REPORT◎ビデオサロン 盛 真弓

2018年10月17日(水)、中野セントラルパーク カンファレンス1階ルーム2にて、Canon CinemaEos C200活用セミナーが開催された。一眼動画からさらにステップアッップしたい人、手持ちのEFレンズ資産を活かしたいというカメラマンが参加した。

講師は写真家の公文健太郎氏。ルポタージュやポートレートを中心に雑誌や書籍、広告などで幅広く活躍し、国内外で作品を制作している。近著では写真集「耕す人」があり、写真集も多数発表している。
クライアントと仕事をする際に、動画を同時に撮れないかと聞かれることが多くなり、写真家という立場でムービーにも取り組むようになったという公文さん。ログ撮影を経験して、自分の写真そのままの色やトーンが出せることを確信したことをきっかけにムービー撮影を始めた。

▲講師の公文健太郎さん

セミナーでは、実際に公文さんが仕事で撮影した作品を観ながら、Canon EOS C200を使ってどのようなムービー撮影が可能になったか説明がなされた。

まず、Log撮影をすることによってようやく動画でも写真に近いトーンが表現できるようになった。次にCinema RAW Lightにより色の深みを表現できるようなった。後半で詳しく説明があるが、Lightroomで作業していたように、グレーディングを行うことによって自分の思い通りの色を作り直すことができる。また、EOS C200であれば、手持ちのCanon EOSのレンズをそのまま使えるということもメリットになる。また、動画で撮る時に、オートフォーカスがあるということが動画を始めるにあたっての重要な要素であった。それがEOS C200で実用的になった。今ではマニュアルでの撮影も行うが、最初は完全にオートフォーカスでの撮影に助けられた。何よりも構図を良く撮ることに集中したいからだ。

「写真家が動画を撮る時に、構図が良くないと写真を撮っている人が撮影する意味がない」と公文さんは語る。確かに写真家であることの強みは、1カット1カットで綺麗な絵が作れるということだろう。動画は連続的に流れているものという先入観があったため、構図という考えはとても新鮮だった。

▲公文さんが使用している機材

ライティングや三脚も写真撮影の時の機材をそのまま利用し、スチールで余った時間に動画も撮影してしまうのが公文さん流。スチール撮影後の動画撮影で新たな発見があり、またスチールの絵に取り入れることもあるという。スチールと動画撮影は全く別の表現方法と思っていたが、互いに影響し合っているということが興味深い。こうした公文さんの取り組みは、写真家にとって今後の大きなモデルになるのではと思う。

休憩時間には参加者が公文さんに質問したり、主催のフジヤエーベックの鶴田さんが機材の説明をしたりする様子がみられた。

後半は、グレーディングの話を中心にセミナーは進んでいった。
実際の画像を使って、公文さん流のトーンカーブでの補正の仕方などをレクチャー。「秘密なんですが・・・」とそのテクニックを披露。同じ画像でも目的によってグレーディングを変えていると作品を観ながら説明。

動画もスチールのRAW現像と同じように、トーンカーブによってここまで調整できることに驚いた。Premiere ProのLUMETRIの画面は、Lightroomから移植されただけあり似ている。普段からLightroomのRAW現像に慣れている写真家なら、抵抗なく使用できるのではないだろうか。

セミナー最後は、公文さんと参加者との質疑応答の時間に。EOS C200を使っての今後の展望について問われると「動画を写真を高めてくれる素材として、Cinema RAW Lightで撮影してたくさん財産を作っていきたい。写真家の人たちで動画を恐れている人も多いと思うけれど、もっと簡単に撮れるということを広めていきたい」という言葉でセミナーを締めくくった。

今後、ますます写真家にも動画撮影も求められるようになってくると思うが、写真家だからこそ撮れる映像や動画との関わり方があるのだと感じた。動画を始めるきっかけが必要に迫られてのことであっても、写真と映像がお互いにいい影響をもって作品に反映され、これからもっと面白い表現が生まれてくるだろう。