テスター●SHINYA SATO 協力●ヴィデンダムメディアソリューションズ株式会社(旧 ヴァイテックイメージング株式会社)

 

マンフロットの“move”シリーズはミラーレスカメラでのワンオペ撮影におけるセッティング変更の手間と時間を削減し、現場でのインスピレーションを逃さず撮影の幅を拡げてくれるエコシステムだ。

前回ではシリーズを構成する各機材を詳細にテストし、自身が現場で使用する際のセットアップや運用方法がイメージできたので、2回目となる今回は実際の作品撮りでその効果を検証してみたい。

第1回目のレポートはこちらから

セッティングを瞬時に変更できる室内での撮影

筆者は作品撮りとしてシネマティックVlog的なポートレートムービーを制作することが多く、その際は被写体となるモデルとふたりのみで機材もできるだけ最小限にしてロケを行なっている。今回はBTS収録のためスタッフに同行してもらっているが撮影自体は普段と同様にワンオペで行い、カメラとモニター以外の機材を全てmoveシリーズに置き換えることでシステムとしての使い勝手を検証している。

作品設定は初夏の休日のひとときとして前半を自宅イメージのハウススタジオ、後半を屋外ロケで撮影を行なった。スタートとなる室内シーンは映像も静かで落ち着いた印象とするため、三脚を中心としたセットアップで撮影を開始。脚部のFAST機構で素早く高さを変えられるシングルビデオ三脚と、60cm長のMagicCarpetスライダーの組み合わせはミラーレスカメラでの撮影に充分な剛性と安定感があるが、カメラを含めた重量も軽く移動は簡単なので三脚撮影でも様々なアングルからのショットを短時間に集めることができた。

 

FAST三脚+MagicCarpetでのスライダー撮影



▲Gimbal 300XMに付属のクイックリリースプレートは500AHビデオ雲台にも互換性がある。充分な剛性を備えながらも軽量なカーボン三脚とスライダーの組み合わせで場所を変えながらの撮影も楽にこなせる。

 

次のシーンでは変化をつけるためジンバルでの撮影に移行したが、その後のシーンでは三脚も併用予定であったため、Gimbal 300XMの分割部分と三脚側の双方にmoveクイックリリースを装着し、ジンバルのバランス再調整等を行わずとも瞬時にセッティングを行き来できるようにした。これが非常に効果的で、時間的な制約も多いワンオペ制作の現場ではセッティング変更の手間と撮影のリズムを崩すことを懸念してついそのまま撮影してしまう場面でも即座にスイッチでき、撮れ高にも妥協することなく落ち着いて撮影を進めることができた。

 

moveクイックリリースを取り付けて載せ換えながらの撮影



▲ジンバル付属のプレートを活用して本体とハンドルの間に moveクイックリリースを挟むことができる。三脚側にもクイックリリースを装着し瞬時に載せ換え可能なセットアップが完成する


▲載せ換えながら撮影。窓越に視点が切り替わるシーン。室内側は三脚、バルコニー側はジンバルで撮影したが載せ換えを繰り返しながらの試行錯誤も容易に試せた。

 

 

機動性に+αの価値をもたらすロケ撮影

作品の後半となる屋外でのロケでは、前半のようにシーンやカット割りを事前に考えておくことはせず行き先と大まかなイメージだけを決めてすぐに移動を開始した。この際普段は機動性を重視してジンバルと手持ちのみでほぼ全ての撮影を行なっているのだが、今回は撮影用バックパックの側面にも収納可能なGimBoomとGim-Podアクセサリーを機材に加えることとした。

海へと向かう移動中や砂浜でのシーンではGimbal 300XMを使った撮影が中心となったが、1.5Kgを超えるフルサイズミラーレスと標準ズームの組み合わせでも様々なアングルでの撮影や早い動きにも問題なく追従し充分な安定性を保持できていた。またパン/チルトフォローなどの動作にも特に気になるクセもなく、操作部やハンドルなどにも余裕があるため普段使用している同クラスのジンバルとの違いを意識することなくすぐに欲しい絵を撮影することができた。

 

ジンバルでのロケ撮影


▲ジンバルを使ったロケ撮影。その場で思いついたカットを次々と試していくため機材の扱いもラフになりがちだが、挙動は安定しており基本性能の高さを確認できた。

 

砂浜での撮影では少し視点を変えた映像を加えるために、GimBoomを使用したハイ/ローアングルを数カット撮影している。構造的には一脚に近いアイテムだが、FASTロック機構で素早く任意の長さに固定が可能で取り回しがよく、軽量なカーボン製のロッドは剛性も充分でグリップとなる中央部にはしっかりとした太さもあり、ジンバル用のブームとしてかなり伸ばした状態で運用してもグラつきやバランスの悪さといった不安要素はなかった。    

 

GimBoomを使ったハイアングル撮影


▲最長時115cmまで伸ばせるのでジンバル用のブームとしてかなりのハイアングルまで狙える。これだけ伸ばしてもジンバルのハンドル部分はブームの下端に装着できるので手元でジンバルヘッドを操作できる。

 

作品用のカットを撮り終えたところでGimBoomにGim-Podアクセサリーを装着し三脚としての活用を試す。moveクイックリリースを介して分離したジンバル本体をそのまま搭載できるため、実は水平出しをジンバルに任せてしまえるというメリットもある。移動しながらのロケ中に少しフィックスの絵が欲しい場面でも気軽に試すことができたので、メイキング用のカットを収録してこの日の撮影を終えた。

 

Gim-Podアクセサリーでの三脚運用

▲GimBoomにオプションのGim-Podアクセサリー(追加レッグ)を装着すると簡易三脚として運用できる。この状態でジンバル側に別途用意されている傾斜のついたGim-Podプレートを使用するとより、水平に近い状態でジンバルをセットできさらに安定感を高めることができる。

 

ストレスなく現場で可能性を拡げられるmoveシリーズ

2回にわたりmoveシリーズのテストを行なったが、マンフロットならではのしっかりとした機能性を備えた各製品が、さらにmoveコンセプトによってひとつのシステムとして機能することが実感できた。信頼性の高い最小限の機材を揃えるだけで現場で躊躇することなく撮影の幅を確実に拡げることができ、特に筆者のようにワンオペでのロケが多い制作環境では試してみる価値は高いと思う。

作例はこちらから!

◉各機材の詳細については前回レポートも合わせてご覧ください
(7月号 p.110 / https://videosalon.jp/pickup/manfrotto-move01/)

◉Manfrotto moveの製品情報はこちらから

モデル:sheee  https://www.instagram.com/sheeee_mc/
撮影:SHO (YouTube:SHOStudio
ハウススタジオ:Big Summer House(鎌倉)

 

VIDEO SALON 2022年8月号より転載