REPORT◉森下 千津子(プロ機材ドットコム 社長)

今回、かねてからの念願であった自社オフィス内配信スタジオを、配信スペシャリストの泉悠斗さんのお力を借りてやっと構築することができた。ライブ配信のメリットは大きく2つあり、編集が不要であまり時間をかけなくても手軽にできること、もう一つは双方向コミュニケーションができるということに尽きる。リアルタイムで視聴者の質問に答えたり、意見や感想を聞いたり、それについてコメントを返したりすることができるのは醍醐味である。ぜひ企業紹介や商品のPRをライブ配信でやってみたいと考えていたのだ。逆に失言したりイメージダウンのリスクもあるが、失敗してしまったらアーカイブは残さずに削除してしまえばいいとそこは割り切るしかない。

以前自分でスマホによる配信をオフィス内で試みたのだが、いろいろな光が混ざり合うオフィス内では輝度差もあるせいか、変に白飛びしたり色の階調がうまく表現できず、映像クオリティに不満が残ってしまった。特に女性は肌をきれいに見せたいので、なんとかきちんとカメラを使ってライブ配信を行いたいと思い、3台のミラーレス一眼を使ったマルチカム配信に挑戦した。

構成機材内容

今回ミラーレス一眼はパナソニックのLUMIX DMC-GH4を3台、レンズは8-18㎜の広角、ポートレートに最適な42.5㎜、標準ズームの12-60㎜を用意。ビデオカメラでなくミラーレス一眼にしたのは、普段写真を撮るのに使うミラーレス一眼の方が、ビデオカメラよりも操作に慣れていてアマチュアの自分でも扱いやすいこと、背景は部屋やバーの写真を印刷した背景布を使っているので、多少ぼかして偽物感が出るのを防ぐという狙いがあった。また、ゲストを呼んでの対談やグループトークや、PCのパワーポイント等を使用したプレゼン等も想定し、マルチカム配信ができるように構築した。三脚は1万円程度の写真用アルミ製三脚を使用。

マイクはBOYA製の対談用マイクBY-M1DM1つのジャックから二股に分かれたマイクがついている対談用ラベリアマイク)をオーディオインターフェイス(TASCAM ミニスタジオパーソナル US-32)に入力、それをスイッチャー(ローランド V-1HD)に入れてから入出力が両方可能なモニターに入力、そこから出力した映像を最後にライブシェルX経由で配信。同時に、ライブシェルを使用してマイクロSDカードに記録も行なった。また、3台のカメラからスイッチャーに取り込んだそれぞれの映像は、もう1台の確認用モニターに4分割でプレビュー表示した。

▲オフィス内のミーティングスペース。普段は修理部品や事務用品が雑然と置かれており、オフィシャルな配信では見せたくないものがたくさん映り込んでしまう。

▲まずはオフィスのデスクを片付けて背景をセッティング。出演者の座る位置とカメラの位置を調整したら照明の位置を決めていった。

▲カメラと照明のセッティングができたら、配信機材(スイッチャーとオーディオインターフェイスを操作しやすい場所にセッティング。

▲ライブシェルX、オーディオインターフェイス、スイッチャー、映像確認用モニターをデスクに置いて使用。

 

実際に配信を行う

スイッチャーは初めて触ってみたが、ボタンを押せば映像が切り替わるし、V-1HDは初心者でもわかりやすい。最初は、ワンマンでもスイッチングしながらの配信ができるよう、オートスキャン機能を使用して1アングル7秒固定での自動切り替えに設定した。V-1HDだけで音の入力もできたが、配信盛り上げにはかかせないポン出し機能を使ってみたかったので、今回はマイクとスイッチャーの間にTASCAMのミニスタジオパーソナルを入れてみた。まだ出演にも慣れない素人配信なので、トークに詰まって困った時にはなんか音を出してごまかそうと思ったのだ。ミニスタジオパーソナルでは、女性の声を男性の声にしたり、男性の声を女性の声にできるボイスチェンジャー機能や、エコーがかかったようになるリバーブ機能もあるが、正直、企業や商品PRのビジネス配信では使うだろうか? と疑問に思っていた。ところが、今回実際に配信を行ったことで思わぬ需要があることも視聴者の反応でわかった。

▲TASCAMのミニスタジオパーソナルからポン出しを行うには、PC内の音源を使用するため必ずPCにつなぐ必要がある。その他ローランドのスイッチャーV-1HDの操作やライブシェルのダッシュボード管理等もPCを使って行うことができる。

 

2つの失敗

V-1HDをファクトリーリセットした状態で使用し始めたが、視聴者からエコーがかかっていると言われた(ファクトリーリセット前に音は確認して問題なかったので、本番直前に別の問題を解消するためにファクトリーリセットを行なった後は音を確認しなかったのだ)。スイッチャー側でもオーディオインターフェイス側でもリバーブ機能はオフにしていたが、なんと、初期状態ではカメラのマイクの音を拾っており、それが回ってしまってエコーのように聞こえていた。

配信途中で原因に気がついて、カメラの内蔵マイクを活かさない設定に変更したが、それはそれで今度は面白くないと視聴者に言われた。深夜に近い時間帯に妙齢の女性が行う配信では、たまにエコーを効かせるといったユーモアも求められるようだ。

もう一つの失敗は、4カメ映像のブラックアウトだった。V-1HDは入力が4つあるので、3台のカメラの他にPCからパワーポイントで作成した会社ロゴ画像をオープニングとエンディングで入れることにした。最初は手動でスイッチングを行い入力4からスタート。その後オートスキャンに切り替え自動スイッチングを始めたが、1~3カメ映像の他に4番目にスリープしたPCの真っ暗な画面が入ってしまい、21秒の映像のあとに7秒間の真っ暗画面が表示されるということになってしまった。

いきなりの初回配信で(もちろん練習のためのテスト配信ではあったが)、初心者にありがちな2つのミスを早速犯してしまった。

 

配信を行なっての反応

簡単なテスト配信ではあったが、映像業界以外の方々の反響がすごかった。ミラーレス一眼の綺麗な映像、そして私のような「素人でもできるマルチカム配信」というのが新鮮だったようで、こういうのを自社でやってみたい、うちのお店でPRのためにやってみたい、一式そろえるのにいくらくらいかかるのか、などと複数名の方々からお声がけいただいた。今後は、「自社内でもライブ配信をやってみたい」という人のイメージが具体的になるようなコンテンツの発信を充実させていきたいと考えている。

 

▲ゲストを呼んで対談をしてみた。

▲自社の商品をFacebookライブ配信にて紹介。アーカイブが残るのでそのまま編集することもなく商品紹介動画として使える。

▲1名のオペレーター、もしくは出演者がワンマンでオペレーションしながらの配信も十分可能。最低限の人員でも運用できる。

 

使用機材

・カメラ:LUMIX DC-GH4 3台
・レンズ:H-E08018(8-18/2.8-4)、H-ES12060(12-60/2.8-4)、H-NS043(42.5/1.2)
・スイッチャー:Roland V-1HD
・マイク:BOYA ラベリアマイク BY-M1DM
・オーディオインターフェイス:TASCAM ミニスタジオパーソナル US-32
・モニター:プロ機材ドットコム 4K対応7インチモニター
・照明:プロ機材ドットコム ロールフレックスLEDライト RX-12TD+RX-12SB、プロ機材ドットコム ビューティーライト KD-BL48LED-W
・背景:マンフロット オートポール032B、プロ機材ドットコム マイクロファイバー背景布
・配信:CEREVO ライブシェルX
・その他:三脚、卓上用ミニ三脚、電源タップ、HDMIケーブル、マイクロHDMIケーブル、カメラ電源カプラー、ノートPC等
(合計金額およそ100万円)

▲ばらした機材を整理してデスクに並べたところ。

▲何と何をつなぐケーブルか、わからなくなるので養生テープに書いて袋に添付した。

▲同様に、何の機材から来るケーブルを接続すればよいのかわかるように、機材の上にもテプラを貼った。

▲上段にはスイッチャー、モニター、オーディオインターフェイス、マイク、ライブシェル、ケーブル類を、下段には三脚、バッテリー、電源タップを収納。量的には1段でも収まるくらいだったが、取り出しやすいように2段使ってゆったり収納。可動式のラックなので機材を載せたまま部屋を移動できる。

(続く)

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