テスター:SHINYA SATO 協力:ヴィデンダムメディアソリューションズ株式会社(旧 ヴァイテックイメージング株式会社)
Manfrotto moveエコシステム テストレビュー
ミラーレスカメラを中心としたワンオペでの映像制作がプロの現場からアマチュアビデオグラファーまでグローバルに浸透していく中で、近年マンフロットは特にこの分野での製品展開に力を入れている。今回紹介する“move”シリーズは、ワンオペ撮影でのセッティング組み替え時間を短縮しミラーレスの機動性をさらに向上させる製品群と利用シーンを提案するエコシステムだ。
moveクイックリリース
現場でのワークフローを変革する本システムの核となるのは直径6cmほどの小さなmoveクイックリリース。スチルからビデオ、そして手持ち/ジンバル/三脚/スライダーなどの様々な組合せを行き来しながら撮影を行うシーンで各機材との間にこのクイックリリースを追加することにより、スピーディな脱着と接合部の互換性を確保することができ、セッティング変更のストレスと時間を大幅に軽減できる。
接続方法もジョイント時には押し込むだけでロックされ、リリースの際は周囲のリングを少しひねれば簡単に外せるようになっているが、耐荷重は最大20Kgまで対応しておりしっかりとした剛性と高い精度をもっているため、正しく使用すれば運用時に不安を感じることは無いあたりはさすがといったところである。
moveクイックリリースキャッチャー S
▲システムの使い勝手を向上させるクイックリリースキャッチャー。直径60mm/重量220gの堅牢な作りで、耐荷重も20Kgと様々な機材をしっかりとホールドできる。プレートを押し込むだけで接続でき、キャッチャー側のリングをXLOCK方向にひねるとさらに確実にロックできる。1/4インチと3/8インチネジにも対応 。
クイックリリースプレート
▲クイックリリースプレートには中央のGim-Podプレートのように接続面に傾斜がついたタイプも用意され、GimBoom+GimPodアクセサリーと一緒に三脚として使用する際にカメラを水平に保てるなどシステムとして細かい配慮もされている。
Gimbal 300XM
moveクイックリリースとの相性もよく、様々なセッティングへの柔軟性をさらに加速させるのがマンフロットとして第二世代となるジンバル 300XMだ。このジンバル最大の特長はカメラを載せる本体側にもバッテリーを搭載し、ハンドル&コントロール部分を外した状態でも利用できる点にある。分離したハンドルは本体と無線で常時接続されておりそのままリモコンとして使用できるため、後述するブームや三脚等と組合せて使用する際も手元でジンバルを自在に操ることが可能となり、ワンオペでも繊細なカメラワークを試すことが出来るようになる。
さらに最大3.4Kgのペイロード、伸縮可能なパン/ロール軸のアーム、カメラを縦位置でも設置可能なクイックリリース、確実に固定できるローアングルハンドルなど、大型のカメラ&レンズを搭載しても安定して運用可能な基本性能もしっかり備えたモデルとなっている。
Gimbal 300XM 外観
縦位置マウント
▲ティルト軸付近にもクイックリリースマウントが装備されており、カメラを縦位置でセットすることも可能
分離機構&リモコン
▲Gimbal 300XM最大の特長である分離機構。501PLプレートと互換性のあるジョイント部で接続される本体&ハンドルの両方にバッテリーを搭載し、分離した状態でもそのままハンドルをジャイロセンサー付きのコントローラとして使用できる。
アーム伸縮機構
▲クロスアームは伸縮可能となっており重い長尺のレンズを搭載した際のロール軸との干渉を防ぐ。また横位置/縦位置のクイックリリースも可動式で横幅のあるカメラでも搭載しやすくなっている。
ポジションメモリードット
▲パン軸&ロール軸付近にはアームの調整位置を記録できるポジションメモリードットを装備。ケース等への収納時からも素早くセットアップを再現できる。
コントロール部分
▲タッチスクリーンを備えた操作部。側面にはマルチファンクションノブ(ホイール)の機能切り替えや2箇所のカメラ位置を記憶してA-B間のモーショントラックを再現できるボタンも装備。
▲対応するカメラでは付属ケーブルの接続でシャッター操作やパワーズーム、撮影設定の変更なども可能。
スマートフォンアプリ
▲Gimbal 300XM専用のスマートフォンアプリ。視認性&一覧性の良いデザインで、ジンバルの設定や各種コントロールが可能。
FAST GimBoom カーボン / Gim-Podアクセサリー
ポートレイトムービーを制作する機会の多い筆者は、モデルと2名で数カ所のロケ地を移動しながら屋外で撮影を行う際には、機動性を重視し手持ちとジンバルのみで済ませることも少なくない。しかしそのロケ先で出会ったシーンによっては揺れのないフィックスやハイアングルでの撮影を行いたい場面もあり保険的に伸縮式の小型一脚も持参していくのだが、実際の使用では映像の安定性の面で満足な結果が得られないことも多い。
GimBoomはまさにこうしたニーズに最適な製品で、軽くひねるだけで伸縮できる115cmのカーボン製ロッドと着脱式の追加レッグ(Gim-Podアクセサリー)を組み合わせることにより、ジンバルの延長ブームとしても三脚としても活用できるユニークなアイテムである。
6.5Kgまでの耐荷重に対応しながら二つを組み合わせた場合の自重も1.2Kgに抑えられており、さらに分離式のGinbal 300XMと使用することでハイアングルや三脚設置時にも手元でジンバル操作を行えるため、携帯性を確保しながら軽装でのロケでは妥協していたアングルでの撮影を確実にサポートしてくれる。
FAST GimBoomカーボン / Gim-Podアクセサリー
▲カーボン製のGimBoom(下)と三脚として使用するためのGim-Podアクセサリー(上)
FASTツイストロック&全長
▲三脚にも採用されているFASTツイストロックにより軽くひねるだけで51.5cm〜115cmまで簡単に長さを変えることができる。800gと軽量だが耐荷重は6.5kgまで対応。
ジンバルのブームとしての使用
▲底部のカバーを外しジンバル付属のプレートを装着することでGimBoomとハンドルリモコンを連結することができるのでブームを使用した撮影の際にも手元でジンバルの各種コントロールが容易となる。
Gim-Podアクセサリーの取付と三脚使用例
▲オプションのGim-Podアクセサリーを装着すると三脚としても利用できる。カーボン製のGimBoomを主脚としているため見た目以上に安定感がある。
▲自由雲台と組合せたスチル/フィックス撮影でのセットアップ例。
ジンバルとの使用例
▲Moveキャッチャーと傾斜のついたGim-Podプレートを使用することで、分離した本体の水平を維持しながらジンバルを搭載することも可能。
GimBoomを活用した撮影例
▲室内であまりハイアングルは狙えなかったがブームにより安定して保持ができた。
▲最小限の機材でリモコンによる三脚+雲台に近いカメラワークや、記憶したA-B間のモーショントラックなどが可能となる
FAST シングルビデオ三脚 / Magic Carpet カーボンスライダー
屋外で使用するGimBoom+GimPodに対し、ハウススタジオ等での室内撮影ではより安定したショットを得るため信頼性の高い三脚やスライダーも使用したいところだが、システムとして提案されているシリーズの一つにFAST機構付きのシングルレッグ三脚がある。“FASTツイストロック”は現場でのセットアップの時間短縮と操作性能向上を目指したもので、各脚の1ヶ所を操作するだけで最短から全伸高まで任意の長さに素早くカメラの高さを変えることができ、moveコンセプトとも相性が良い。
またこれに組み合わせるスライダーとして、軽量なカーボン製で滑らかな操作感を持つMagic Carpetスライダーの60cmモデルを今回は使用したが、レールの両端でもカメラがぐらつくこともなくしっかりと安定したショットを撮影できた。
三脚+スライダー外観
▲FASTシングルビデオ三脚/MagicCarpet
スライダー/ビデオ雲台500AH
FAST三脚の特長
▲FASTツイストロックは各脚一箇所ずつの解除で任意の高さに一気に変更できる。
moveクイックリリースの活用例
▲Moveクイックリリースを加えることで、ジンバルからスライダーなどへの変更が瞬時に行えるため、撮影のリズムを止めずに様々なショットを試せる。
信頼性を確保しながら現場での使い勝手を実感できるmoveシリーズ
今回はスタジオ内での各機材のチェックが中心となり限られた時間での撮影テストしか行なえなかったが、ワンオペ撮影での利用シーンがよく想定されたシステムだと感じた。特に時間の限られる個人での制作や少人数でのプロジェクトでは、現場でのインスピレーションに応じて様々なカメラワークを試す際に、セットアップ変更の時間を最小限に抑えてテンポよく撮影が行えることが大きなメリットとして結果に影響する。次回は実際の現場でシステムとしての使い勝手や効率性などを検証してみたい。
【制作協力】
モデル:李亜 https://www.youtube.com/channel/UChfGm-r29hleDr2kK1Z2NBA
撮影:SHO https://www.youtube.com/c/SHOSTUDIO
ロケ地:Scott Mansion
第2回めのレポートはこちらから
◉機材リスト (メーカーサイトにリンクします)