる妥協なき画質

実際に撮影する前は、「カメラがこんなに小さいのだから、画質は期待できないかも……」と正直思っていましたが、なんとOsmo Nanoはこの小ささにも関わらず、Osmo Actionシリーズ最新の5Proと同等サイズの1/1.3インチのセンサーを採用しています。

これにより明るい屋外はもちろん、室内や夕暮れ時といった光量が少ない場面でも、ノイズの少ないクリアな映像を記録できます。さらに最大13.5ストップの広いダイナミックレンジにより、明暗差の激しいシーンでも白飛びや黒つぶれを抑えた、階調豊かな映像が得られます。

また4K/60fpsでの撮影に対応し、さらにスローモーションモードでは4K/120fps(1080pでは240fps)の撮影が可能で、小さなボディからは想像もつかないほどの映像表現を備えています。

映像の色味にこだわるユーザーのために、10-bit D-Log Mカラーモードも搭載。編集時には豊かな階調表現により、柔軟なカラーグレーディングが可能となります。

下記は実際に4K/10bit  Logで撮影した素材です。編集でも階調を保ったまま色調整ができ、こんなにも小さなカメラで撮影したとは思えないほど精細で、アクションカメラとして充分な画質に感じました。

実際にOsmo Nanoで撮影した動画のグレーディング前と後。彩度と暗部を大胆に持ち上げ、全体的に明るめに調整しましたが、階調の大きな破綻もなく自然に調整ができました。

強力な手ブレ補正「RockSteady 3.0」

Osmo Nanoは、DJIが誇る強力な電子式手ブレ補正技術「RockSteady 3.0」と、さらにカメラの傾きを補正し、水平に保つ「Horizon Balancing」を搭載しています。これにより、歩きながらの撮影や多少のアクティビティでも、滑らかで安定した映像を撮影できます。特にVlog撮影では、視聴者が見やすい安定した映像は必須なので、この強力な手ブレ補正があるからこそ、日常のあらゆるシーンでも気軽に使えると感じました。

RockSteadyをONにしたときの画角は、「標準・広角・超広角」の3種類から選択でき、Horizon Balancingの画角は「標準」での撮影となります。

下記はネックレス型マグネットマウントで胸に装着した状態で、RockSteadyをONにした状態でブレは意識せずにラフに歩いた動画です。動画のブレを自然に補正し、スムーズな映像が撮れました。

設定はRockSteady・画角標準で撮影。

5種類から選べる撮影モード

撮影モードは「写真」「動画」「スーパーナイト」「スローモーション」「タイムラプス」の5つから選択できます。

  • 写真:約36MPの静止画を撮影。
  • 動画:最大4K 60fpsの動画を撮影。
  • スーパーナイト:夜間の動画撮影に強いモード。 最大4K 30fpsで撮影。
  • スローモーション:4K 120fps(FHDでは240fps)のスローモーションモード。
  • タイムラプス:最大4Kのタイムラプス、ハイパーラプスを撮影。

DJI Micシリーズとの連携も魅力

Osmo Nanoはデュアル内蔵マイク・ステレオに対応しており、カメラ単体でも録音できますが、DJI Micシリーズのワイヤレスマイクシステムとも直接接続が可能です。これにより、映像だけでなく音声クオリティにもこだわりたいVloggerにとっては、非常にコンパクトで高品質なシステムを構築できます。

最新のDJI Mic3と連携させることで、こんなに軽装備で高品質な画質・音声のvlog撮影が可能です。

長時間撮影を支えるバッテリーとストレージ

Osmo Nanoはカメラ単体で約90分、多機能ビジョンドックと組み合わせることで最大約200分もの連続撮影が可能です。さらに、20分で80%まで充電できる急速充電にも対応しており、撮影の合間に素早くバッテリーを回復できるのは心強いポイントです。カメラが小さい分、単体ではOsmo Actionシリーズに比べてそこまで長く持ちませんが、一旦撮影し終わったらドックに装着しているだけで、気づいたらカメラのバッテリーが給電できていたのは、体感的にとても安心感がありました。
※Osmo Nanoのバッテリーは、Osmo Acitonシリーズのように交換式バッテリーではなく、USB-Cケーブルでの直接給電のみとなります。

カメラ本体のバッテリーが減ったら、多機能ビジョンドックに接続して給電できます。

ストレージに関しても柔軟な設計がされています。カメラ本体は64GBまたは128GBの内蔵ストレージを備えており、カードがなくてもすぐに撮影を始められます。さらにビジョンドックのmicroSDカードにもエクスポートできるので、長期間の旅行や、スローモーション、10bit録画といったデータ量の大きい撮影でも、容量の心配が少なく存分に撮影を楽しめます。

多機能ビジョンドックのストレージ管理画面。ここで容量の確認、ストレージのフォーマット、カメラ本体からSDカードへのエクスポートの操作が可能です。

主要スペック比較:ライバルと比べてどうなのか?

ここで、Osmo Nanoの立ち位置をより明確にするため、競合となりうる「DJI Osmo Action 5 Pro」「Insta360 Go 3S」「Insta360 Go Ultra」のスペックを比較してみましょう。

スペック項目 DJI Osmo Nano DJI Osmo Action 5 Pro Insta360 Go 3S Insta360 Go Ultra
重量

カメラ: 52g

ドック: 72g

146g

カメラ: 39.1g

アクションポッド: 96.3g

カメラ: 52.9g

アクションポッド: 108.5g

センサーサイズ 1/1.3インチ 1/1.3インチ 1/2.3インチ 1/1.28インチ

最大解像度での

フレームレート

4K/60fps

4K/120fps (スローモーションモード)

4K/120fps

4K/30fps

2.7K/100fps

4K/60fps

2.7K/120fps

レンズ F2.8 / 143° F2.8 / 155° F2.8 / 128° F2.85 / 156°
10bit log撮影 対応 (D-Log M) 対応 (D-Log M) 非対応 非対応
手ブレ補正

RockSteady 3.0

HorizonBalancing

RockSteady 3.0

HorizonBalancing

FlowState
horizon

leveling

FlowState

horizon
leveling

モニター画質 1.96インチ OLED

前面: 1.4インチ

背面: 2.25インチ

2.2インチ フリップ式 2.5インチ フリップ式
バッテリー駆動時間

カメラ単体: 約90分

ドック使用時: 約200分

約240分

カメラ単体: 約38分

ポッド使用時: 約140分

カメラ単体: 約70分

ポッド使用時: 約200分

カメラ本体の

防水性能

10m 20m 10m 10m
内蔵ストレージ

カメラ本体:

64GB / 128GB(内蔵)

ビジョンドック:

microSDカードエクスポート

47GB(内蔵)

microSDカード

カメラ本体:

64GB / 128GB(内蔵)

内蔵なし

microSDカード

こうして見ると、Osmo NanoはInsta360 Goシリーズに近いコンセプトでありながら、バッテリーやスローモーションの最大解像度、ストレージ等でアドバンテージがあることがわかります。またDJI Micシリーズとの連携やマグネットマウントは、DJI製品をこれまで使っているユーザーにとって大きな魅力です。

一方で、Osmo Action 5 Proのような本格アクションカメラは、より過酷な環境での撮影を想定したタフネス性能やバッテリーライフが魅力です。しかし特筆すべきは、Osmo Nanoがその小さなサイズにもかかわらず、センサーサイズやフレームレート、10bit Log撮影等によりOsmo Action 5 Proに迫る映像性能を持っている点です。これによりOsmo Nanoは手軽さと性能を両立させ、Vlog撮影に求められる要素を高いレベルでパッケージングした一台だと感じました。

Osmo Nanoの活用シーンとアクションカメラとの使い分け

では、Osmo Actionシリーズのような従来のアクションカメラと、このOsmo Nanoは具体的にどう使い分けるべきなのでしょうか。一言で言うなら、従来のアクションカメラが「構えて撮る」のに対し、Osmo Nanoは「身につけて撮る」日常のカメラだと感じました。

Osmo Actionは、頑丈なボディを活かして、マウンテンバイクやサーフィンのような激しいアクティビティの瞬間を「よし、撮るぞ」と意気込んで撮影するのに向いているように思います。一方、Osmo Nanoの真価は、その小ささと軽さを活かした「ハンズフリー」による気軽で手軽な撮影体験にあると感じました。

Osmo Nanoの活用シーン

  • Vlogや旅の記録に:付属のマグネットマウントで胸元や帽子に装着すれば、まるで自分の目線のような一人称視点(POV)の映像が簡単に撮れます。両手が自由になるので、食べ歩きをしたり、何か作業をしたりしながら、その場の臨場感を余すことなく記録できます。
  • 撮影の裏側(BTS)やチュートリアル動画に:一眼ミラーレスカメラなど本格的なカメラでの撮影風景を、ワンオペでPOV記録できます。胸元にOsmo Nanoを装着すれば、自分がどのようにカメラを操作し、被写体と向き合っているのかを臨場感たっぷりに伝えられます。
  • ペット目線の映像:ペットの首輪に装着すれば、愛犬や愛猫が見ている世界を垣間見ることができます。これは従来のアクションカメラではなかなか難しかったアングルです。
  • 料理やDIY動画の手元撮影:頭や胸元に装着することで、作業の邪魔をすることなく、視聴者にとって非常に分かりやすい手元映像を撮影できます。
  • ユニークなアングルのアクセントとして:ラジコンやミニ四駆など、これまでカメラを載せるのが難しかった小さなものに搭載すれば、迫力ある映像が撮れそうです。

Osmo Nanoは、これまでのアクションカメラ同様にスポーツやアクティブシーンでも活躍できますが、加えて「カメラを意識させない」ことでより自然な映像が撮影でき、また小型で設置場所を選ばないので、アイデア次第でよりユニークなアングルで、クリエイティブな映像を生み出す可能性を秘めています。

より気軽に手軽に楽しむ撮影体験

Osmo Nanoは映像制作のハードルをまた一段下げてくれた、DJIの新しいコンセプトの製品です。

  • これからVlogを始めたい人
  • 日常の何気ない瞬間をもっと気軽に、でも綺麗に残したい人
  • 通常のカメラワークでは撮れない、新しいアングル撮影を求めているクリエイター

上記のような人たちにとって、Osmo Nanoはとても魅力的な製品だと思います。

ポケットからサッと取り出して、見たままの景色を、感じたままの感動を、思いついたアイデアをすぐに記録する。そんな映像体験が、この小さなカメラからできると感じました。

●製品の詳細はこちら
https://www.dji.com/jp/nano

DJI JAPAN株式会社
https://www.dji.com/jp